いかにも下北沢辺りにありそうなカフェで歌っているカーミィの頭の中は、将来への夢でいっぱいだった。自身がボーカルを務めるバンド「カーミィ&スモールサークルフレンズ」のヴィジュアルとサウンドを、より60年代に特化させる。ボーカルスタイルもウィスパーボイスに変えていく。ようするにピチカートファイブまんまなわけだが、そこに“テン年代の”と付ければなんとなくカッコよく感じられてしまう。一周まわってアリだよねと。

カーミィの夢は果てしなくふくらむ。オリジナル曲でCDデビューし、音楽雑誌に2万字インタビューが掲載され、有名ミュージシャンにプロデュースしてもらい、アパレルのCMソングに抜擢される。いずれは自身のファッションブランドを立ち上げ、雑誌には連載コラムをいくつも持つ。

「なんていうか…『カーミィ』という職業? みたいな?」

ひっぱたいてやりたくなるようなことを言うカーミィ(本名:藤島美津華)だが、現状では音楽だけで生活できるはずもなく、光回線のテレアポ職で食いつないでいる。そんな職場の後輩女子がエイベックスのオーディションで最終審査に残ったことを聞き、激しく焦るカーミィ。負けたくない。なんとしても有名になりたい。そのためなら手段は選ばない……。

カーミィは、同級生だったコージが自分を好いているのは知っているが、ラーメン屋のバイトでは何の得にもならないので相手にしない。バンドのギタリストとは肉体関係にある仲だが、中出しするくせに自分のためのオリジナル曲を作ってくれる気配もないので、そろそろ関係を断ち切ろうと思っている。