わたしがひとりで外食をすると、たいてい「麺類」か「カレー」か「串焼き」になってしまいます。これらの食事には共通点があるのですが、それはいったい何でしょう?(正解はレビューの最後に!)
というわけで、いまやグルメマンガの第一人者と言っても過言ではない、ラズウェル細木の新刊が出た。
蕎麦屋で酒を飲むことについて蘊蓄(うんちく)を傾けた本は、これまでにも数々あった。けれど「日本酒」と「蕎麦」ではなく、あくまでも「酒」と「麺」というザックリしたくくりで、その楽しさを紹介してみせる切り口の本は、過去、見た覚えがない。
第壱章「そば屋で一杯!!」、第弐章「うどん屋で一献!!」、第参章「ラーメン屋で乾杯!!」、第四章「シメの麺で満腹!!」……と、各章のタイトルを見ていくだけでも、呑ン兵衛だったら様々な「酒と麺」なシチュエーションを思い浮かべることが出来るはず。
静かな蕎麦屋で冷や酒(冷酒じゃなくて、常温の酒のことね)を頼む。アテは板ワサとか玉子焼きとか、ちょっとしたものでいいい。ほどよく酔いがまわったら、蕎麦を食う。
関東には、あんまりうどん屋は多くないが、だからこそ数少ないうどん専門店にはいい店が多い。カレーうどんでビール飲むの、おれは好きだよ!
ラーメン屋には餃子を筆頭に、しゅうまい、ザーサイ、肉野菜炒めといったように、つまみになるおかずが無限にある。本格的な中華料理屋だったら、紹興酒いっちゃうのもいいなあ。
……と、このように、麺類の店っていうのは、お食事処でありながら、こんなにも呑ン兵衛にやさしい場所なのだ。酔っぱらいウェルカムの楽園なのだ。
わたしは東京の下町育ちだけど、蕎麦っ食いじゃないので、正直言って蕎麦のうまい店とかいい酒を出す蕎麦屋とか、そういうのは全然わかんないの。でも、ラーメン屋にはちょっとうるさいんだよ。といっても、ラーメンガイドブックの誌面をにぎわす話題のラーメン店なんかには、まるで興味がない。わたしが愛して止まないのは、昭和の東京には当たり前に存在していた、素朴な醤油ラーメンなのだ。
街でそういう昭和っぽい雰囲気の店を見かけると欠かさず暖簾をくぐるし、そういう昭和なラーメンを出す店の噂を聞けば、すっ飛んでいってラーメン(この場合は“中華そば”って呼びたいね)を食べる。
で、さすがはラズウェル師匠だ。本書の第参章「ラーメン屋で乾杯!!」を開いてみると、いきなり銀座で昭和4年から営業を続ける老舗の名店「萬福」が、トップでドドーンと紹介されているじゃないか。わかってらっしゃるなあ!
ここのラーメンは、三角に切った黄色い玉子焼きがのっているのが特徴。実際食べてみるとたいしてうまいもんじゃないんだけど、でも、そこがいいんだよね。
と、ここまで読んできて、第四章「シメの麺で満腹!!」についてまったく触れないのが不思議ですか? あのね、わたしは少食だから、お酒飲んだ帰りにラーメン食べていきたいとか、あんまり思わないのよ。だから、そこは大食いの人たちにおまかせしときます。たくさん飲んで、たくさん食べて、たくさん吐いたりしてください。
(とみさわ昭仁)
【クイズの答え】
「麺類」も「カレー」も「串焼き」も全部“片手で食べられる”から。ひとりで食事するのってヒマだからさー、たいてい何かしらの本を読むか、iPhoneでツイッター見るかしてるんだよね。いいトシしてお行儀わるーい。