月光条例は週刊少年サンデーで連載されている藤田和日郎の漫画です。
何十年かに一度月が青く輝き、その光「月打」を浴びた「おとぎばなし」の世界がおかしくなります。物語の主人公が狂ったまま現実の世界に飛び出し、町を破壊したり大騒ぎを引き起こすのです。しかも、登場人物が飛び出したままの物語は「消滅」してしまうため、早急に元に戻さなければなりません。登場人物を正気に戻せるのは「月光条例」の極印が刻まれた「執行者」だけ。偶然執行者になった「岩崎月光」はおかしくなったおとぎばなしを正すため、戦うことになるのでした……
さて、このお話の今週分がどう凄いのか。残念ながら、若干のネタばらしをしなければ説明することができません。なので、どうしても読みたく無い単行本派の人はここで記事を読むのをやめ、今すぐサンデーを買いに行きましょう。ネタばらしされてもいいよという人は、若干の改行の後記事の続きを読んでください。
いいですか?
物語はいよいよ大詰め。月の向こうの世界から、オオイミ王が全ての「おとぎばなし」の登場人物を「消滅」させるため攻めてきます。登場人物を隠し、迎え撃つ月光。
ゲーム、小説、漫画……ありとあらゆる物語を消滅させるのですね。そして、世界から「物語」が消え……テレビや本、雑誌が真っ白になっていきます。そう、それは「サンデー本誌」も例外ではありません。作中には絵が消えて文字だけとなった「週刊少年サンデー2013年15号」が描かれています。このお話が載っている掲載誌ですね。
サンデーが真っ白になったということはどういうことか。次のページの見開きは完全に真っ白となります。柱部分も「藤田和日郎先生にはげましのおたよりを出そう! 『 』の感想と似顔絵も待ってます。」となっており、物語が完全に消えている徹底ぶり。作中と現実が見事にリンクした演出と言えるでしょう。さらには雑誌末の作者コメントまで。是非サンデー本誌を買って、チェックしてください。
単に見開きがすごいのではなく、そこに至るまでの演出も見事としか言いようがありません。間違いなく今週のサンデーの「月光条例」は漫画史に残るお話となるのではないでしょうか。というわけで、普段は単行本派の人も今すぐ買いに行った方がいいのです。そして、本誌を……おや、雑誌が急に……
「あれ……なに読んでたんだっけ……?」
(杉村 啓)