世はまさに握手会ブームである。
アイドルグループのみならず、スポーツ選手も、写真集を発売したグラビアアイドルも、政治家も(←ちょっと意味合いは違うけど)握手を通じてファン(有権者)と触れ合う。


握手をするといっても、大抵はちょっとだけ手を握って終わりだ。しかし、「OKB48握手会」だけは違う。握り放題なのだ。

O・K・Bとは
お・きにいり・ボールペン…のこと。

しかも「OKB48選抜総選挙」と題した投票も行っている。これは、48本のボールペンと握手(=試し書き)をして、お気に入りのペンを投票してもらうというイベントで、ボールペンファンの間で人気急上昇中だ。早速、OKB48“総合プロデューサー”の古川耕さんと“劇場支配人”の岩崎多(まさる)さんにお話を伺ってきた。

――OKB48を立ち上げたきっかけは何ですか?
古川さん「元々、岩崎さんが編集を担当していた雑誌で連載をしていて、新製品のボールペンを紹介する時に『このボールペンは、AKBでいうところの、筆箱のセンターになれるか!?』『ボールペンの世界では毎日がAKB総選挙ならぬOKB総選挙ですよ!』と書いてたんです(笑)。そうしたらすぐに岩崎さんから、『これから文房具のムックをつくるので(『すごい文房具リターンズ』K.Kベストセラーズ:2011年10月発売)、その中でOKB48を実際にやりませんか?』って言われて、昨年の秋に握手会と選挙を本当にやっちゃったのがきっかけです」

――話が早かったんですね!
岩崎さん「古川さんがボールペンをAKBに例えた時に、会議室に人を呼んで48本の“選抜メンバー”との握手会と選挙をしたら面白そうだということが頭に浮かんだんです(笑)。ボールペンも黒いから『綺麗な黒髪』といった感じで擬人化もできますし、AKBも最初は黒髪でしたし…。古川さんは“総合プロデューサー”、私は“劇場支配人”ということにしまして(笑)」

非常にユニークな設定である。
ここで、投票方法を簡単に紹介すると…

参加者は、会場に用意した48本のボールペンの試し書きをして、気に入ったボールペン上位5位までを理由を添えて選出。
選考基準は、書きやすさ・見た目・握り心地・価格・機能性・個人的な思い入れなど全て自由。また、公式劇場(=試し書き用紙)にはノートパッド「ニーモシネ ライト」(マルマン)を使用。持ち込みのノートやメモ帳への試し書きも可。順位は、会場での投票にWEB投票と識者の投票を加えた規定のポイントシステムによって決定する。なお、前回の総選挙で下位の10名(本)は卒業。新たに10名(本)が加入した。

ちなみに、初めて開催した時は、準備の段階でどのボールペンを選出するかで6時間も激論を交わしたという。きちんと選ばないと、ボールペン愛好家の皆さんから「なぜ、私の『推しペン』は入ってないんだ!」とのお叱りを受けかねないため、膨大な数のペンの中から慎重に選んだそうだ。

――1回目の総選挙の時はどんな様子でした?
岩崎さん「去年は、公開形式の握手会は開催していないんです。mixiの人気コミュニティ『文房具朝食会』の皆さんにお願いして、会議室を『OKB劇場』と名づけて握手会と投票を行いました」

だが、OKBの投票はそれだけではない。表参道と巣鴨で街頭調査も行ったのだ。
岩崎さん「文房具にそれほど興味がない人の意見も入れたかったんです。
それも3日間に渡ってガッツリ調査しました。本当は新橋も入れたかったんですけど、もう時間がなくて。これらの投票にWEB投票を加味して順位を決めました。実際に開催してみると、参加者のコメントが非常に面白いので、結果と共に『すごい文房具リターンズ』で発表することにしました。皆さん、ボールペンに対する思い入れがすごくて」
古川さん「さらに、僕が構成をしている番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)で特集したり、2012年の1月にはお台場の東京カルチャーカルチャーでひたすらコメントを読み上げるイベントなどを開催したりもしました」

こうして、手探りで始まったOKBだが、先月まで行われていた第2回総選挙では一気にスケールアップした。

古川さん「今回は色々な人に参加してもらうために、6回に分けて開催しました。9月16日には東京と大阪で同時開催をしたりもしましたよ(笑)。結果を雑誌に載せることにしていたとはいえ、過剰なまでに手間ヒマがかかっているんです。握手会にリアルに来ていただいたお客さんは、本当にありがたいです。ちなみに、WEB投票も含めた参加者は、のべ1197名でした」

※「第2回OKB48選抜総選挙」ベスト3はご覧の通り
1位:ジェットストリーム(三菱鉛筆)1402pt.
2位:ユニボール シグノシリーズ(三菱鉛筆)778pt.
3位:エナージェル シリーズ(ぺんてる)665pt.

――いきなり、一大イベントに成長しましたね!人気のボールペンの傾向はありますか?
古川さん「WEB投票では、単純な知名度や“自分が昔使っていた思い入れのあるペン”に票が集まり、握手会では“なめらかで書き味が良いペン”に票が集まる傾向があります。いま実際に売れているペンは、後者のもの。第1回目に続いてセンターに輝いた『ジェットストリーム』(三菱鉛筆)はまさしくそれで、ボールペン人気の中心にいる存在だと言えますね。
面白いことに、ジェットストリームの登場で、ボールペンの銘柄に注目して買う人が増えました。今までは、なんとなく選んで買っていたような人でも『ジェットストリームを買おう』と銘柄を決めて買ってますから」

――ジェットストリームは大人気ですね!発売されてすぐに人気が出たのですか?
古川さん「最初はヨーロッパで2003年に発売されて、日本でも発売されたのは2006年。そこからジワジワと知られていった、という感じでしょうか。さきほどの『ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル』では、2008年の年末に“すごいボールペンがある!”と紹介しました。その時点では既に文房具に詳しい人なら当然知ってるくらいの人気にはなっていましたね。ちなみに、ジェットストリームって、今でもインクを年に1~2回は改良しているそうで、発売当初のものと、一番新しいものとでは書き味が少し違ったりするんですよ」

――進化するボールペンというわけですね。性別によって人気のペンは違いますか?
古川さん「女性に人気なのは、パイロットの『ハイテックC』ですね。手帳に書くために使う人が多くて爆発的に売れたペンです。パステル系のカラーとか蛍光カラーがあったことと、極細で手帳に書くのに向いていたため、学生の頃から使っていた女性の皆さんの思い入れが強かったみたいです」
岩崎さん「初恋の味なんですよ(笑)」
古川さん「サクラクレパスの『ボールサイン』も女性の人気が高くて、会場からは黄色い声が飛んでました(笑)。見た目が可愛いから使っていたという人も多くて…。一方、男性は、集中して人気のあるペンというのはなくて、個人によって違うようです」

――では、数々のボールペンを見つめてきた古川さんと岩崎さんの、ジェットストリーム以外の推しペンを教えてください。

●プロデューサー 古川耕さんのおすすめ
「機能面でいうと、パイロットの『マルチボール』です。
紙の他に、金属やプラスティックなどのあらゆる素材に書けちゃう、頼れるオールラウンダーです。握手会だと紙にしか書かないので、凄味が伝わらないのでここでおすすめしておきたいです。知らないと、もったいない気がします。あとは13位に入ったプラチナ万年筆の『オ・レーヌ ボールペン』。元々、芯が折れにくいという『オ・レーヌ シャープペン』があったこともあって、この名前になったみたいですが、どうしても、シャープペンのついでに発売したと思われがちで、軽く見られてるんです。でも、自社で作っている、非常になめらかに書けるインクなので、とても良いペンです。業界内でもファンは多いですね」

●“劇場支配人”岩崎多さんのおすすめ
「なかなかスポットライトがあたりにくい、加圧式がおすすめです。加圧式だと、ペンが上向きでも横向でも書くことができるんです。そもそもボールペンは本来下向きで使用することが前提の筆記具で、重力でインクが出ているそうなんです。だから例えばカレンダーに予定を書くような横向き状態というのも、ボールペンにとってはやがてインクが出にくくなってしまう状態なんです。でも加圧式ボールペンならそういうことに煩わされずに書くことができます。もしもの時の一本として備えておくと大変便利ですよ。
加圧式だと三菱鉛筆の『パワータンクシリーズ』が一番人気です」

――勉強になりますね。早速買いに行きます!では、「OKB48選抜総選挙」の今後の展開を教えてください。
古川さん「銀座の東急ハンズで握手会を開催したことがありまして、その時は売り場にあったボールペンが結構売れたという相乗効果も生まれたそうです。なので、次回ができたらぜひ全国の店先で開催したいですね。あと、結果発表をイベントとしてやりたいです」

来年は、全国展開をするかもしれないOKB48。お近くで開催された時には、推しペンに会いに、握手をしに行ってみては?(やきそばかおる)

すごい文房具ホームページ
http://sugobun.com/index.html
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