「豆腐の角で頭をぶつけて~」と冗談で言われるくらい、豆腐は柔らかいものの代表格。

一見堅さとは無縁な豆腐だが、実は全国各地で“堅豆腐”や“石豆腐”と呼ばれる種類の豆腐が作られている。


石川県の白山や富山県、沖縄、それから精進料理にも使われる京都の黄檗豆腐も堅豆腐の一種。これらの豆腐の特徴は、書いて字のごとく「堅い」のだ。
どれくらいかと言えば、「縄で縛って持ち上げることができるほど」だそう。

その中でも石川県の白山で古くより作られている堅豆腐は有名で、この春には堅豆腐入りカレーまで発売された。

作り方は通常の豆腐とほぼ同じだが普通より大豆たっぷり、濃い豆乳で作るのがポイント。さらに完成後は重しなどで水をゆっくり抜く。

こうしてできあがった豆腐は水分が少なく、引き締まった仕上がりになるそうだ。

水が少ないので箸で掴んでも崩れない。豆腐ステーキや天ぷらにも使える上、お鍋にも活躍しそう。
実際に手に取れば、その重さはずっしり。と言うよりも、ぼってり。通常の豆腐に比べるとなかなか骨のある重さだ。
大きさも普通の豆腐より若干大きく、600グラム近くあるものも。これも堅豆腐の特徴のひとつ。
そのままにしておけば、賞味期限はおおよそ5日ほどで、水にさらせばもう少し長持ちする。

そもそも堅豆腐が作られるようになった理由のひとつは、保存食としての役割だ。
技術が発達した現代では躍進的に賞味期限がのびた豆腐だが、作られた当初は相当革命的だったに違いない。

食べてみると大豆の味がぎゅっとつまって、なるほど素朴な味わい。
鍋に入れると水分を吸ってモッチリ食感になるのも面白い。
確かに普通の豆腐よりは堅いが、もちろん顎が疲れるほどではない。木綿よりもさらにしっかりめで歯ごたえがある、といったところ。

最近、デザートでも食べ物でも“やわやわ”“ふわふわ”“とろとろ”が人気のキーワード。柔らかさが身上の豆腐でさえ、もっと柔らかくもっと滑らかに、と柔らかめが人気だとか。

確かに柔らかく口の中でとろける豆腐も美味しい。
しかしこの季節の食事は、ケーキにお餅など柔らかい物が続く。
たまには、しっかりとしたこんな食感も取り入れてみては。
(のなかなおみ)