その1
その2

●監督がいない!

――監督がいない、ということに驚いているのですが、どのように成り立っているのでしょう?

石舘:映像表現ではそうたくんが監督ですし、オタク向けアニメの知識やバラエティ的表現では僕が監督ですかね? 全体的な内容を作るのが僕で、それを映像世界にするのがそうたくん。『バクマン』のシュージンとサイコーのような役割分担ですね。


菅原:脚本&音声というネームを作るシュージンが石舘さん、絵コンテというネームを描くサイコーがぼく、福原さんという編集長がいる感じでしょうか(笑)

――なるほど。アニメの3つのパートで作業も分かれいるのでしょうか。

石舘:最初に脚本を作るのは僕の作業です。「メンタイ」に関しては「そうたくんの得意分野で思いっきり勝負しよう!」というコンセプトだったので、やりやすそうなテーマを相談したり、他のスタッフから案を募集させてもらい、コント台本として作り直して声撮りしました。「アフレ湖」は、声優さんにすべて丸投げということはありませんよ(笑)。

――あれ、そうだったんですか?

石舘:一応様々な部分で、どう転んでもそれなりに面白くなる保険だけはかけて収録しました。声優さん3人の作品に対するアグレッシブな姿勢にも多大な恩恵を受けています。どんな感謝の言葉をもってしても感謝しきれませんね。

――面白さを皆さんが持ち寄っている感じがします。

菅原:石舘さんは計算し尽くされた熟知されたプロの言葉の笑い。ぼくは感覚的に「これおもろ!」っていうビジュアル的な笑い。それぞれタイプが違うと思うんです。
でもどっちも、弱点も強みもあって。上手く補い合えてる気がします。「ティータイム」でキャラが立った後、「メンタイ」ではビジュアル的にめちゃめちゃなことが起こる。そして「アフレ湖」でメタに声優さんが全てをぶっ壊すという(笑)。最高にバランスがいいと思います。

――gdgdの妖精3人みたいですね。

菅原:この作品はあえて役職を分かりやすくする為に、テロップで役職を最小限にしか書いていないんです。作品スタッフ内で、関わっている全員がいくらでもみんなで口を出し、ブラッシュアップしまくってます。

――全員並列で制作しているのも珍しいんじゃないでしょうか。

菅原:みんなが監督補で脚本補で映像監督補みたいな。福原さんも石舘さんも音効の徳永くんや音楽の井上さんも重藤さんも、映像に関して思ったことがあったら言ってくれて映像監督補です。石舘さんが演出、脚本であってもみんなが補なので、思いついた人からガツガツダメだしして、石舘さんもガツガツ変えていく。


――実際作ってみて労力はどのくらいなのでしょうか。

菅原:実質1週間でアニメ1話を作る事を考えると「メンタイ」部分は2日で作らなければいけない計算。時間との戦いです。

――2日……。

菅原:3Dの実際の動きやレンダリングは一人自宅のパソコンで全てこなさなければいけない。今パソコンを何台か最強装備にした上で、オーバークロックしてとにかくレンダリングスピードを上げています。あと、物理演算やモーションデータの利用、モーションキャプチャーといった自宅で作れる新しいのCG技を習得して、なるべく作業を楽にするものを利用しています。そうじゃないと一人ではとても回せないので(笑)

――やはり一人だったのですか! 脚本とのやりとりが大変になりそうな……。

菅原:石舘さんからいただく音は、編集してラジオドラマのようなところまで出来上がっています。CGは僕が音を聴きながら考えて作るのですが「このシチュエーションはどういう描き方が良いのかな?立ち位置は?タイミングは?」とパズルのように考えて音をCGに召喚して変えていく作業が、難しくもありMAD映像のようで面白かったです。

●スタッフの「ここが萌える」

――ピクピク、シルシル、コロコロという三人のキャラはどのような発想から生まれたのでしょうか?

石舘:おバカなボケ、ナナメからのロジカルなボケ、そして2種類のボケに振り回されるツッコミ。ベーシックなお笑いトリオの構造です。
それを萌えキャラに擬人化したらこうなりました(笑)

――あっ、トリオ物ですね。動かす上でここは気をつけている、という点はありますか?

石舘:あんまり動かしすぎないようにお願いしています。ローポリの記号的キャラが作品全体のハードルを下げているところが大きなポイントです。バカにして見ていたつもりがいつのまにかあの3人を可愛く感じ始めてしまう、というところが狙いだったので、記号的ローポリキャラの範疇を出ないように意識しています。

――ところで他作品で「これは萌える!」というキャラは今までありましたか?

石舘:個人的な好みを言うと「かみちゅ!」と「ストライクウィッチーズ」にだらしない笑顔になって腰が砕けます(笑)

菅原:僕自身、「エヴァ」のアスカや「涼宮ハルヒ」といったツンデレキャラがタイプで、ツンデレのキャラが負けちゃう薄い本が割と好きです。よく考えたら子供の頃にサブリミナル的に刷り込まれてしまったのかもしれません。ブルマもチチもランチも18号も『ドラゴンボール』のキャラってみんなツンデレですね。ドラクエのアリーナもビアンカもツンデレ。

――実際こうやって萌えキャラを作ってみて、手応えとしてはどのような感じでしょうか。

菅原:まず、ちゃんと「萌え」として、愛する方々が温かく迎え入れてくれたという事にこの上なく感謝したい気持ちでいっぱいです 。本当にもう泣けるほど嬉しい!!

――いや、かわいいですよ!

菅原:石舘さんや、萌えに詳しいアシスタントプロデューサーの重藤さんに日々しごかれ、「小さい妖精のおっさん」(「ネットミラクルショッピング」のキャラクター)から比べたら、まともに可愛い妖精を生むことが出来たって事が最高に良かったです。ぼくは漫画の女の子がもともと大スキなんです! エロも主食は漫画です。


――おっと、ほんとですか。ぜひ今度じっくりお話をしましょう。

菅原:あと、萌えでいうと子猫がミャーミャーって毛糸の上に乗っかて転がってるだけで萌えますねぇ。『けいおん!』の唯のおっちょこちょいさが何か象徴的な気がしています。コケたり慌てるだけで可愛い。gdgdでいうと、ピクピクのすぐ騙まされちゃったり、リアクションがアホそうなところも萌えます(笑)。

――可愛らしさの方の萌えですね。

菅原:きっと、ぼくと石舘さんの中で共通のイメージが出来上がってて、gdgdのキャラは想像の中で生きているんでしょう。それは声優さんの中でも生きていて(ぶっちゃけ本人ですし)絵を書いてくれた方や視聴者の方の中でも生きているんだと思います。

――見ている人の中にそれぞれの「ピクピク像」が生きている気がしますね。

菅原:三森さんの底知れない可愛さ、水原さんのいい感じのメンタリティ、明坂さんの天才的な頭の切れがあってこそ。声優さんの本人の魅力が作品の魅力です。
キャラを声優さん自らが更新してます!

――声優さんの力すごいですよねえ。ぼくはルックスとの相互効果でかわいいのかなと。

菅原:ルックスでは、可愛いものにはちょっとだけ「汚し」のワサビを入れて味が引き立つようにしています。ピクピクも可愛いスカートの柄が雑だったり、シルシルは服とかスティックがテキトーだったり、コロコロはキノコを被せて顎紐があるし。汚しが好転して、まんま可愛いまま全開のものより、ぼくは温かみがあって好きです。唯が変なTシャツ着てる感じでしょうか……。

●大きな変革の兆し●

――「gdgd妖精s」という作品を作ってみて、CG作家として感じるところはありませんか?

菅原:MMD(「MikuMikuDanxe」)とか簡易的にレンダリングしたキャラがテレビで受け入れられるとなるとすごい事になります。CGが商業利用されて歴史は浅いのですが、実際10年前までは「CGはどこまで綺麗に出来るか競争」の真っただ中。時間の掛かる最高峰のレンダリングしか許されない時代で、プリレンダリングなんてもってのほかだったのですが。

――綺麗が当たり前、みたいな風潮は確かに感じられましたね。

菅原:この10年で映画とかyoutubeで、もー散々凄すぎるCGが出てきて。そういったクォリティー高いものは1フレーム20分1秒30フレーム作るのに600分で、10時間。
1秒10時間掛けたような映像しかテレビで放送しちゃいけなかったんです!

――うへえ、そんなにかかるんですか。ちょっと個人ではやってられないですね……。

菅原:個人では絶対物理的に一部しか担えない。という常識でしたが、gdgdでやっている画質、MMDやプリレンダリングなら1フレーム0.1秒なんです。1秒30フレームが3秒!!

――はやいっ!

菅原:もしこれが「アリ」になったなら、家庭用パソコン1台で萌えアニメの時代到来ですよ! もちろん協力して力を貸してくださった方々あっての事ですが、それでも「MMDを使って作ってるような映像」が悪い言葉ではなく良い響きに変わります!

――MMDを使ってすごい作品を作る方が実際にいらっしゃいますもんね。

菅原:今まで個人でMMDのすごい映像を作れちゃってたけど、流れで出口がなかった方々に風穴をあけてあげられると思うと嬉しくてたまりません。石舘さんや福原さんみたいな人と出逢えれば、CGを家のパソコンで作っている方々みんなが、アニメ映像監督になれちゃう。大袈裟にいえば一人でアニメ制作会社になれちゃう時代を証明出来るかもしれない。

●「次回のgdgd妖精sは……」

――あっ、人気キャラの持田房子(42)は今後出るんでしょうか。

菅原:むひひひ。ノリ次第です。

――「gdgd妖精s」のフィギュアが欲しいのですが予定はないのでしょうか。キャラグッズも凄く欲しいですし、Tシャツ再販希望の声も高いと思います。

福原:本当に有難いことに、最近グッズ化のお話しがチラホラ舞い込んできました。こういう有難いお話には前向きに対応して参ります。 詳細はバックステージにて。あ、Tシャツ(お客様用)は近々告知を開始します!

――今の反響を見てどう感じておられますか?

石舘:反響は当然、とても嬉しいです。この、視聴者も含めてみんなで作っているような感覚がとても楽しいですね! 視聴者も含めて全員がそれぞれ「監督」の仕事の一部を担っている変な作品だと思います。自分で作っておきながら他人事のような感想ですが(笑)。まずは最終回、そしてBDの特典製作をこの勢いで駆け抜けたいです。

福原:#8オンエア終了した時点で尚、期待と怖さで毎週のオンエアを観ており、反響には一喜一憂だけで終わらせないよう心掛けてます。「gdgdの製作は俺たちと近いよな」この言葉に救われもし、またもっと応えなきゃいけないと感じています。今後のgdgdは……。落ち着いてからスタッフたちとgdgd話しながら、考えてたいですね。



現在発売中の「Windows 100% 2012年 01月号」には、「gdgd妖精s」のMMDデータも収録されています。
これを機に、「gdgd」のキャラをあなたも動かしてみるのはいかが?
(たまごまご)
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