プロの料理人の華麗な包丁さばきや鍋振りは、見ているだけで惚れ惚れする。ただ、それらはテレビで見ることがほとんど。
目の前でシェフが調理してくれる機会は実際にはあまりない。ポピュラーなところでは、寿司や鉄板焼きのカウンター、ホテルの朝食ブッフェの卵料理くらいだろうか。

もっと本格的な調理を見たいなら、ホテルの高級レストランなどにある「シェフズテーブル」という選択肢もある。キッチン付きの個室で専属のシェフが料理をふるまってくれるプライベートダイニングだが、予算オーバーになりがちなのが難点だ。

そんなシェフズテーブル並みの体験がリーズナブルにできると評判なのが、ラディソンホテル成田の「キッチンスタジアム」。いったい、どんな体験ができるのか。実際に行ってきた。

キッチンスタジアムとは、同ホテルで2008年から毎月一晩(※2012年9月以降は2ヶ月に一度)おこなっているプロモーションディナー。フルコースディナーと料理に合ったワインを楽しめるイベントで、目玉はホテルの総料理長や担当シェフたちが会場内で調理の一部をおこなうこと。プロの見事な腕さばきを間近で見ることができるのだ。

料理は毎回変わり、私が参加した第30回は「モダンハワイアン料理」がテーマ。10品からなるコースは、彩り豊かで味も繊細。
たとえば、ハーブがたっぷり添えられた「マグロのタルタル」は生姜のソースが爽やかで夏らしいひと品だし、「スズキのソテー」はカルダモンの風味がいいアクセントになって食欲を誘う。お口直しにはマイタイのスムージー、デザートにはマンゴーハロハロやココナッツマラサダが登場するなど、ハワイテイストも満載。会場ではフラダンスショーもあり、リゾートムードがさらに盛り上がっていた。

会場の後方では広々としたテーブルでシェフたちが手際よく料理を仕上げており、その様子はいつでも見ることができる。盛り付けだけでなく、火を使った調理シーンもあり、立ち上がる炎には思わず歓声が沸いていたほど。同行者も、「こんな機会はめったにないから」と興奮して見入っていたが、たしかにこのライブ感は贅沢すぎる。

料理に合わせたワインのセレクションも秀逸だった。この日はカリフォルニアワイン4種が出たが、グラスが空きそうになると、「もっと召し上がりますか?」とスタッフがすぐにサーブにかけつけてくれ、いわば飲み放題。ホテルの上品な食事だと、「食べたりない」「飲みたりない」こともありそうだが、このイベントに限っては心配無用だ。

ちなみにこの日、同席した2歳の娘もショーやシェフの調理に夢中。3時間近いディナータイムを飽きずに楽しんでくれたのはこれが初めてかも。

フルコースディナーに飲み放題のワイン、さらにエンターテインメントショーとシェフのパフォーマンスが楽しめて5,500円というのは破格の安値。
プライベート空間でないことをのぞけば、パフォーマンスその他はまさにシェフズテーブルそのもの。ちなみに同ホテルは東京駅から約1時間とアクセス至便。海外エアラインクルーの利用も多く、手軽にリゾート気分が味わえるから、週末のちょっとしたリフレッシュにもぴったりだ。

次回は10月20日(土)の予定で料理は「アルザス地方のフレンチコース」。宿泊とあわせたプランもあり、朝食込でシングル16,500円、ツインもしくはダブル2名様で25,500円。

たまの贅沢というより、隔月の恒例にしたいような「キッチンスタジアム」。ぜひ一度体験してみては。
(古屋江美子)
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