仮にも文筆業を営んでいるためか、人から言葉や漢字について質問されることが少なくない。実のところ、特別くわしいわけではないのだが。
そんな筆者なので、自分の子供たちにも言葉や漢字を大切にする人間に育ってほしいな、などと考えたりもする。一説によれば、幼児期はひらがなよりも漢字の方が覚えやすいという。右脳を使ったイメージで物事を覚えていく年頃なので、画数の多い難しい漢字もスイスイ覚えてしまうのだとか。グローバル化が進む時代、そりゃあ英語の習得は大切だろうけど、やっぱり漢字をしっかり使いこなせるようになってほしいと思う。国際人である以前に、日本人なのだから。
…いや、待てよ。あれ? 漢字は、日本の文字か? いやいや、違うぞ。漢字っていうくらいだからな。読んで字の如く、「漢」の字だろう。「漢民族」「漢王朝」の文字ってことだったはず。つまりは、元を正せば中国の文字というわけだ。
では、日本独自の文字は無いのかというと、ちゃんとある。ひらがな、カタカナがそうだ。これらは、漢字の音から生まれた万葉かなが、平安時代にひらがな、カタカナへと変化していったといわれている。どちらの文字も、使われているのは日本のみ。元となっているのは漢字ではあるものの、日本独自の文字といえよう。
そしてさらに、日本には日本独自の漢字もあるのをご存知だろうか。それが、「国字」と呼ばれるものだ。漢字ではあるものの日本で生まれた、いわば“和製漢字”である。
たとえば、「畑」という文字。
「畑」のように、意味を持って字が成り立っているものが国字には多い。山の上りと下りの境目にあるから「峠」、大量に獲れやすく手強くない魚だから「鰯」、「米」と書いて「メートル」、それの「毛」のように小さな単位ということで「粍」と書いて「ミリメートル」……。また、膵臓の「膵」や汗腺の「腺」といった医学関連の国字には、中国に逆輸入されたものもあるという。
日本はよく、資源に乏しい国といわれる。だからこそ創意工夫の物づくりに励み、その技術力を世界に認められることで、国際的なポジションを築いてきた。ひらがな、カタカナ、そして国字。元々は漢字由来の文字ではあるものの、そこから独自のものを生み出してきた先人に敬意を表さずにはいられない。
日本に存在する、日本独自の文字。グローバル化が進む時代だからこそ、大切にしていきたいところだ。
(木村吉貴/studio woofoo)
まあそうはいっても、誰かのお役に立てるなら嬉しいし、仕事の肥やしになればとも思い、日頃から言葉や漢字にはこだわるよう心がけているつもりではある。
そんな筆者なので、自分の子供たちにも言葉や漢字を大切にする人間に育ってほしいな、などと考えたりもする。一説によれば、幼児期はひらがなよりも漢字の方が覚えやすいという。右脳を使ったイメージで物事を覚えていく年頃なので、画数の多い難しい漢字もスイスイ覚えてしまうのだとか。グローバル化が進む時代、そりゃあ英語の習得は大切だろうけど、やっぱり漢字をしっかり使いこなせるようになってほしいと思う。国際人である以前に、日本人なのだから。
…いや、待てよ。あれ? 漢字は、日本の文字か? いやいや、違うぞ。漢字っていうくらいだからな。読んで字の如く、「漢」の字だろう。「漢民族」「漢王朝」の文字ってことだったはず。つまりは、元を正せば中国の文字というわけだ。
それを日本に輸入し、日本中で使っているわけだ。たしか学校でも習ったことだし、誰しも知っていることなのだが、たいていの人は普段、中国の文字という意識をすることなく漢字を使っているのではないだろうか。さも、日本の文字、日本の言葉であるかのように。
では、日本独自の文字は無いのかというと、ちゃんとある。ひらがな、カタカナがそうだ。これらは、漢字の音から生まれた万葉かなが、平安時代にひらがな、カタカナへと変化していったといわれている。どちらの文字も、使われているのは日本のみ。元となっているのは漢字ではあるものの、日本独自の文字といえよう。
そしてさらに、日本には日本独自の漢字もあるのをご存知だろうか。それが、「国字」と呼ばれるものだ。漢字ではあるものの日本で生まれた、いわば“和製漢字”である。
たとえば、「畑」という文字。
これも国字にあたる。「田」は中国発祥の漢字だが、田んぼと違って畑には水が無い。そこで、水が無いことを表すべく「火」を加えて「畑」という国字を生み出し、日本では田と区別して使われるようになったのだという。
「畑」のように、意味を持って字が成り立っているものが国字には多い。山の上りと下りの境目にあるから「峠」、大量に獲れやすく手強くない魚だから「鰯」、「米」と書いて「メートル」、それの「毛」のように小さな単位ということで「粍」と書いて「ミリメートル」……。また、膵臓の「膵」や汗腺の「腺」といった医学関連の国字には、中国に逆輸入されたものもあるという。
日本はよく、資源に乏しい国といわれる。だからこそ創意工夫の物づくりに励み、その技術力を世界に認められることで、国際的なポジションを築いてきた。ひらがな、カタカナ、そして国字。元々は漢字由来の文字ではあるものの、そこから独自のものを生み出してきた先人に敬意を表さずにはいられない。
日本に存在する、日本独自の文字。グローバル化が進む時代だからこそ、大切にしていきたいところだ。
(木村吉貴/studio woofoo)
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