プレッパーズとは、世界の終わりに備えて、水や食糧を貯め込んだり農園を作って自給自足を目指したり、地下にシェルターを作ったり武器を集めたり戦闘技術や応急手当などのサバイバル技術を磨いて自衛を志す人たちのことだ。サバイバリスト(生存主義者)とも呼ばれている。近年、文明が崩壊してゾンビが闊歩する世界を描くドラマ「ウォーキング・デッド」や、放射能にあふれた世紀末を舞台にした「フォールアウト」のヒットもあって、その数は全米で300万人に達している。世界の終わりに備えるといわれるとマヤ暦の終焉を信じてた人たちを思い出してしまうが、プレッパーズは世界が終わる理由にはあまり興味がない。金融崩壊、伝染病の大流行、ハリケーン、地震、津波(このあたりは日本の影響)、とにかく何かあるかもしれないから備えておこう、と「備え」を重視しているのが特徴だ。
なぜこの人たちがとばっちりを受けているかといえば、銃乱射事件の加害者アダム・ランザの母親ナンシーがプレッパーズの一員で、自活、自衛のために食糧や銃をためこんでいた、とナンシーの姉が証言したからだ。射撃練習場にアダムを連れていっていたという証言もある。ここだけ切り取ると、なんだかプレッパーズが危険な思想集団に見えてしまう!
実際、彼らは危険な人たちなのだろうか? アメリカでは、全米のプレッパーズを紹介する「プレッパーズ〜世界滅亡に備える人々(原題 : Doomsday Preppers)」というテレビシリーズが制作されて人気を集めている。
ただそんな人たちでも銃や弓矢や格闘術の習得には余念がない。射撃練習に打ち込んだり銃を構えてパトロールしている姿は、マジメそうなだけにちょっと怖い。英語のホームページにプレッパー度を診断するコーナーがあるが、水や食糧の備蓄、住んでる場所の他に、銃器をどれだけ持っているかも質問に入っている(たくさん持っていると得点も高い)。やっぱりアメリカでは銃器が生存に直結していると考えられていることが実感できる。
もちろんテレビ番組に出ている人がプレッパーズのすべてではない。お金があって派手な備蓄や設備を用意している特別な例だけを紹介している、と指摘するプレッパーもいる。大半のプレッパーズは、同じ思想を持っていない人とも仲良く暮らし、普通に働き、ほんの少しだけ水や食べ物を備蓄し、災害対策キットを用意しているだけだという。趣味やライフスタイルだという人や、生命保険や火災保険みたいなもので、万一のときの備えをしているだけだという人もいる。未来はどうなるか予測できない。だからこそ自分ができる範囲で何か準備をしておきたい。それはすごくまっとうなことに思える。
私も震災以降、水や物資を少しだけ多めに買うようになったし、風呂おけにも水をためておくようになった。世界の終わりというとちょっと身構えてしまうけど、あいまいな不安を感じていて何か対策を打って安心したいだけなんだと考えると、プレッパーズも自分もそれほど違うわけじゃない。だから自衛のためにと武器をそろえて射撃練習にいそしんでいる姿を見ると、あ、でもやっぱり違うんだ、と少しさびしくなる。お互い迷惑がかからない程度に準備はしておいて、何かあったときに余るようなら分けあえば、感謝もされるし尊敬もされる。それぐらいで何とかなりませんかと言いたくなってしまう。(tk_zombie)