異名が付けられやすいスポーツといえば野球界とプロレス界が双璧をなすと思うが、それ意外にも、サッカー、柔道、ゴルフ、ボクシング、大相撲、その他各種格闘技などなど多岐に渡る。
スポーツ選手の異名と言われて咄嗟に何を思いつくかは、自分が生まれた年代によってちがってくるだろう。昭和36年生まれのわたしは、やはり「人間風車」(ビル・ロビンソン)、「燃える闘魂」(アントニオ猪木)、「ゴッドハンド」(大山倍達)、「銀盤の妖精」(ジャネット・リン)といったあたり。もちろん、これらはすべて本書の中で紹介されている。他にも「あー、こんな異名のヤツいたなー」っていうのが次から次へと出てきて、なんともいえず楽しい。
異名というのは、基本的にはその人物の得意技や外見的な特徴をデフォルメしてつけるものだと思うが、単に奇麗にまとめただけでは、異名としてのインパクトは薄い。そこにホンの少しの悪意が匂ってこそ、異名は人々の心に残るのだ。
「ハニカミ王子」(石川遼)なんて、最初にこれを考えた人がペロッと舌を出している様子が見えるようだし、「顔面達磨大使」(藤原喜明)は古舘伊知郎が考案したらしいが、皮肉を尊敬でコーティングするのがうまい古館らしい見事な異名といえる。