大食い番組が苦手という人って結構多いかもしれません。
食べ物大事にしろよ!とか。
見苦しい!とか。料理人の苦労考えてるのか!とか。
その感覚、正しい。実に正しい。
美味しくなさそうに食べる様子は美しいものではないですね。食べ物に失礼です。
しかし、美味しそうに食べる姿は非常に見ていて微笑ましいし、美しいんですよ。

この『てんむす』という作品は大食いマンガです。
ただし「大食い競技マンガ」です。フードファイトですね。いかに効率よく大食いし、人に勝つかを競技として描いた作品なのです。
この時点で、上記のように大食い選手権などが苦手な人なら「うーん」となってしまうかもしれませんが、自分は一巻の表紙を心から見ていただきたいと願います。

彼女は天子。驚くほどの大食い少女です。
美味しそうに食べてるでしょう?
ここなんです。大食い競技マンガでありつつ、食へのリスペクトを絶対忘れない作品なのです。

一見矛盾しているようですが、こう考えてみてください。
楽しそうに走っている姿は、素敵ですよね。
辛いけれども走り切る長距離マラソンをやる選手は、走ることが好きだから苦しいけどやり遂げたとき笑顔になりますよね。
同じです。美味しい物をたべるのは走るのと同じ「楽しい」。大食い競技も同じように「楽しくあるべき」である、食に敬意を払うべし、とこの作品は語っています。

結日高校には、大食い競技の全国大会に向けて日々体を鍛えている「食い道部」があります。しかし興味をなかなか持ってもらえず新入生は入らない。

そこで出会ったのが、そば屋でとんでもない量を美味しそうに食べ続ける天子。早速スカウトし、天子も「女の子らしくごはんがいっぱい食べられる部」だと大喜びして入部することになります。
とはいえただ食べるだけじゃない。大食いには身体の構造を理解したコツが必要になってきます。マラソンで自分のペースをいかにつくり上げていくかと同じです。
同じものを飽きずに食べ続けるにはどうしたらいいのか。麺類を効率よく食べるにはどうするべきか。辛いものをスムーズに食べるには何が必要か。
非常に科学的に大食いのコツが解説されています。というのも、テレビ東京で放送されている「元祖!大食い王決定戦」の協力を得ているため。
実はガチンコなスポ根大食いマンガなんです。

大食い三か条
1・大食いは健康であれ!
2・早食い厳禁!
3・食べ物に感謝を!

これらを踏まえた上で、大食いに挑む女子高生たち。

なぜ女子高生かというと、豊穣の神に授かった実りに感謝するため、巫女たちが祭祀で行った大食いにちなんだ大会が、本作の全国大会「天食祭」になっているから。
先程も書いたように、大食いはマラソン。生半可な気持ちで適当に挑んでも決して勝てないくらい厳しいものですし、体内の運動ですから体に重度の負担がかかります。食に敬意を払わない人は問題外です。
しかし食い道部の少女たちは皆、美しく食べます。手を合わせて食物に敬意を払います。そしてなにより、食べることが大好きなのです。

特に天子が食べる様子は必見。本当に幸せになれますよ。
断言しよう、美味しそうに食べる女の子ってこんなにかわいい! なぜなら間の欲求を本来の形で満たしているから。
心の底から「食」という生命の欲求を楽しんでいるから。
食というマラソンを魂から楽しむ少女たちの姿を刮目して見るべし!
(たまごまご)
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