――実際にモノを作るまでが大変だったと思いますが、試作品を見せた時のまわりの反応は?
「友人に見せたら『乳感(ちちかん)が足りない』って言われました。発想は面白いけど、肝心な胸の部分にもっとリアリティーが欲しいという意見が出たんです。そこで、『乳感を出すにはどうすればいいのか』、『下乳の輪郭や全体の陰影も重要だが、最重要なのは谷間のシルエットではないか』、『様々な外光・照明環境下でめくれて見える部分のシルエットを最適に見せるには』、『Tシャツとして着た時の胸の位置はどのくらいの高さがいいのか』などなど、来る日来る日も、研究を重ねました。まわりの皆さんから非常に有益なご意見を頂いたこともあって、理想の乳感を醸し出すことができましたね」
開発しようと思ったのが去年の夏頃で、何度もデザインを直しては微調整を繰り返す毎日だったという。福澤さんのノートには、いかにして胸を大きく綺麗に見せるかというメモがギッシリと書いてあった。研究と微調整を重ねて、秋に行われた「東京デザイナーズウィーク2012」で、ついに試作品を公にお披露目することに。その際は不安もあったそうで…。
「モノがモノだけに、女性からどんな目で見られるんだろうという不安がありました。
その後、最後の詰めの作業を行って、12月に発売へと踏み切ったという。およそ4か月に渡る研究の成果が、形となって世に送り込まれたわけである。
――売れ行きはいかがでした?
「3日もしないうちに完売しました。ヴィレッジヴァンガードの通販のみの販売だったのですが、あわてて追加生産しましたよ」
そもそもこのTシャツは「妄想マッピングProject」というアートプロジェクトのメインアイテムとして開発が始まったそうだ。このプロジェクトの一環として、実際に銀座の歩行者天国でTシャツを着た10人以上のメンバーを集めて、歩いてパフォーマンスをしたこともあるという。
「銀座にいた皆さんが、二度見してましたよ。『あれは何だろう』って(笑)」
ところで、「妄想マッピングTシャツ」を開発した福澤さんは、どんな人なのだろうか。人物像に迫ってみた。福澤さんは日大芸術学部を卒業後、ハウスメーカーのデザインのお仕事を勤めた後、独立して「ekoD Works(エコードワークス)」を立ち上げた。
――「ekoD Works」ってどういう意味ですか?
「元々、皆さんに笑いを提供して笑ってもらおうという思いがありまして、僕がやっていることは、お仕事的にはピエロなんです。ekoDを逆さまに読むと『道化』というところからきています」
ちなみに、「また阿呆なものを作りましたね、と言ってもらえるものを作り続けること」が目標だそうだ。とかく閉塞的だと言われている現代において、福澤さんは、日本を(胸元から)豊かにしていこうと、試行錯誤している。
最後に、初めてTシャツを目にした時から気になっていた事に関して、質問をしてみた。
――Tシャツの女性の胸は何カップですか?
「推定でDカップです。何カップということは、得には公表はしていませんが、女性に見せた時に『着るだけでDカップになれるねぇ~』と言っていたので、Dカップということにしてあります」
DカップどころかEカップに見えるが、Dだとしたら「デラックス」であるし、Eだとしたら「エクセレント」である。非常に有意義なお話で、福澤さんの今後の展開への期待に、思わず胸が膨らむのであった。(やきそばかおる)
ヴィレッジヴァンガードオンライン「妄想マッピング -赤いブラTシャツ-」
ekoD Works(エコードワークス)
http://ekodworks.com/