2月末に発表されたよしもとブサイクランキングにて、NON STYLEの小さい方でアシンメトリーヘアーでウザくてナルシストキャラでおなじみの、井上裕介が初の1位を獲得した。

ご紹介するのは、そのブサイクランキング1位“じゃないほう芸人”の石田明の著書『万歳アンラッキー』だ。
あまりに多すぎる骨折経験や、家庭環境、人間関係…、これまで石田が経験したウソみたいなアンラッキー体験の数々が綴られている。

NON STYLEは、石田と井上、出席番号が近かった中学高校の同級生同士として2000年大阪で結成。全身白い衣装を着たガリガリの石田と、ブサイクナルシストキャラの井上。NON STYLEといえば“M-1チャンピオン”として認識している人も多いはずだ。2008年M-1グランプリで見事優勝し、賞金1000万円を獲得している。M-1のほかにも、所属事務所のプロフィール<受賞歴>欄には輝かしい成績がズラリ。ABCお笑い新人グランプリ 審査員特別賞、OBC 上方漫才大賞 優秀新人賞、MBS 新世代漫才アワード 優勝、NHK新人演芸大賞 大賞、上方お笑い大賞 最優秀新人賞…。新人賞総なめ!こんなにたくさん、取りたくても取れない芸人が山ほどいるのに。これのどこがアンラッキー?

何千人ものお笑い芸人が憧れ、大会が終了した今では幻となったM-1優勝でさえも、石田にとってはアンラッキー体験のひとつなのだ。念願かなって優勝はしたものの、なぜか翌年大ブレイクしたのは準優勝のオードリー。アンタッチャブル、ブラックマヨネーズ、チュートリアルにサンドウィッチマンと、これまでの優勝者はみんなブレイクしてきたのになぜか。

育った家庭があまりに貧乏でろくな食事をとっていなかったため、異常なほどに骨が弱い。
70歳レベルの骨密度。そのため骨関係のアンラッキーはかなり多い。キャッチボールをしただけで肩を脱臼。デコピンしただけで中指を粉砕骨折。マンホールで転んで足首をはく離骨折し仕事に遅刻、あげく骨折を信じてくれない相方に体をはったネタをやらされる。驚いたのは、螺旋(らせん)骨折。聞いたことあります?なんとなく字面でわかるかもしれないけれど、螺旋階段のように骨をぐるぐるとまわるように折れた骨折のこと。芸人仲間で集まった草野球の最中、ボールを投げただけで、右腕がパーン!と音をたててイッた。痛そう治らなそう絶対嫌…。もし自分がなっていたら、たぶん一生話のネタにできる一大事件、というか精神的にかなりひきずってしまいそう…。そんな珍しい螺旋骨折だって、石田にとっては数あるアンラッキー体験の中の1エピソード、というか豊富すぎる骨折経験のうちのひとつにすぎない。右腕ぐにゃぐにゃプランプラン状態で病院まで連れていかれる車の、間違って運転席に乗せられたりと、石田の周りにアンラッキーは尽きない。


相方・井上によって引き起こされたアンラッキーエピソードも多い。「そもそも相方が井上って時点でアンラッキー。24時間変顔してるやんコイツ」と、笑いにかえる石田。井上のウザキャラが定着しつつあるため、街で声をかけられる時も、「あ、キモくない方だ!」「ナルシストじゃないやつ!」とすっかり“じゃないほう芸人”呼ばわりされることが多くなったという。超イケメンでドラマ出演して女優とも熱愛している相方“じゃないほう”や、一発ギャグで大ブレイクした人気者の相方“じゃないほう”だったらまだわかるけれども、“ナルシストじゃないほう”という微妙な立ち位置もこれまたアンラッキー。

ネタがつきない人生というのも、お笑い芸人としてのひとつの才能なのかも。

人の不幸は蜜の味。読み終わると、「これに比べたら私ってけっこう順風満帆なのかもな」なんて思えてきて、なんだか「ありがとう」という気持ちになった。そして、子どもができたら絶対に栄養のある食事を与えなくてはと、将来の子育て像まで強く意識することができちゃいます。

本書に出てくるアンラッキーエピソードを、ケラケラ笑いながらおもしろおかしくしゃべくっているトークライブDVD 『NON STYLE TALK 2011 Vol.2』もオススメです。(夏トマト)
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