そんなスモーク流行りの昨今でも、さすがにこれを見つけたときは驚いた。かずさ燻製工房の「燻製オリーブオイル」。なんとこれ、オリーブオイルを香り豊かな桜チップで燻製したものなのだとか。
見た目は一般的なオリーブオイルと同じ透明感のある美しいグリーン。だが口に含むと、オリーブオイルのすっきりした味わいの中に上品な燻製香が広がって、なんとも香ばしい口当たり。初体験のこの感覚、おもしろすぎる!
かずさ燻製工房の代表・市川正秀さんに話を聞いた。なぜオリーブオイルを燻製にしようと?
「あるとき、燻製醤油というものを食べたのがきっかけです。実はそれは、鰹節を燻製して醤油に漬け込んだもので、その製法であれば誰にでも作れるものだったのですが、幸か不幸か、僕は液体を燻製したものだと勘違いしてしまったんです」
当時、すでに実家の飲食店を継いで料理の世界にいた市川さんだが、学生時代は機械工学を学んでおり、理系出身者の探究心に火が付いた。さっそく装置の考案をスタートし、試行錯誤の末に「液体であれば何でも燻製できる」装置が完成。きっかけとなった燻製醤油に加え、燻製オリーブオイルも誕生した。ちなみに考案した装置は、「液体を燻製する方法及びその装置」として特許も取得している。
燻製オリーブオイルの魅力は、なんといっても火も煙も使わずにひとしずくで燻製風味にできること。
しかも、使い方はアイデア次第で無限大。ピザやグラタンにかけてスモークフレーバーを楽しむもよし、蕎麦や素麺の薬味代わりに使うもよし。カルパチョやマリネなどにかければ、生なのにスモーク、という不思議な感覚も楽しめる。
「使い慣れているドレッシングに混ぜるだけで燻製ドレッシングになります。マヨネーズにもよく合いますよ」
キャビアやイクラなど魚卵にかけても美味しいそうだ。
商品は2年ほど前からオンラインショップ等で販売しており、価格は100mlで1050円。オリーブオイルの他に、開発のきっかけとなった燻製醤油も販売している。
「もともと燻製は新石器時代から存在したともいわれる保存食。しかし、流通技術や冷蔵・冷凍技術が進歩した現在では、燻製することでの保存性は必要なくなってきています。完成までに非常に手間も時間もかかるのに、今もなお多くの人々に燻製料理が好まれているのは、太古の時代から人類の遺伝子に“食の香り”として刻み込まれているからでしょう。
今後作ってみたい燻製調味料は?
「世の中の食用の液体全部ですね。現在、実験しているのは、バルサミコ、ナンプラー、グレープシードオイル、ウスターソース……などなど。組み合わせによって無限に広がる燻製ドレッシングも今後の課題です」
うーん、どれも食べてみたい!
独特の香りに虜になりそうな燻製調味料。これからますます充実していきそうですよ。
(古屋江美子)