『めくりめくる』が描くのは、倉敷観光ではなくて「ここに住んでいる少女達の目で見ている町」の風景です。だから住宅地や駅など、自分達の行動半径が基本的な視界の範疇。海や神社や観光地は彼女達にとってちょっと特別だから、そこに行く時は心がどきどきしちゃう。どきどきするから、物語が生まれる。
「学生の目から見た町」の描写が強調されているので、読み進むにつれて、自分もこの町に住む少年少女の一人になってしまいます。ふと目をあげた時、自分の視界の中に飛び込む女学生の姿。これはときめかざるをえない。
特に劇的な物語は一切おきません。他の人から見たらささいに思える悩み事を抱えた女の子達が「私にとっては大事なんだよ!」と倉敷の町の中で話している。ちっちゃな事件がキャラを変えて、オムニバス形式で描かれます。
おそらく視点が一致する高校生には、非常に心にスーッと入ってくる作品でしょう。学生時代を終えた大人からは、町の中で自分達の青春を謳歌している子達が眩しくてしかたないはず。これはそうだ、憧れだ。
カメラを構えて町の写真を撮る時、そこに女子高生がいたらいいなと願うのは、写真の中に物語が生まれるから。彼女達の視線に近づきたいと感じるから。決して派手ではないですが、誰もが持ちうるそんな思いを丁寧なタッチで描きあげる『めくりめくる』は、様々な角度からノスタルジーを刺激してくれるので読み終わったあと充足感で溢れること間違いなし。個人的には友達が出来ずに神社で悩む女の子にグッと来ちゃいましたよ。くそうかわいいなあ。
実際に倉敷市では『めくりめくる』とのコラボで観光イベントを組んでいるようでこちらの今後の展開も興味深いです。
えー、地方都市の皆様。「綺麗な写真」にとどまらず、思い切ってこういう「女子高生から見た町の様子」を少女達の姿と共に描いたマンガを観光パンフレットにするっていうの、新鮮でありだと思うんですがどうですか?(たまごまご)