review

『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』を読んでみた

《一昔前なら教員と事務職員だけで研究開発の大部分ができたかもしれません。しかし、状況は大きく変わりました。研究の成果を実用化するには特許取得が必要で、知財専門家が必須です。産学連携をはかるために、契約担当者もいる。研究成果を一般の方に発信するための専門家もいります。複雑化している実験機器を使いこなすには、経験豊かな技術員も不可欠。秘書の重要性も高まるばかりです》

山中教授は、これら大勢の研究所のスタッフたちを「正社員」としていかに継続して雇用していくかという重圧とともに、毎年数十億円もの血税を使わせてもらっているのだから、何とか成果をあげて社会に還元しなければならないという使命を抱えている。授賞決定直後の記者会見での教授の「国に感謝」という言葉も、こうした使命感から出たものだろう。

iPS細胞はまだ実用化されていない開発途上の技術だ。実現すれば、「再生医療」への応用により、心臓に重い病気を抱えた患者などを救うことが期待される。その反面、iPS細胞から完全な卵子や精子を作り出すことも、法律的に禁じられているとはいえ理論的には可能なので、倫理に抵触する要素もはらんでいる。しかしそういった負の側面以上に、いま考えるべきは、それを一刻も早く必要としている患者さんがいるということだと、教授は強調する。

今回の山中教授へのノーベル賞は、研究成果を評価するという以上に、最適な形で実用化されるよう期待をこめてというところも大きいように思う。しかしこれほどまでに周囲への気遣いのできる人なのだから、きっとさらにすばらしい成果を期待できるに違いない。科学音痴のわたしだが本書を読んで、その思いを新たにした。

CiRA(京都大学iPS細胞研究所)公式サイト
※一刻も早いiPS細胞の実用化のため、同研究所では一般からも支援を募っている。くわしくは上記公式サイトを参照。
(近藤正高)
編集部おすすめ

あわせて読みたい

レビューの記事をもっと見る

トピックス

今日の主要ニュース 国内の主要ニュース 海外の主要ニュース 芸能の主要ニュース スポーツの主要ニュース トレンドの主要ニュース おもしろの主要ニュース コラムの主要ニュース 特集・インタビューの主要ニュース

ピックアップ

もっと読む

レビューニュースランキング

レビューランキングをもっと見る
お買いものリンク