その認識を改めるときが来たのかもしれません。まさか、きっかけが超のつく伝統的ビッグタイトルの最新作、「ファイアーエムブレム覚醒」だったなんて…。
「ファイアーエムブレム」は、20年以上もの歳月を積み重ねてきたシリーズ。どの作品も、剣と魔法、善の竜と悪の龍が対立するファンタジー的な世界観は共通。敵を倒したりして経験値を稼いで成長するRPG的なキャラクターたちを、戦場の中でコマに見立てて指揮するSRPGに属します。スーパーロボット大戦シリーズと並んで国産(海外ではほとんど見かけませんが)SRPGを支える二本柱ですね。
かぎりある資源をやり繰りして勝利に導くのがSRPGの「S」=戦略シミュレーションのキモ。キャラクターの「成長」を持ち込むと、レベルを上げるほどヌルゲーになる。そこに、武器を使えば使うほどチビていく「消耗」や、HPが0になったキャラクターは二度と生き返らない「死亡」といったリアルの味付けをして、このシリーズは独自の立ち位置を打ち立てたわけです。
そんなシリーズが進化を重ねてきた「覚醒」。DS向けに発売された「新・紋章の謎」の要素を引き継ぎ、「カジュアルモード」を選べばキャラクターも死ななくなりましたし、戦闘中にアニメシーンが入る「カットイン」や声優さんのボイス付き。
試行錯誤を積み重ねた集大成だけに、過去作のいいところもよりどりみどり。特殊能力の「スキル」などいろいろとありますが、今回の目玉は「仲間との絆」です。隣り合った仲間のキャラと一緒に攻撃したりかばいあう「デュアル」や、二人が同じマスに入って前衛・後衛として能力を高めあう「ダブル」など。サポートする回数が多いほど「絆」も強くなり、支援効果もアップしていきます。
ますます強まっていく男女の「絆」がたどり着くゴールーーそれは結婚!
戦闘で好感度(絆)を高めると、戦闘後に「支援会話」を交わしておつき合いを深めてゆくのは、恋愛ゲームの作法に近いもの。たとえば「女子が弁当を作ってくれる」イベントに沿ったカップルだと、肉と野菜のバランスが取れた弁当(健康を気配りしてるアピール)→私の分も作ってきました(一緒に食べましょう)→一生弁当を作ってくれないか(男からプロポーズ)というぐあい。
結婚には支援効果がオトクになるほか、健全な男女がくっついた結果といいますか、子供という名の追加キャラもあり。親の能力やらスキルやらを受け継ぐため、かけ合わせる血筋に頭をひねる『ダービースタリオン』的な悩みも尽きません。
しかし……なんぼダビスタ的にはいい結果が出ようとも、くっつくのは馬ではなくヒト。おのずと「こりゃあアウトだろ」ってカップリングもあるんですよ。いろいろ仲人をしてきた中で、女性が苦手なロンクー(♂)君に半獣半人のベルベットをあてがったときは、「いい仕事をしたな」と思ったもんです。
が、千年生きてきた熟女の設定とは言っても、見かけも性格も幼いマムクート(ドラゴンに変身できる種族)である合法ロ(略)ことノノの恋愛がやばすぎ。ゴツいおっさんのグレゴに「一生いっしょに遊ぶっつー約束をする指輪だ」とプロポーズされたのは、見かけは犯罪ギリギリとはいえ、切なくも萌えたりします。
でも、ちょっと頭のネジがゆるんだダークマージ(黒魔道士みたいなもの)のヘンリー×ノノのカップルがスゴい。同族のマムクートと遊べない、とノノがぼやくのをヘンリーが聞いてあげて、いよいよ告白へとこぎつけましたが……以下、再現フィルム。
「うん、この方法だったら一緒に遊んだりできるはずだよ。ちょっと時間はかかるけど」(中略)「ノノの子どももマムクートだから成長すればノノと遊べるようになる」
遊び仲間を増やす=子作り……ピュアな娘を言葉たくみに騙してないかヘンリー、アウトーーーーーッ!!!!
そんな踏み外したカップリングや、プレイヤーの分身であるマイユニットを女性にすると男を取っ替え引っ替えの乙女ゲーちっくにも遊べる『ファイアーエムブレム覚醒』が最高です。ギャルゲーとしてもSRPGとしても!(多根清史)