消防車、救急車、クレーン車など、「働くクルマ」はいつの時代も子どもたちの憧れ。
働くクルマの本やオモチャも昔から多数あるが、そんななか、一風変わったド迫力の「知育しかけ絵本」を見つけた。


『ぼくのしょうぼうしゃ』(小峰書店/2400円+税)。A4サイズほどの大きさで、厚みは約5.5センチ。重さはなんと約1.5キロ!! 圧倒されるほどの存在感である。

中を開くと、「軽油を入れる」「エンジンとギアのオイル点検」「タイヤの空気点検」「はしごの点検」「ホースのまきとり」「様々な道具の点検」「赤色灯のチェック」などなど、実際に取り外して遊べる道具がギッシリ。
しかも、ユニークで洗練されたデザインながら、道具はどれも高品質の厚紙で作られているので、手によくなじむし、安全である。

近年は、出版不況のなか、「本にオマケがついてくる」というよりも、「オマケのほうに本がついてくる」ビジネスが隆盛をきわめているが、こうした「本」としての体裁・品位を保った本があるのは、やっぱり嬉しいもの。

ところで、なぜこの本を? 小峰書店の編集部に聞いてみた。
「この本は昨年秋に英国で刊行された本を翻訳したもので、10月末に書店さんに並びました。私はこの本の発する『モノとしての色気』に強く惹かれました。そして、はたらく車や重機、『指さし確認』などが大好きな子どもさんたちが喜んでくれるのではないかと思い、原書刊行前の昨年の春から、版権取得などの準備を進めてまいりました」

準備から1年半以上の時間を費やし、ようやくカタチになったそうだが、こんな意外な反応もあったという。
「この本をご覧になった書店の方から『音が出たりしないからいい。子どもさんが想像力を働かせることができるから』というご意見をいただきました。
思ってもみなかった角度からのお言葉でしたが、こういうふうに受け取ってくださる方々がいらっしゃる限り、アナログというのは、まだまだ捨てたものではないなぁと、本当に嬉しい気持ちになりました」

ところで、この消防車は、はしごが木製だったり、サイレンのかわりに鐘がついていたりと、いまの消防車とは異なる部分がいくつもある。これにも秘密があるのだという。
「著者のステファン・T・ジョンソンさんは、子どもの頃から消防車が大好きだったそうで、1950年代から70年代の消防車、そして現代の消防車の様々な部分を組み合わせて、この本を作ったのだそうです。『カッコイイとこ取り』という感じですね。このアイデアは面白いなぁと思いましたし、クラシックな機構の部分は、自分にとって逆に新鮮でもありました」

デジタル書籍が広がるなか、やっぱり「紙の良さ」を噛みしめてしまう「しかけ絵本」。これからの季節、クリスマスプレゼントなどにもおススメです。
(田幸和歌子)
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