「『至急でね!』 頼んだおまえが なぜ帰る」
「入社時は 腰かけ今は 命がけ」
「十年目 部長が席まで 来てくれる」
『女子会川柳「調子どう?」あんたが聞くまで絶好調(ポプラ社 価格952円)』の中にある川柳だ。本のタイトルのように、OLが心の中で、ぐっと堪えて口に出さない一言を川柳にしたためた。「なんか読むの怖い」と思った男性諸君は是非読んで、女心を勉強してほしい。気軽に「調子どう?」などと聞けなくなるかもしれないが……。日ごろ、ストレスを抱える女性陣なら、同書を読んでうっ憤を笑いに変えてしまうもよし。次回の川柳に応募すべく、ネタ探しを始めるもよし。
1997年、サラリーマン川柳がブームの中、OL向け情報紙を発行するサンケイリビング新聞社・シティリビング編集部で「OL版でやってみたら面白いのではないか」と始まったのが「シティOL川柳大賞」だ。16年間で寄せられた65,000句を超える作品の中から、同本では傑作88作が選ばれ書籍化された。「そうそう、分かる~~」「うまい!」と唸ってしまう名作がずらりと並んで面白い。
同社のデータ(シティリビング読者調べ)によると、OLの平均年齢は35.4歳、未婚者は61.5%、既婚者は38.5%。OLの約半分が30代、40代が22.6%、20代が21.2%。ここ20年で読者の平均年齢が10歳アップしたという。
「話し合う 後輩ではなく おじちゃんと」(2013年優秀賞より)
とはいえ、同社の編集長・山内綾子さんによると、この16年の間に川柳の趣が大きく変化しているわけでもないらしい。「オフィスネタの川柳が多いのですが、上司や部下、後輩との関係を表現するのに、時代を代表するキーワードが入ってくることが多いですが、大きな流れは変わっていません」。記念すべき第一回大賞は「逆らわず ただうなずいて 従わず」。16年経っても働く女子の思いは変わらない。上司からの意味不明な要求にも日々耐えるOLならではの川柳は、つい拍手を送りたくなってしまう。
さて、2013年の大賞受賞句は「男より なでしこ優秀 オフィスでも」
受賞者のコメントは「サッカーでもそうですが、なでしこ(女性)の方が、やるときはやるって感じで、仕事でも男前です。今時の男子たちは、やる前からできない理由をつべこべ並べすぎ。いいからやれっつーの!とキレそうになるキモチを詠んでみました」と、なんとも男前でカッコイイ。
そして、2013年の優秀賞の中で、私の気持ちをそのまま代弁していて、つい笑ってしまった作品がこちら。
「出会いより 空席探す ラッシュアワー」
「合コンで 仲良くなるは 女子ばかり」
「働く女性はもちろんですが、上司や男性社員にも読んでいただき、OLの気持ちを少しでも分かっていただけるとうれしいです」(山内さん)。たかが川柳と侮ることなかれ。
「できちゃった 結婚でいいと 親が言う」
「お局の 電撃婚に 希望わく」
女性に言ってはいけないこと。聞いてはいけないことのヒントが散りばめれているのだ。
女心の分からない上司や男性陣は、リアルな乙女心を参考に女性の心を掴んでほしい。
(山下敦子)