「す? どうした一体?
「『涼宮ハルヒの驚愕』の発売日間違ったあああ!」
「ああ、あれは確か全世界一斉発売で5月25日だったな」
「そうなんだよ、でもほら、なんつーかさ、ハルヒファンとしてはもう待ちわびまくったわけだろ!? 今か今かと待っていたわけだろ?!」
「まあ、気持ちは分かるけどな」
「で、本屋さんにいったら見たことないのがあったので、『やべ!もう出たのか!』と思って慌てて買ってきちゃったわけよ!」
「へ? だからまだでてないだろ?」
「そうなんだよ……」
「お前何買ってきたんだよ」
「『涼宮ハルヒの憂鬱』で英単語が面白いほど身につく本(上)と(下)」
「全然似てねえじゃねえか!……いやまあ、気持ちは分かる。タイミング的にな。
「ついだよ!」
「で、どうするの? 返品?」
「いや、とっておく」
「あれ? だって間違ったんだろ?」
「いや、表紙の裏が描きおろしポスターだからさ…は、ハルヒってかわいいよね」
「そんな顔マジで真っ赤にして言うなよお前気持ちわ……ああ、単語帳持ってるハルヒまじかわいいな……」
「だろ……」
「……はっ! それはともかく、中身は読んだの?」
「あ、それがさ。最初ネタ本だろうとか思ってたんだけど、これマジで使えるわ」
「英語の参考書にハルヒの絵が付いてるだけどか、そういうのじゃないの?」
「うん、本当に『涼宮ハルヒの憂鬱』の文章が英語訳されてるんだよね。例えば……」
“I’m not interested in ordinary people. Those of you who are extraterrestrials, future-men, otherworldly beings and psychics, come to me. Period”
「これなんだかわかる?」
「わ、わかんない単語多いけど……I’m not interested……興味がない……あ、わかった。『ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上』これか!」
「そうそう。こういう『涼宮ハルヒの憂鬱』の文章が日本語と英語で書かれているんだよね。一応『抄録』とは書いてあるけど、殆ど載ってるんじゃないかなあ」
「トムとキャシーがどうこう、っていう全然どうでもいい文よりはるかに読みたくはなるな、ハルヒだし。あ、オレハルヒ派なんだ」
「オレ長門派なんだ、消失の方」
「お前とはケンカせずに済みそうだ……じゃなくて。訳してるだけだったらあんま役たたなくね?」
「うん、これが多分この本のキモだと思うんだけど、大学受験レベルの英単語がハルヒの文章を英訳することで詰め込まれてるんだよね。例えばこれ見てみて」
「禁則事項です」
「ごめんなさい。言えないんです。
「みくるちゃんのセリフだな。アダルトみくるちゃんのおっぱいいいよな……」
「いいよな……それを英訳するとこうだ」
“That’s forbidden.”
“I’m sorry, I can’t tell you, I have no authority, especially now in me state.”
「ふむ、なんとなくわかるな」
「”forbid”=禁じる、”authority”=権威・権限、”especially”=特に、”state”=状態、というように、高校卒業・大学入試レベルの単語がきちんと入っているんだよね。結構な数あるよ。単語それぞれの解説もされているので、本格的なんじゃないかなあ」
「ほんとだ。しかも後ろのページで単なる訳じゃなくて、SVOCを使った構文解説まであるな。うへー、卒業してから大分経つから全然覚えてないわー」
「普通だったら読みたくなくなるんだけど、ハルヒなら……長門のためなら!」
「ハルヒのためなら!とはいえ結構難しいなこれ。本格的に受験向きなんじゃね?」
「うん、本格的に受験向きだと思う。発音の音声ファイルもダウンロードして聞けるから本当に使えるね」
「話のネタ程度かと思ったけど、最近のこういう本ってしっかりできてるもんだなあ…」
「同時にあれだよ、俺達みたいな卒業した大人が、TOEICとか英検受ける時ってさ、やる気起きないじゃん。そういう時のテンションあげるのにはもってこいかもしんないね。だから、間違って買ったけど、これを機会に試験でも受けて資格とろうかなって。長門のためにね!」
「よし、俺もハルヒのために! あ、なんか挟まってるじゃん」
「ふふふ……じゃーん。赤色チェックシート!」
「なつかしっ! うわー、今もつかうんだなこれ。
「2700語+1150語で3850語だな!」
「……」
「……」
「驚愕発売までには覚えきれなさそうだから、のんびりやるか」
「んだな」
(たまごまご)