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超能力があってもリア充にはなれない。文化系ぼっち超能力大戦「クロニクル」

超能力があってもリア充にはなれない。文化系ぼっち超能力大戦「クロニクル」
『クロニクル』監督:ジョシュ・トランク、脚本・原案:マックス・ランディス/出演:デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダンほか/配給: 20世紀フォックス映画/2013年9月27日より2週間限定ロードショー
コンプレックスを抱えた文科系のはみだしものが好きだ。たとえば映画「マイティ・ソー」の体育会系(戦士)の中で一人だけ魔法使いのロキとか、ミュージカル「ウィキッド」の緑色の肌と周りに流されない強い意志のせいで仲間外れにされるエルファバとか。「クロニクル」もど真ん中。でもこちらはどす黒いコンプレックスを抱えたはみだしものが暗黒面に落ちていく映画だった。

映画は酒びたりの父や病気の母と治安の悪い郊外に住む男子高校生のアンドリューが、有り金はたいて買ったカメラで撮っている一日の記録から始まる。

この一日がひどい。朝からオヤジに怒鳴られて、学校でいじめっ子にカメラを取られて、帰り道に不良にからまれ、帰ってきたらオヤジに引っ叩かれて、無理して行ったパーティーでも殴られる。とにかく誰かにはたかれてはベソかいてばかり。常に目の下にクマがある、アンドリュー役のデイン・デハーンのやさぐれた雰囲気もあいまって、本当に気が滅入る。

これ一体なんのクロニクルなの、と思ってきたところで、「おもしろいものがあるから撮影してくれよ」と生徒会長候補のリア充と面倒見のよいイトコに誘われて、ついていった先ですべてが一変する。

その場にいた三人全員が、手を触れずにモノを動かす超能力、テレキネシスを手に入れるのだ。

超能力といっても筋肉と似ていて最初からすごいことはできない。せいぜいレゴやボールを浮かせるくらいで、地味だ。でもアンドリューは三人の中で一番力が強くてコントロールも上手い。生まれて初めてリア充やイトコからうらやましがられる才能が見つかって舞い上がってしまう。

男子高校生が三人いて、超能力が使えるとなれば、たとえ地味でも大騒ぎだ。たとえば「おいこの野球ボール投げるから止めてみろよ」「いたっ!上投げやめろバカ速いよ止められねえよ」とボールを投げ合ったり、おもちゃ屋でおもちゃを浮かばせて子供をからかったり、もちろん女子高生のスカートもめくったり。そのたびに三人で笑い転げる。アンドリューも笑顔だ。「こんなに楽しい日はこれまでの人生で一度もなかった」とつぶやいて三人のお泊まり会をテレキネシスで浮かせたカメラで撮影する。

しかしアンドリューは気づく。手も触れずに車を動かせるようになったって、何の問題も解決していない。父は酒を止めない。母の病気も治らない。ぼっちだった自分の過去は変えられない。ロキが魔法を究めて得たプライドや、エルファバの強い意志が、たまたま超能力を手に入れたアンドリューにはない。一緒に力を手に入れた仲間はいたけれど、その仲間は力を手に入れる前から友達も恋人もいた。自分とは違う。よりどころがないアンドリューは「運良く力を手に入れた」を「力があるから自分は選ばれた」に逆転させて、取り返しのつかない選択をしてしまう。

暴走して街を破壊するアンドリューを、超能力仲間が止めにくる。こういうことはよくない、落ち着けと。確かに暴力はよくない。でも観客は、淡々と記録されてきたアンドリューへの暴力を見ている。学校でも地元でも家庭でさえも守ってくれたものはなかった。暴力がよくないのなら、なぜアンドリューは守ってもらえなかったのか。そのアンドリューが仕返しをするというなら、誰にも止める権利はないんじゃないか。

暴れ回るアンドリューの姿も、怖いというより切ない。空に浮かんで周囲を見下ろす姿は、「X-MEN」のマグニートーみたいに背筋を伸びたカッコいいものじゃない。猫背で腕も足も広がってて、両脇を抱えて高い高いされてるみたいだ。その恰好で超能力仲間の説得に耳を貸さずに怒鳴り散らす姿は、母親に抱き上げられて駄々をこねている子供に見える。

もうとにかくアンドリュー役のデイン・デハーンのやさぐれたたたずまいの説得力がすばらしくて、すべてをひいき目でみたくなる映画だった。文化系はみだしものの青春ドラマが好きな人は必見。二週間の限定公開なので、お早めに! キャンペーンのおかげで、いつでも誰でも1000円で観られます。
予告編はこちら。

(tk_zombie)

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