昨今のペットブームで、今や飼っている犬や猫を「家族の一員」と考える人は少なくない。そんなかわいいペットを、旅行へ一緒に連れていきたいと考えるのも、親として(?)当たり前のかもしれない。
車に乗せられて一緒にお出かけするワンちゃんはよく見かけるし、筆者自身も実家のワンコを車に乗せて海水浴へ出かけたこともある。
しかし、ペットとのお出かけなど、やはり車か新幹線で行ける範囲に限られるのではないか。うちのコを飛行機に乗せて一緒にフランスなぞに行って、パリジェンヌが連れたフランス語しか理解しないワンコと夢の国際交流……なんて、まず絶対無理。そう思っている人は少なくないのではないだろうか。
実は、そんな夢のような「ペットとの海外旅行」は可能だ。

ANA広報室の国松歩美さんによると、「ANAのペットらくのりサービスを使っていただければ、国内線はもちろん国際線での利用も可能です」とのこと。
すごいことだ。ペットと一緒に海外へ行けるなんて。
しかし、どんなペットも連れて行けるわけではない。動物の入国については国によってルールが異なり、法令や検疫制度により、ペットを飛行機に乗せられないこともあるという。ペットの輸出入については「必要な健康証明書や輸入証明書を事前にご用意いただきます」と国松さん。さらに、ANAでは7月~9月の暑い時期には、ブルドッグ、ボクサー、シーズー、パグ、テリアなど短頭種の犬の預かりは断っているのだという。
なぜだろう?

国松さんいわく、「短頭種の犬は、ほかの犬種と比較して高温多湿に弱いため、熱中症や呼吸困難を引き起こす恐れがあります。空港へ連れて来られても基本的にお預かりできませんので、ご了承ください」ということだ。大切なペットがフライト中に呼吸困難におちいるなど、飼い主にとっては悪夢のようなできごと。上記の犬種を飼っている方は、まず気をつけたい。しかしそれらの犬種も、蒸し暑い時期を除けば連れて行くことができるので、フライト時期をよくよく検討しよう。

飛行機に乗せられる、つまりペットと遠くへ旅行にいける! というところまではいい。
でも、海外へ連れて行くとなると、長時間のフライトは免れない。うちのコ、途中でお腹が空いちゃう! 大変だ、餌をやりにいかなきゃ……。ところが、待った。ペットと一緒に飛行機に乗れるといっても、ペットが乗せられるのは客室ではなく、実は貨物室だ。つまり預かり手荷物と一緒で、搭乗前に預けることになる。そうすると、十数時間のフライトでお腹がペコペコであろうペットに餌をやりに行くことはできないし、規定では、海外の乗り継ぎ地点でペットに餌を与えるということもできない。
もちろん、CAの方に貨物室へ見に行ってもらうなんてこともできない。つまりは、あらかじめ水と餌をたっぷり与えておかなくてはならないのだ。

そうは言っても、やはり「事前に与えてもそのとき欲しがらなかったので、フライト中が心配」ということはありえる。すると、前出の国松さんからうれしい一言。「水や餌が絶対にこぼれない容器でしたら、ケージの中でペットに与えていただくことができます」だそうだ。なるほど、これならうちのコがお腹を空かせることもなく、安心だ。

なお、どうしても「ペットを機内に持ち込んでそばに置いておきたい」という方。欧米系航空会社では、条件により客室にペットを持ち込むことができるというので、ぜひご参考に。

それでもまだまだ心配なのが、親(?)ごころ。なんせ、人間だって飛行機に乗るというと一種の緊張があるもの。ペットにとっては、いつもの環境とまったく違うところで長時間過ごさなくてはならないわけだし、飼い主がそばにいるわけでもないので、飛行機での旅の前には、必ずかかりつけの獣医師に相談をしよう。いくらペットと一緒に旅をしたいと思っても、ペットがそれを望んでいるわけではなく、そこはやはり飼い主の勝手な希望によるものだ。

一緒に旅をする前に、ペットが元気な状態なのか、まだ若くて体力があるか、などを飼い主の責任として、しっかりチェックしたい。大切な「家族の一員」のために。
(河野友見)