普通ゲームレビューって次から次に新作が出てくるので、どれだけ遊んでも一周したら書いちゃうモンなんですが、それを忘れるくらいおもしろかった。
「開幕!!パドックGP 」です。フィーチャーフォン向けに公開されたのが2010年の7月で、スマートフォン向けには今年6月にAndroidで公開。満を持して8月にiPhone版が公開されました。ええっと、iPhone版は450円です。
メーカーは「ゲーム発展国++」" target="_blank">「ゆけむり温泉郷」のカイロソフト。あ、他にもいろいろ秀作アプリを出しているので、ぜひ一度チェックしてみてください。同社のゲームをレビューするのは、これが3回目なんですが、個人的には一番はまっちゃいました。
ゲーム内容はレーシングチーム経営シミュレーションです。プレイヤーはオーナー兼監督となって、マシンやパーツを研究開発したり、ドライバーを育成したりしながら、世界各地のレースを転戦していきます。
ゲーム展開はざっくり言うと、マシンの研究開発や、ドライバーのトレーニングなどを行うガレージモードと、レースモードの繰り返しで進んでいきます。ガレージモードでパラメータを上げて、レースモードでテストする、というサイクルですね。
このときユニークなのが、レースモードでは原則として操作ができないことなんです。
ゲームユーザーの立場から言えば、見守るなんてまどろっこしいことはせずに、結果をすぐに確認したいところです。戦略シミュレーションゲームで、戦闘シーンのアニメーションをオフにして遊んでいる人などは、その好例ですよね。
ところが本作では、このレースシーンの作り込みが非常によくできていて、見ていて飽きません。ドット絵の温かみのある絵柄で、抜きつ・抜かれつのレースが巧みに表現されており、思わず見入ってしまいます。8ビットテイスト全開のBGMもイイ!ですね。
先行車がダンゴ状態になっていて、なかなか抜けなかったり、思わぬところでコースアウトして順位を下げたり。かと思えばコーナーで複数の車を一気にパスしてトップに躍り出たり。絵柄的に全然リアルじゃないんですが、だからこそ燃えるんです。競馬ゲームの名作「ダービースタリオン」を、ちょっと思い出しちゃいました。
「ドラゴンクエスト」が街とフィールドと戦闘シーンで、それぞれ異なるリズム感を持っていて、それがくるくる反復しながら進行するように、名作と呼ばれるゲームは、どれもアップテンポとスローテンポを繰り返しながら、リズミカルに進んでいきます。
だからこそ、あと1ターンだけ、あと1バトルだけとコントローラに手が伸びて、気がついたら朝になってたりするんです。本作もガレージモードとレースモードの繰り返しで、このリズム感をうまく演出しています。
もちろん、ガレージモードもよくできています。レースに勝ち進むうちに、だんだんマシンの車種や、研究開発できるパーツや、参戦できるレースが増えていったり。ガレージが拡張できたり、スタッフがたくさん雇えるようになったり。中盤以降はドライバーを二人雇って、同じレースに出場させることもできるようになります。
こんなふうに、ゲームが進むにつれて、どんどん選択の自由度が増えていく、鉄板のゲームデザイン。毎回思うんですが、カイロソフトさん、このへんの「手の引き加減」が絶妙ですよね。
ただ、ちょっとユーザーインターフェースでわかりにく点もありました。本作では歴戦のマシンを分解することで、「研究データ」というパラメータを稼ぐことができます。改良などに使用する、非常に重要なデータです。
ところが、この項目を表示するには、ガレージ画面の中央を指でスワイプ(スライド)する必要があるんです。
でもって本作は、13年間で一区切り。ゲーム履歴が得点化されて、ハイスコアが競えます。ずーっと遊ぶこともできるんですが、そうなると「二周目はもっとうまく遊べるはず」と思うのが人の常。しかも車種とパーツを一つずつ、引き継ぐこともできるんです。
ところが、ここでうっかり高性能な車種やパーツを選んだりすると、かえってドツボにはまるんですよ。というのも、それなりにチームの技術レベルが必要になるんですね。つまりレースの初期から使えない。これに気づいたときは、すでに時遅し。結果的に二周目の方が一周目より低スコアになっちゃいました。
やるなカイロソフト……。というわけで只今、絶賛三周目に挑戦中です。皆さんもぜひ、頭まですっぽりハマってみてください。
(小野憲史)