レコードジャケットの世界も、また同じ。名盤ジャケットには、やっぱり名パロディジャケットが数多く存在する。
オマージュやリスペクトの意味をこめた(一部“パクリ”もあるか)、いろんな形でのパロディレコード(CD)ジャケットを一冊に集めたのがこの『レコードジャンキー! デラックス・エディション』(音楽出版社刊)。06年に出版されたものの増補版だ。
表紙そのものがまず、ザ・ビートルズの名盤『サージェント・ペパーズ』のパロディ。ビートルズを取り囲むようにJBにプレスリー、マーク・ボランがいて、オジー・オズボーンもいる。よく見るとコレ、それぞれジャケット版の顔だ。だからマイケルは『スリラー』のだし、ビョークはソロ1作目のセピアっぽいやつで、坂本龍一は『戦メリ』か。さらに、U2『BOY』の少年や、ブラーのスイムジャケットのお姉さんまでいる。これだけで小一時間楽しめるけれど、こんなふうに、元ネタと引用センスの塩梅にニヤリとしたり、吹き出したり、爆笑したり。それが、パロディジャケの世界かと。
ビートルズモノはパロジャケ界でもやっぱり別格。
一冊まるごと、大量のパロジャケ写真とそのオリジナルジャケットが、ページに踊る。やたらクオリティが高いものもあれば、どこかボタンを掛け違えてしまったようなもの、デザイナーが遊び心で作ったけど当のアーティスト自身は元ネタ知ってんのかな? と思うようなものもあったりと、その背景なんかを想像しながら見るのもまた楽しい。
基本的には「ばかだなぁ」と、ゲラゲラ笑いながら楽しむ一冊。どこから開いても面白いし。個人的に昔から大好きな、全裸に靴下というブッ飛んだ格好で横断歩道を渡るレッチリの『アビーロード』パロと、収録曲のほとんどが有名人の「悪口」で、その有名人の写真で『サージェント〜』をコラージュしちゃったという、猛毒の『これで終わりだと思ったら大間違いだ!!』もバッチリ載っていた。
国内アーティストの作品にもパロジャケはいろいろあって、竹中直人の『レスラー(スリラー)』や、M.C.コミヤ(M.C.ハマー)、タイマーズのジミヘンに、RCのジャニス・ジョプリンもある。SPPEDがポール・マッカートニー&ウイングスをやっていれば、倉木麻衣はブルース・スプリングスティーンに変身だ。
多数のパロジャケの中、なんか一番笑ったのが、声優・水嶋裕の“一人レット・イット・ビー”。4分割されたジャケットの全てが水嶋裕。
傑作は傑作を生むのです。ああ、腹痛い。
(太田サトル)