――消しゴムはんこの人気が再び高まっていますが、どういったものを彫っている人が多いですか?
「ここ数年は、かわいい感じのモチーフや、アンティークっぽい図柄を彫っている人も多いですかね。彫る人の趣味にもよりますが、やっぱり、ナンシー関さんを知っているかどうかで、その人の消しゴムはんこに対する印象が違うと思います。ナンシーさんと言えば、著名人の似顔絵と、キレのあるコメント入りの唯一無二の白黒イラストをぱっと思い出す人が多いと思います。コラムも抜群にすごかったし、ナンシーさんのイメージが強い人にとって、消しゴムはんこ=似顔絵のイメージ、ナンシーさんを知らない世代にとっては、消しゴムはんこ=かわいい絵というイメージなのかもしれません。図案集も多く発売されていますし。消しゴムはんこは気軽に始められるということと、ゴムが手元に残る達成感、ハンコをペタッと押して、図柄が表れた時の成功体験が味わえるところが魅力だと思います」
――では、今から消しゴムはんこを始めようと思っている方々へのアドバイスをお願いします。
「まずは、自分の好きなものを彫ることをおすすめします。私の場合、なんといっても食べ物が好きで。うまく彫れなくてイライラしていたら精神衛生上よくないし、好きなものだったらなんとか気合いで彫れるものです。好きなものを彫っていたら、ありがたいことに、食べ物の色の濃淡を褒めていただくことが多くて。それも、食べ物が好きすぎるだからだと思います(笑)。
その他、教えていただいたポイントとしては
●小さい図案が彫りにくい場合は、図案を拡大コピーして使う。
●彫る部分が少なくてすむモチーフを選ぶという方法も。白地に黒だと彫る部分が多くなるので、同じデザインを黒地に白に色を反転するという方法もある。
――彫りにくいものって何ですか?
「文字を彫るのは慣れるまでが大変かも。あと、意外に難しいのは単純な○(マル)や直線。顔や物はそれが何かを見る側が認識するから、多少うまく彫れなくても、味が出ます。そのブレや震えた線こそが味わいですね」
ところで、とみこはんは、なぜ消しゴムはんこの道を歩もうと思ったのか。それには紆余曲折があったようだ。
「私の時代は超就職氷河期で。就職しないで友達と劇団を立ち上げたりしていて。当時はなぜかそれがうまくいくと思ってたんですね(苦笑)。と、同時に、消しゴムはんこで何かできないかと思って漠然と彫ってたんです。
それからしばらくの間は、かわいいものを彫っていたという。しかし、いつしか路線を変更していくことになる。
「色々と持ち込みをするにつれて、『かわいい』というのは人によって差がありすぎることに気づきまして。それまでかわいらしいキャラクターでもイラストのお仕事をさせていただいてたのですが、ある日ふと『美味しそう』という感情は一つしかないかも、と思い、単純に好きな食べ物を彫り始めました。そうしたら、食べ物のイラストのお仕事を頂くようになりまして。ホント、よく食べてて良かった。(笑)まあ、その分太ってますが…」
とみこはんは、作品を見て「美味しそう」と思われたら「かわいい」よりも勝ちだと思ったとのこと。気がつけば、消しゴムはんこを始めて以来、数百個の作品を彫っていて、押入れの中は消しゴムはんこだらけだそうだ。そんなとみこはんにこれからの夢を教えてもらった。
「料理の本を消しゴムはんこで彫りたいです。『ぐりとぐら』のカステラのように、絵本の中のものなのに美味しそうと思ってもらえたら。
今は、消しゴムはんこのワークショップが各地で開かれて大盛況だが、とみこはんは独学だそうだ。正月休みにゴロゴロするのもいいけど、消しゴムはんこに挑戦してみてはいかがだろうか?2013年はヘビ年だから、ヘビだったら簡単に彫れそうだ。(やきそばかおる)
※とみこはんは2013年元旦から6日(日)まで、東急ハンズ池袋店で開催される、消しゴムはんこのイベントに出展。
「とみこはん」ホームページ
http://www.tomikohan.com/ワークショップ情報なども掲載。
「とみこのはんこ」(河出書房新社)
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309273785/