本書の「はじめに」を読んでドキッ! とした。
「これまでも『これさえ読めば……』なんて本を何冊も読んできたけど、結局よくわからなかった。この本にも裏切られるんじゃないかなぁ……」。あなたはきっと、こんな疑問を持っているのではないでしょうか」
どこかでそんな疑問を持ってしまっていた……。しかし、本書はそうではないという。
「本書では、税理士である著者が、税金に関する裏・オモテ、実際の現場で起こっている本音の部分をぶっちゃけます」
著者は2000人超の経営者・起業家の相談を受けた実績をもつ岩松正記(まさき)さん(@iwamatsumasaki)。
「なかなか周りにも聞きづらい、読者が知りたい本音を、起業専門の税理士自らがぶっちゃけた本です。もちろん合法的な範囲内で、ギリギリまで迫りました。タイトル通り、『個人か? 会社か?』と迷っているような個人事業やフリーランスの方はもちろん、副業しようと思っていたり、実際副業している会社員の方が読んで、頭のモヤモヤをスッキリさせてほしい」とダイヤモンド社の編集担当・寺田庸ニさん(@yoji_terada)。
ところで、タイトルが長い!? 「長いタイトルは一目で認識できないので使わないほうがいい」と聞いたことあるけれど、編集者の寺田さんは本書で90作品を生み出しているいわば書籍編集のエキスパート。どうしてこのタイトルに?
「今回は、長くてもいいから、必要としている読者にきちんと伝わるようなタイトルを採用しました。ただし、通称は短く『ぶっちゃけ本』でお願いします(笑)」と寺田氏。
この『ぶっちゃけ本』、気弱なサラリーマンが、風貌が牛に似ている!? ので岩松ならぬ“牛松”税理士に質問! という会話形式で進んでいく。
「所得税の所得とは?」「確定申告ってなに?」「青色申告と白色申告は何がどう違う?」「複式簿記とは?」から話が始まるので、本当に理解しやすい。イラストもわかりやすく、さくさく読めるけれど、基礎だけではなく実践で使えるノウハウも詰まっていて、読み応えがある。
個人と法人でかかる税や税率の違い、「交際費」や「出張手当」の範囲、「必要経費」の境界線・分類分けの例、会社にしたほうがいい資本金の目安、法人化すべき人のタイプなど。さらには、「確定申告期日に間に合わなそうになったとき」「副業がバレやすいワケ」など、けっこう踏み込んだケースまで、“ぶっちゃけ解説”している。
聞き役のサラリーマンの彼、通称は“キヨワくん”とのことだが、“牛松”税理士がぶっちゃけをゆるめよう!? とすると、するどく切り込んでいくのが頼もしい。
こういった類のジャンルの本は、簡単だけどしくみだけの解説か、すごく難しいけど実務だけかの解説と二極化している本が多い中、「一緒に解説してほしい!」というニーズに応えている。
また、「BCG判定」なる判断基準がすばらしい。
「BCG判定」とは岩松さんが考案した、ある事例の税務判断について、「これはNG」というのを「B=ブラック」、「これは大丈夫!」を「C=クリア」、そして「どちらとも言えない」を「G=グレー」に分けて解説したもの。
「昨年、収入があったのに確定申告していなかった。『期限後申告』について教えてください」
「公務員は、副業してもいいの? 副業が見つかったら罰則規定はある?」
「携帯電話を会社で契約し、個人的に使う。これって業務上横領……?」
「白紙の領収書をもらって、自分で数字を書き入れてもいい?」
「会社の経費で商品を買い、家電量販店のポイントを自分のカードにつけてもいい?」
などなど27の項目がラインナップ。
「税理士・税務署のソン・トク」では、税理士選びのポイント、「もしも」のときのための税務調査の流れまでも紹介されている。
巻末には「確定申告1時間前にここだけは押さえよう! ぶっちゃけポイント38」も押さえてある“ぶっちゃけ本”。確定申告のこの時期、是非おともにしてください。
(dskiwt)