伝説の超人気番組「水曜どうでしょう」(HTB)で全国的に知名度が拡大したクリエイティブオフィスキュー。その社長であり、芸能プロデューサーとして活躍する鈴井亜由美さんは、夫である鈴井貴之さん(ミスター)、今やドラマに映画と引っ張りだこの売れっ子俳優となった大泉洋さん、そして彼が所属する演劇ユニット「TEAM NACS」等を育てた立役者でもある。
20年間に渡り、同社の副社長を務め、オフィスキューの母とも姉とも慕われる。どうでしょうファンには“副社”の愛称でおなじみだったが、2012年8月に社長に就任。11月2日にはオフィスキュー設立20周年を記念し、その歴史を振り返る単行本『CUEのキセキ 〜クリエイティブオフィスキューの20年』(メディアファクトリー)を刊行した。

−−今回の本を読んで、まず驚かされたのはミスターのダメっぷりです。みんなのギャラを使い込んでしまうくだりは呆気にとられました。金庫からお金がなくなり、亜由美さんが電話をすると妙に落ち着き払っていておかしい。「とりあえず警察に行ってくるわ」と出て行こうとすると、背後から「すいませんでした!」と鈴井さんの声がしたという……。

鈴井亜由美 (以下、亜由美) ホント、ダメな人ですよね。数十万をススキノで飲んでしまったんですよ。しかも、1回じゃ済まなかった。

−−えっ?
亜由美 懲りない人なんですよね。でも、痕跡が残ってるので、すぐバレる。
だったら、やらなければいいのにと思うんですけど、欲望に勝てないんでしょうね。

−−その尻ぬぐいは亜由美さんが……?
亜由美 いったんは私の定期預金を崩して、みんなにギャラを支払い、翌月からの彼のギャラで順次返済してもらいました。事務所としての収入も潤沢にない状態なのに、社長としての自覚がなさすぎますよね。

−−喧嘩にはならなかったんですか。
亜由美 「このままでは、これ以上一緒に仕事をするのは無理!」とぶちまけたら、「だったらやめようや」と逆ギレされて、一カ月以上口も聞かない状態が続いて……。

−−それはきついですね。
亜由美 もう鈴井とは別れて、劇団を辞めたとしても一人で事務所をやっていこうと思いました。でも、そんな決心をした矢先に「どうしても話したいことがある」と呼び出され、「結婚してください」ですよ。まったく意味がわからない。

−−ムチャクチャですね(笑)。ついさっきまで険悪だったはずなのに。
亜由美 このタイミングで、プロポーズするか? ですよね。
。その時は結婚する気はなかったのでびっくりしました。

−−ちなみに、おつきあいはされていたんですよね?
亜由美 一応、つきあってはいました。

−−よかった。安心しました。
亜由美 でも、彼氏らしいことしてもらった記憶はまったくないですよ。デートもしたことがなかったし。

−−えっと、それは飲み歩いていて帰ってこないからですか?
亜由美 まず、デートに行くお金がないんです。もっぱら、私がお金を貸したり、食事をご馳走したり、友達との飲み会に連れて行ったりしていました。周囲には「彼氏」として紹介していたけれど、正直、この人はどういうつもりなのかとも思っていました。

−−しかも、当時、ミスターにはかなりの額の借金があったんですよね。
亜由美 ススキノでバーを経営していたときの借金があったし、事務所を開設するまでは確定申告もしていなければ、国保も年金も払っていなかった。
親に紹介する前に、とにかく借金を返さなくては、と思い、翌月から彼のギャラは私に管理させてほしいと提案しました。

−−素直にOKしましたか。
亜由美 案外すんなり受け入れていました。もともと贅沢品には興味がないし、お酒を毎晩飲めればいいというタイプ。あればあるだけ使ってしまうけれど、なければないでどうにでもなるんですよね。

ーー彼女が貯金をはたいて、事務所を設立してくれたのに、一生懸命働くどころか、支払うべきギャラでススキノ豪遊というのは、それだけで別れの原因になりそうなものですが、亜由美さんがミスターを見捨てなかったのはなぜだったんでしょう。

亜由美 何度も何度も失望しましたし、もう一緒にやっていくのは無理だとも思いましたけど、この事務所を設立するきっかけをくれたのは彼だし、“やるだけやった”と言えるところまでは到達できていない。<ダメ人間を自分が変えてやる>みたいな気持ちもあったと思います。

ーーなるほど。気になるプロデュース結果は……?

亜由美 結婚すれば、多少は真人間になってくれるのではと思っていましたが、そうでもなかったですね。結婚しても、子どもが生まれても、自分の生活は一切変えない。ホントずるいですよね(笑)

(島影真奈美)

後編へ続く
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