一般社団法人ハラル・ジャパン協会の佐久間さんによると、ハラルフードを定義するには非常に細かな規則・規定があるため一概には言えないが、簡単に言えば「イスラム教の教義にのっとり食べることが許可された食事」のことだ。たとえば、アルコール飲料は禁止なので、アルコール成分が添加されている醤油や味噌などの調味料は使用できない。
イスラム教徒が豚肉を口にしないことはよく知られているが、豚肉に使用した調理器具はもちろん使用不可。ラードや液体スープなどに入っていることがある豚肉エキスなどもタブーだ。牛や羊、鶏などはイスラム教の作法に沿って食肉処理された「ハラル認証」の食材でなければならない。ハラルではない食品を扱う場合は調理場を分けるなどの配慮が必要など、決まりをあげればきりがない。
たとえ食材がハラルであっても、店内で酒類を出していると厳密にはハラルとはいえないそうだが、日本で酒類を出さない飲食店を探すのは難しい。ハラル料理には厳しい決まりがあるとはいえ、「イスラム教徒の人が観光客として来日した際に、できる限りおもてなしをしたい」という「ムスリムフレンドリー」を積極的に取り入れるホテルやレストランが増えてきているという。
「国内にハラル料理の看板をあげている店はほとんどありませんが、インドやトルコ料理などもともとのイスラム諸国の料理がハラルに近いため、現在は日本の観光局などの冊子で『ムスリムフレンドリー』という解釈でリストアップされています」(佐久間さん)
ムスリムフレンドリーリストの約40店舗中、ほとんどがトルコやマレーシア料理だというが、日本食を提供する店が1店舗ある。
また、ハラル認証の食品を販売するインターネットの通販サイトでは、輸入品だけでなく国産品も増えているという。「日本で公にハラル対応とうたったホテルは実際に10件ほどですが、ハラルについて詳しく学びたいというご依頼が増えてきています。日本の製品は評価が高いので、ハラル基準をクリアしてイスラムマーケットに商品を届ける動きは加速していくでしょう」(佐久間さん)
企業側もビジネスだけにとらわれ知識があやふやなままハラルフードを提供せず、専門家が教える基礎講座やアドバイスなどを受ける必要がある。また、ハラルの定義は個人の考え方があり人それぞれなので、提供側は使用食材や設備環境などの情報を正直に伝えなければいけない。今後、日本ではハラルメニューを提供する場所や施設、海外ではハラル対応の日本製品がますます増えていくだろう。
(山下敦子)