「詰将棋」の親戚みたいなもので、王手をかけられた状況から、指定された手数だけ逃げ切れば良いんです。
そのため詰め将棋と違って、決まった最終形がありません。
でも、まだ生まれたてのジャンルで、あのWikipedia先生にも項目がありません。細かいルールについても、まだ確定していないみたい。でも終盤の防御力を磨くには、持ってこいなんです。逃げ間違えてトン死しちゃった時ほど、切ないモノはないですよね。
そんな逃げ将棋を手軽に体験できるiPhoneアプリが「i羽生将棋」。その名の通り、羽生善治十九世名人監修のアプリです。もともと09年にニンテンドーDSで「羽生善治将棋で鍛える『決断力』DS」が発売され、そのiPhone版として登場しました。
単体の将棋アプリとしても、非常にユニークです。三段階の難易度が選べるCOM対局、二人対局、ルール解説などに加えて、「直感の七割は正しい」「勝つためには忘れる努力も必要です」といった羽生名人語録の収録や、羽生名人の最新対局結果までチェックできちゃいます。
そして本アプリ最大の特徴が、羽生名人になりきって次の一手を考える「着手予想」。初手から終局まで、名人の着手をどれだけ当てられるかに挑戦する、目から鱗の将棋クイズです。間違えた場合でも、正しい着手が表示されて、次の手番に進めます。対局中に羽生名人の一言解説が表示されるのが、ウンチク好きには嬉しいですね。
ついでに、参加者全員で競い合う、リアルタイムイベントもプレイ可能。毎朝6時になったら、先手(COM)が未公開棋譜に基づいて着手するので、後手のプレイヤーが盤面に選択手を指して、着手を予想します。結果がわかるのは明日の午前6時で、それまでは何度でも打ち直しできます。終局後はプレイヤーの全選択手がサーバにアップロードされ、成績が集計される仕組み。次回は5月6日から開催されますよ。
とまあ、いろんなアイディアが光本アプリですが、やっぱり面白いのは逃げ将棋。詰将棋とあわせて、350問を収録しました。内容は「1手逃げ」「3手逃げ初級」「3手逃げ中級」「3手逃げ上級」「5手逃げ」「7手逃げ」「難問」の7種類で、入門者から有段者まで幅広く対応。
一番簡単な「1手逃げ」だと、王手をかけられた状態から、1手だけ逃げるというもの。続く相手番で詰まなければ正解です。これがなかなかどうして、僕みたいな初心者では難しいんですよね。だって、どうみても詰んでるんだもん! それが正解を見ると、思いもよらない着手で逃走……。いやー、良質なパズルってのは、こういうのを言うんでしょうね。
ちなみに本アプリの原点となった書籍が「決断力」。羽生名人が自ら「勝ちに向かう思考法」を解析して示した内容です。将棋だけに留まらず、さまざまな事象に置き換えて読めますので、こちらも合わせてどうぞ。(小野憲史)