「朗読」を描いたマンガ『花もて語れ』 が恐ろしいほど激しいので、書かずにいられなくなりましたよ僕は! 朗読をなめていた、朗読すげえ! それをマンガで描いたこの作品恐ろしい!

「朗読」って言葉だけ聞くと、地味な印象ありますよね。ようは文章を声に出して読むだけでしょう、と。
失礼ながら自分も演劇や歌に比べて朗読はあまりぱっとしない思い込みがありました。そもそも本を読むなら黙読の方が早いじゃないか。朗読するならいっそ劇にして動きも見せたほうが面白いじゃないかと。
しかし違うのです。朗読は相手の脳に、映画を投影するかのごときパワーを持っているのです。
片山ユキヲ『花もて語れ』のヒロイン佐倉ハナは、人と話すのが極端に苦手な、コミュニケーションを取ることが出来ない女性なんです。嫌われるかもしれない、迷惑かけてしまうかもしれない、何言えばいいか分からない。ひたすらに一人で空想をするのが大好きなんです。
寝転がって空想をする。この行為を片山ユキヲは全力で肯定します。細部を思い浮かべ、頭の中で絵を描き、想像したキャラの目線で物語を作る。一見無駄に見えることですが、これこそが人間の持つイメージの力なのだと叫ぶのです。


ハナは持ち前の想像力を駆使して、物語を朗読します。最初は「たかが朗読」と笑われました。しかし宮沢賢治の「やまなし」を読んで相手にその場面を伝える、津波のような情報量を想像できるでしょうか。
「クラムボンはかぷかぷわらったよ」
この言葉を読んでどのくらいのことが想像できるでしょうか。普通なかなか理解することまでできません。
この作品では、ハナが想像を巡らせ朗読することで、非常に不可思議な「やまなし」という作品がまるで違うものになるのです。
マンガですから当然朗読の音声は聞こえません。ですがこの作品は絵で、イメージの爆弾を叩きつけてきます。ハナの朗読によって脳内に描かれた映像が画面いっぱいに広がり、本から声が、物語が噴出してくるんです。
朗読地味だなんて思ってごめんなさい! 朗読、激しいよ!

作中ではちょっと面白い話が作中で語られています。現在本を読むときに、声に出して読む人はほとんどいないと思います。図書館で声を出して読もうものなら、つまみだされますよ。
しかし大正時代までは汽車の中で本を読む時でさえも音読する人が多かったご存知でしたでしょうか。
実際調べてみたところ、特に英語圏では歌唱や演奏同様に、声に出して本を読むことは、自分にとっても聴く人にとっても意味のある芸術・娯楽と捉えられているのです。
あまりピンとこないかもしれない朗読の世界ですが、最近では声優さんが朗読をしたCDなども盛んに出始めています。この本を読んで興味が湧いたら、気になる作品や好きな声優さんの朗読CDを買って聞いてみるのも乙なもの。そして、家でゆっくり音読してみたときに、「面白い」と感じられたら、それは最高に幸せ!(たまごまご)
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