【阪神タイガース vs. 横浜DeNAベイスターズ(京セラドーム大阪)】
初田 今年、台風の目になるのは横浜DeNAベイスターズではないかと。2月1日、宜野湾のキャンプに私行ったんですけど、中畑清監督を囲む取材陣が180人、テレビカメラが何十台。去年までのどかなムードが漂っていた横浜のキャンプがガラッと変わったんですよね。あれ程たくさんのカメラに囲まれてキャンプ初日を迎えたことは今までなかった訳で、選手一人一人の表情を見ても引き締まっているのがわかるんです。そして監督の一言一言がまたたくさんの記事になる。こちらのネタ枯れの心配をよそに今度はインフルエンザにかかり、バルコニーから手を振ってと、新聞の誌面やテレビ・ラジオを連日賑わして……ああいう中畑監督の明るいムードからすると、おおざっぱな野球をするイメージに捉えがちだと思うんですが、その脇を高木豊コーチや白井一幸コーチが固めていて、細かい野球をやろうとしているのがオープン戦で見て取れました。
山内 高木豊コーチが言ってましたよ。「巨人と同じことをしていては勝てない。やっぱりそこは工夫が必要だ」と。そこからが面白いんですが、「ベースを持って走ればアウトにならないんじゃないか。これはルール上どうなんだ?」とおっしゃっていて……
斉藤 ハッハッハッ(爆笑) 何言ってるんですか?
山内 要は「常識を疑え!」という話なんです。
斉藤 そういう斬新な発想って、春田真オーナーから叩き込まれたんですかね?
初田 池田純社長かもしれない。でも、ルールの中でいろんなことが考えられるから、これまで様々な野球の戦術が生まれてきた訳じゃないですか。野村監督がやったフォースボークだったり、昔のジャイアンツのドジャース戦法とか。そういう意味では、野球の戦術ってまだ出尽くしてないと思うんです。だから、勝つために何かやればいいんですよ。「あ、こんなのあったんだ!」というのをシーズンで見せて欲しいですね。
斉藤 阪神はどうですか? 和田新監督。
山内 オープン戦で打順をコロコロ変えてますよね。金本が今年は大丈夫だという話なんですけど、城島を含めなかなかみんなが揃ってこないから、打線は苦労してるみたいですね。あとはキャッチャーをどうするのか。
初田 藤井も開幕は厳しいですからね。
斉藤 マートン4番説もありますから、確かに阪神の打順は気になりますね。
【読売ジャイアンツ vs. 東京ヤクルトスワローズ(東京ドーム)】
初田 今年のジャイアンツは誰もが優勝予想できるほど戦力が充実してますよね。杉内とホールトンが加入し、内海と澤村がいる。この4人の投手で最低50~60勝、他の投手の分を足して80勝するであろうと計算ができちゃう訳ですけど、その計算通り果たして行くのかというと、そこがわからないのが野球の面白いところで。だからこそ、開幕戦の内容が大事になって来るかもしれないですよね。
山内 一方のヤクルトですが、みんなが期待してない年ほど怖いんですよ。
初田 ヤクルトは外国人選手をどう使うかですよね。ミレッジとバレンティンを外野で使うとなると登録できる投手は2人。
斉藤 アレ、なんで飯田コーチの背番号取ったんですか?
初田 85年生まれだからですって(笑)。まあこれで彼の生まれ年は絶対忘れないですけどね。ちなみに、「ニックネーム何がいい?」って飯田コーチが聞いたら「スパムが好きだからスパムがいい」と。でも言ったことも忘れてるから呼んでも振り返らない。ホント、適当なんですって。
山内 じゃあ割とバッティングも雑な感じなんですかね?
初田 伊勢コーチに聞くと、バレンティンが去年来たときよりも遥かにいいと。「真っすぐ待ちで変化球に対応できるバッターだ。意外とやるかもしれんで」と言ってました。
斉藤 青木の穴っていうのは?
初田 打に関してはミレッジ。守りは……。でも、レフト・バレンティン、ライト・ミレッジとなると、センターには守りを期待したいですよね。そうなるとバランス的には雄平選手でしょうか。あとはショートも問題。山田が守るのか……
斉藤 川端慎吾は?
山内 去年のポストシーズンの怪我の回復次第ですね。今年から背番号5に変わって期待されてますけど。
初田 今年、宮本選手が2000本安打まであと25本。その記録を達成した後、どれくらいのモチベーションを保てるかも注目ですよね。もしかするとサードとショート両方で世代交代をしないといけないかもしれない。
斉藤 でも去年のような戦い方だと宮本選手は外せないですよね。相手チームから見れば、宮本がいなかったらこんな楽なチームはないですから。
【中日ドラゴンズ vs. 広島東洋カープ(ナゴヤドーム)】
初田 中日は戦力ダウンもなく、しかも川上憲伸が帰ってきた訳ですが、一番の変化は監督ですよね。高木監督、素敵な方なんですよ。CBC(中部日本放送)での解説の時はいつもドーナツ持ってきてくださって。
山内 高木さんは選手の特徴をしっかり捉えた解説をされてましたよね。中日以外の選手もきちんと分析されて。そういう人が球団の中に入ったら、自分の持っているデータと球団の中にあるデータとを合わせて、チーム戦術に生きてくるんじゃないですかね。高木さんの解説にはお決まりの文句がありましたよね。どんなにいいプレーがあっても「普通です」と。
斉藤 文化放送で言うと山崎裕之さんタイプですね。だから「普通です」ではない時の褒め方に価値がある。
初田 CBCラジオの宣伝で「CBCラジオを聞くのが普通です」というキャッチコピーとして使われたくらい、有名な常套句ですよね。去年のドラフトの抽選で高橋周平を引き当てた時、会場が一瞬シーンと静まり返ってから、高木さんが「ニヤッ」と笑って手を挙げたのが忘れられないですね。
斉藤 二塁手やっていて名球会ですから、全てにおいて野球を知り尽くしている方ですよね。とんでもない監督が戻ってきました。その高木監督が目をかけているドラフト1位の高橋周平選手が気になって仕方がないですね。森野選手の目の色が変わってきてるみたいで、あれだけの選手を本気にさせるだけでもすごいですよね。
初田 高木監督にしても谷繁にしても、何が起きてもバタバタしないベンチだから、高橋周平みたいな若い選手も安心して中に入っていける土壌がありますよね。中日は地力がずっとあるチームだから、監督変わったくらいじゃそうバタバタしないでしょ。
山内 解説の達川さんが言っていたんですが、達川さんも現役時代、古葉監督から阿南監督に変わった年に優勝したそうなんです。古葉監督はどちらかというと管理をするタイプの監督で、逆に阿南監督は選手に任せるタイプ。だから周りからはチームが変わっちゃうんじゃなういかと心配されたそうなんですが、逆に選手は結束して、チームがひとつになって優勝した。だから、今年の中日でも同じことが起こるんじゃないかと達川さんはおっしゃっていました。
初田 高木監督が70歳、権藤ヘッドが73歳。このお二人に加えてキャンプでは86歳の杉下茂さんが臨時コーチに来られて、その日に限って広岡さんもいらっしゃって高橋周平にボールの捕り方を教えてました。また広岡さんのグラブさばきが柔らかいんですよ。80歳ですよ。
山内 僕も神宮の室内練習場で教えてるところを見たことがあります。軽快でリズムが良くて、こういっちゃ選手に失礼かもしれませんが一番上手いんじゃないかと。
初田 そう! 要は「ボールと喧嘩するな」という教えなんですが、その所作が美しいんですよね。
斉藤 広島は、ミコライオがすごいですね。春先で150kmバンバン出ますし、1イニングは打てないですよ。いい補強しましたよね。クローザーには今村もいて、先発の頭数も……福井はコントロールが乱れがちですけど、その荒れ球が結果的にいい形で抑えちゃうこともあるから。
山内 マエケン、バリントン、大竹。あとはドラフト1位の野村ですよね。
初田 野村は打線に恵まれれば2桁ありえますよね。セ・リーグの新人王候補じゃないでしょうか。
(part4へ続く)
(オグマナオト)