主人公の栗原一止は過酷な労働環境をものともせずに働き続ける医師だが、夏目漱石(とりわけ『草枕』)が好きで、人生の指標にしているという変人でもある。彼と愛らしい奥さんの榛名(ハルさん。職業は山岳写真家)の関係も魅力的で、そうした人間ドラマも人気の原因である。今回刊行された『神様のカルテ3』は、前2作を上回る深度のある物語が展開される問題作だ。作者の夏川草介に、小説執筆のこと、作品のこと、そしてこれからのことをざっくばらんに聞いてみた。ファンの方はぜひご注目を!
ーー夏川さんは現役医師でたいへんお忙しいと思うのですが、学生時代から小説はずっとお書きになっていらっしゃったんですか?
夏川 長編を書いて終わらせたのは1巻が最初なんです。短い物語は大学時代にちょっと書いたりしていましたけど、他人に見せる前提ではなかったですね。
ーー海堂(尊)さんは、長い時間をかけてご専門の本を書き終えてゲラをチェックしたあと、ぽっかりと時間があいたので小説を書いてみたそうです。夏川さんはどんな書き方なんですか?