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これだけきれいにやれるんだったら、CGでもいい
プリキュアシリーズのCG利用といえば、『フレッシュプリキュア!』から受け継がれているエンディングのダンス。今回の映画では、ダンス以外でもCGが活用されている。
───マシューが操る敵の乗っている鯨の船は、CGで作られていますね。
伊藤 あれは「ガラクタの中」って山口さんが書いてきちゃったから。ガラクタって複雑で、絵にするのが大変だし、集団作業に向かないんですね。そこでCGを使うことにした。もしCGを使わないことになったら、ガラクタっていうモチーフ自体を変えることになったかな。
───後半のアクションのCGもすごかったです! あれは初めてのことですか?
伊藤 『フレッシュプリキュア!』の劇場でちょっとやってます。そのときはもう少し尺が短かった。
───そういえば、『NewStage2』で全員がそろっているところもCGでしたよね。
伊藤 『オールスターズDX2』のクライマックスもそうかな? そういうカットってふつうはアクションしてるだけなんですけど、台詞があるカットを作っているので、目に付くのかなあという感じです。今回は、後半パートのアクションは大変っていうのはわかってた。
───CGを多用することに、思い切りはありましたか?
伊藤 もともと「プリキュア」のCGに関しては、エンディングなどを見て「ああ、これだけ綺麗にできるんだったら本編でもそのまま見せてもいいかな」と思っていました。たとえばクラリネットを演奏するCGのシーンも、通常だと手の動きは作画に置き換えるんですよ。でも、モデルを見せてもらったら「これは置き換えなくていいな」と。CGにした分だけ、作画のリソースを別にまわせました。
五分のタイムリミット!?
プリキュア映画に欠かせないミラクルライトは、今回もばっちり登場する。そのシーンでは、キュアエース(&アイちゃん)も印象的だ。
───「プリキュア映画」の代名詞ともいえばミラクルライトです。
伊藤 マシューをやってた谷原さんも、ミラクルライトに対する思い入れが強いっておっしゃってましたね。作曲の高木洋さんが、すごく感動的な曲をあげてくださったのもあって、良い感じのシーンになったのかなと思います。
───すごく思い切りがよかったですよね。馴染ませようって努力をあんまりされてないような…(笑)
伊藤 はっはっは(笑)
───思い切りがいいといえば、キュアエースにはびっくりしました。
伊藤 あれは、ある意味しょうがないんですよ。シナリオの段階で、まだTVシリーズでのキュアエースの立ち位置がそんなに決まってなかったので。
───でも、五分で戻る「お約束」もしっかり入ってました。
伊藤 シナリオにはたぶん、「子供に戻る」のもなかったんじゃないかな。五分のタイムリミットも、テレビで初めて見て「おおっ、そうなんだ!?」ってびっくり。もちろんTVシリーズのシナリオもいただいてたんですが、ぜんぜん気づかなくって。テレビで追っかけてたら、「あっ、五分……タイムリミット……これ、やばくね!?」(笑)。それで、ここで(元の姿に)戻せばちゃんと次の話に繋げらるんじゃないかというポイントを探って調整させてもらいました。
もう一回驚きが
───さて、超ネタバレに踏み込んでしまうのですが……。クラリネット、すごく存在感がありました。
伊藤 そうですね。『クラリネットをこわしちゃった』って童謡があるじゃないですか。ドレミが出ないクラリネットが、そのまま捨てられてしまった。そんな含みがあるんじゃないかなと感じました。
───バックボーンのある敵ですね。マシューもそうですけど、単純な悪ではなくて、複雑で孤独なキャラクター。
伊藤 プリキュアシリーズの秋の映画は、劇場オリジナルの敵が出てくる。シリーズ側の敵と比べて「○○のほうが強い」って話にしちゃうと、いろいろと不都合が出てしまうんですね。そうじゃなくて、バックボーンがある敵だったら、強い弱いではないところでカタルシスになる。マシューは「悪い敵」にする気はありませんでした。ちょっとした誤解が大きくなってしまった、と。
───凝ってるなあって思ったのは、マシューの正体が明らかになったあと、もう一回驚きが待ってるんですよね。ちょっと油断してました……。
伊藤 小さい子はもしかしたらわかりづらいかもしれないけど、お父さんやお母さんに「どういうこと?」って聞いてもらえればなあと思います。あと、実は、カット割りでそういう風に見せているんですが……。
───わー!? うわっ、ぜんっぜん気づきませんでした。そもそも、マシューの正体にも気づけなかった…。
(青柳美帆子)