出版業界に身を置く者なら、誰しもが好きな言葉が「重版」だ。これは間違いない。重版がかかれば、重版印税が手に入る著者だけでなく、出版社も、書店も潤う。かくいう筆者も、米光一成さんとともに「どうすれば重版するのか?」という重版を研究したトークイベントを開くほどの重版好きである。このイベントの書き起こしは電子書籍化されているので、ご興味ある方はこちら(itunes「電書カプセル」)からぜひ。

それはともかく。マンガ雑誌「バイブス」の編集部を舞台に、そのものズバリ「重版」をテーマにしているのが、松田奈緒子のコミック『重版出来!』だ。タイトルは出版業界の用語で「じゅうはんしゅったい」と読む。1巻が発売された当時、大きな話題を巻き起こしたので、この読み方を覚えてしまった人も多いだろう。

1巻のキモになっていたのは、地味ながら良質なコミック『タンポポ鉄道』をベストセラーにしていく物語だ。出版社の営業部と編集部による初刷部数の攻防戦から、営業部による「仕掛けていく」という決断、書店への地道な営業が重版という形で花開くまで、リアルな重版ストーリーが展開されていく。

「売れた」んじゃない。俺たちが――売ったんだよ!!!

と、出版社の営業部員たちと書店員たちがドン! と見開きで見栄を切っているページはかなりのインパクトだ。実際、書店員にこのマンガのファンは多く、話題に火がついたのも出版業界人と書店員らのツイッターからだった。関係者に多くの取材を積み重ねたとあって、出版業界・書店業界に足を踏み入れたことのある人なら、「ああ、重版するときはこういう展開になるよね」と共感できる内容だったはずだ。