TEAM NACSの舞台「WARRIOR〜唄い続ける侍ロマン」を見てひれ伏した。
NACS、屈強。

TEAM NACSとは、ユーモアたっぷり、ちょっぴりぼやきキャラめいたところもキュートな大泉洋が所属する劇団。
現在、劇団員5人が全員主役の深夜ドラマ「スープカレー」(北海道放送創立60周年記念作品、本広克行総監修というけっこう大きな企画)が放送中。そこで彼らは、ごくごくフツーの人間たちが織りなす日々の悲喜交々を、実に口当たりよ〜く演じている。
北海道出身の彼らは、地元のローカルバラエティー「水曜どうでしょう」で大泉がブレイクしたことをきっかけに注目されて東京進出、今に至っている。
一番人気の大泉洋に代表されるように、ほどよいゆるさが人気の秘密だと思っていた。
だからきっと、こっちのほうがしっくり来るとは思う。
NACS、愛嬌。
けど、コイツら、ゆるくねえ。
むしろ、頑丈。きっちきち。
TEAM NACSの舞台「WARRIOR〜唄い続ける侍ロマン」は、ハンパなかった。
今、彼らはこの作品をひっさげて全国18カ所のツアー中で、5月末にはいよいよ東京での上演となるが、ひと足早く彼らの地元・北海道公演を観た。

ツアー全体で7万人分の前売りチケットは、発売されるやいなや完売。
この不景気な世の中で、7000〜8000円するチケットが即完。それだけ人気がある時点で、強ええ。

「WARRIOR」は、織田信長の活躍から徳川家康が天下を取るまでを、2時間ちょっとで一気に見せるお芝居だ。戦国BASARAならぬ戦国NACS とでも言えるような戦国武将の競演だ。
戦国、アクションは男のロマンかもしれないが、30代後半になってから、アクション時代劇に挑む気概ぞ、あっぱれ。アクションを売りにしてきた劇団ってわけじゃないのに。このチャレンジ精神が強ええ。

さて、やっぱり、誰がどの戦国武将を演じているかがまず気になるところ。
柴田勝家を森崎博之(NACSのリーダー。作、演出も多く担当)、
明智光秀を大泉洋(NACSブームの立役者。スポークスマン的存在)、
徳川家康を安田顕(「SPEC」「ホタルノヒカリ」などでもおなじみの演技派)、
織田信長を戸次重幸(アニメなどにも詳しい2枚目キャラだがただひとり独身)、
羽柴秀吉を音尾琢真(いろいろ小回りが効くチーム最年少、といっても36歳)となっている。

劇団での時代劇は10年ぶりになる彼らだが、オープニング、5人が各々個性を出してスピーディーにアクションを決めるところは、アニメのオープニングみたいで一気に客席の温度が上がる。
幕開けと同時に観客を異世界へ引きずりこむ早ワザ、手練感たっぷりだ(演出、森崎リーダー)。

お話のあらましは、織田が明智軍を討ち負かして光秀を配下に、濃姫を妻に迎えることになり、そこから5人の武将がいろいろ絡み合いながら、本能寺の変まで一気に駆け進んでいくというもの。
天下統一の野望に生きる信長を軸に、光秀と濃姫の関係がフックとなってきたり家康の影武者が苦悩したりすることで、単なるチャンバラものではないメロドラマ性も加わる。客席のほとんどを占める女性たちへの当然の配慮も万全。

この舞台、キャラクタードラマとしての完成度がけっこう高い。
NACSそれぞれのキャラと、戦国武将キャラがうまくリンクさせてあるのだ。
カラダのキレがいい戸次と音尾は、ふんだんにアクションする。
演技派の安田は、影武者の苦悩を演じきる。
リーダー森崎は、ひとり笑いパートを担う。
そして、大泉も、トリックスター性を存分に発揮する。
戸次がアムロで、森崎はブライト+リュウ、音尾がハヤトで、大泉がカイで、安田がシャアって感じだろうか。

NACSのキャラクター性、明瞭にして、揺るぎねえ。
劇団結成から16年、見事な職人技だ。
リーダーの森崎が原案を書き、劇団PEOPLE PURPLEの宇田学が今回初参加して脚本を書いているが、メンバーも意見をたくさん出して練り上げるのだそう。5人5様の異なる嗜好も採り入れていることで、汎用性が高まる。盤石。


しかも、今回は、そのキャラクター性をちょっと捻ってあるようだった。
今回、影武者ネタが入ったストーリーだが、物語だけでなく、NACS各々のキャラクターにも意外性がちょい盛ってある気がしたのだ。
それが、途中で薬味入れたら、あら、違う味!みたいな嬉しさ。もう、どこまでサービスするのだろうか、NACSさんたちは。

カーテンコールの5人の各々のキャラを生かしたあいさつも、もはや芸術の域である。揺るがないおもしろさって美しさだなと感動のあまりむせび泣いた。
これだけ、美しいまでのほっこりNACSの情熱舞台を見せてくれるためには、身も心も精進していると思うんだよなあ。

TEAM NACS、最高。あんたら、侍の中の侍だぜ。
(木俣冬)
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