2011年12月1日、東京有楽町朝日ホールで行われた「京騒戯画」のプレミアム先行試写会に行ってきた。

「京騒戯画」は東映アニメーションとバンプレストがタッグを組んだ、オリジナルアニメーション。
本編はバンダイチャンネルニコニコ動画YouTubeで1月15日まで配信中。
巨大ハンマーを振り回す少女、人間と妖怪が共存し、しょっぱなからバトルを繰り広げている。カメラの切り替えも早く、画面には「カラフルでなにかわからない物体」がフワフワ浮いている。目が追いつかない……! そして起きている事件に対してなんの説明もない! 試写会で観た最初の印象は「ぽかーん」だった。エキレビ!でレビューを書いていたたまごまごさんも同じ感想でした(記事はコチラ)。
でもなんだかひきつけられる、なにかはわからない!……単純に面白いんだ。これはもう一度観ないと……。
冒頭の屋根の上を走っているシーンは「映画 ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー…ですか!?」を思い出す(屋根走りバトルが好きなんでしょうか、松本理恵監督)。

舞台挨拶では声優の矢尾一樹さん、原嶋あかりさんが登壇。そして今回インタビューに登場していただく、東映アニメーションの浅間陽介アニメーションプロデューサーとバンプレストの平田滋クリエイティブプロデューサーもステージへ。

浅間さんは言った。
「完成したのは当日朝6時半」
ええ、上映は19時だから、約12時間前なのか……。
ギリギリだ。
「いよいよ観れるんですね、楽しみです」
とは平田さんのひとこと。
現場はいったいどんな感じだったんだろう、アニメ本編も謎が多いけど、東映アニメーションとバンプレストがなぜタッグを組んでアニメを制作しているのかも気になる。ううむ、これは詳しく話を聞きにいかないと!


つくりたいものをつくれる環境でやりましょう

――ここまでアバンギャルドな作品だったとは思わなかったです。「完成したのが試写会の朝」っていうのもすごいですね。
平田 試写会当日、浅間さんが会場に来たときに完成したフィルムを持って「これです……、あがりました……」って。
浅間 上がらなかったらそのまま逃亡したかったです(笑)。
平田 僕も逃げたかったですよ。時間がないので1回しか観られなかったから、壇上に上がってもなにを言えばいいのか(笑)。
――ははは。まず「京騒戯画」という企画の成り立ちについて教えてください。
平田 バンプレストでは、景品事業で培った経験を活かしてなにか新しいことにチャレンジしていきたいという話が出ていたんです。
20代男女のハイターゲット向けの深夜アニメがブームになっていたこともあり、萌えアニメとか新しく立ち上げてみたい…とか。
――どちらから話を持っていかれたんですか?
浅間 東映アニメーションとしても新しいことをやっていきたかったというのもありますが、たまたま、バンプレストさんとの別の打ち合わせの中で「いまの状況だったらアニメ作れるんじゃない?」と、とつぜん現実化したと聞いております(笑)。
平田 私自身も打ち合わせの現場にいた訳ではないので、半分雑談の中からだと思いますが…(笑)。
浅間 それが2010年の10月か11月くらいですね。
――東映アニメーションとバンプレストがまったく同じタイミングで「なにか新しいことをやりたい」と思っていた。こういう形でアニメの企画がスタートするってよくあるんですか?
浅間 まったくないですよね。発表する媒体すらゼロから立ち上げていく、この座組みからして新しいと思います。
平田 バンプレストとしてはゲームのコンテンツからアニメに派生させていったことはあります。でも、「オリジナルアニメをつくろう」なんて話はまったく出てこないですからね。双方のタイミングがよかったんですよ。
――「京騒戯画」を観る方法って基本的にウェブ配信だけなんですよね。
平田 始めからウェブ系中心で進めたい、という考えだったんです。

――そうなんですか。
平田 単純に東映アニメーションとバンプレストで、つくりたいものをつくれる環境でやりましょうと。パーティが大きくなっていくと、自由度がなくなる危険性もありますし……、いろいろなしがらみがでてしまいますから……。
浅間 いまはインターネットでアニメを観る若者層は多いですよね。それなら思い切ってしょっぱなからインターネットで配信しましょうと。公式チャンネルで固めてしまえば、違法アップロードを防げるのではないかという思いもありましたし。現在、バンダイチャンネルとニコニコ動画、YouTubeで配信しています。
平田 バンプレストでは独自に運営している携帯サイト「バンプレナビ」というものがあります。おかげさまで会員数もユニークで200万人、1日のPV数は100万PVになります。情報の発信においても有効に活用でき、かつ、Webにも誘導しやすい。なので、京騒戯画もWebで配信してみたいと思っていました。ちなみに京騒戯画は、携帯からも視聴できますよ(笑)


若さと新しいことをしたいという情熱

――主題歌のTEPPANさんは、ニコニコ動画で活躍している人たちなんですね。
この人選も新しいなあ。
浅間 松本監督からの提案なんですよ。主題歌をどうしようかという話になったときに、「TEPPANさんというバンドがとてもいい」と。それでダメモトで声をおかけしたら「ぜひ!」ということになりまして。次の打ち合わせのときにはもう曲ができていました(笑)。
――すごい! そもそも松本理恵さんを監督に起用した経緯を教えてください
浅間 「京騒戯画」は5あるものを10にするのではなく、なにもない0をできれば100まで目指して欲しいというプロジェクト。原作があるというわけでもなく、ゼロからのスタートなので、世界観を全部創りあげないといけない。非常に体力が必要なんです。そしてオリジナルをやってみたいという強い意欲。これらを兼ね備えた監督を探していました。このときちょうど松本監督が「映画 ハートキャッチプリキュア!」をまとめあげたところで。若さと新しいことをしたいという情熱を感じて白羽の矢をたてました。

平田 松本監督とキャラクターデザインの林祐己さんにはじめて会ったとき、自分たちの方向性をしっかり持っている!という雰囲気を感じました。やりたいことを表現してくれそうで「あ、この人たちといっしょに仕事をしたいな」と。試写会の当日、はじめて完成したフィルムを観たときに、ふたりにお任せして正解だったと思いました。
――作品の内容に関しては何か注文されたんですか。
平田 ほとんどないですね。
浅間 がんじがらめに枠組みを作ってしまうと、物語に広がりが出なくなるんです。「京騒戯画」はオリジナルですし、だったら松本監督の持っている世界観を伸ばしてみようと。
平田 バンプレスト側は最初「萌え作品をつくりましょう」って言ってたのに気がついたら、「これ萌えじゃないな?」って(笑)。でもみんな、松本監督の持っている世界観に魅了されちゃいましたね。
――声優さんの人選などは?
浅間 基本的に松本監督の考えをベースに、いろいろ打ち合わせを行ないました。絵コンテを描いているときに、頭のなかで「このキャラはこういう声だな」ってイメージするらしいです。
――全員、キャラにピッタリとハマってると感じました
浅間 「ハマる」ということから言うと、「京騒戯画」というプロジェクトは、バンプレストと東映アニメーションの打ち合わせからスタートして、なにかひとつがうまくハマらなかった時点でダメになっていたと思います。
ひょっとしたら最初の5分のPVをつくることにすらたどり着けなかったかもしれない。ほんとうにいろいろなことがうまく組み合ってできている作品だと思います。
(加藤レイズナ)

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