「君は仕事ができないね」
教員時代、そう言われ続けてきて、すいません出来ませんー、ってそのまま受け取っていた時期がぼくにもありました。
でも今、ちょっと距離を置いて考えてみる。

別の職場の人には「いつもがんばっているね」とも言われた。どっちなんだろう?

『私の彼は仕事ができない』は、仕事とはなんなのかを書店を舞台に描いた物語。
設定がまいっちゃうんだよ。
普段彼氏と過ごすときは、甘えたい、仕事をoffモードにしたい。
なのに無職だった彼氏が、ある日突然自分の職場の契約社員になった。切り替えできない!
イチャイチャしている時は安心できるいい相手だったのに、いざ職場に立つと意外とどんくさい。
仕事中もふたりきりの時と同じように名前で呼ぶし、本を棚に運ぶのも遅いし、POPづくりも字が下手くそだし、お客さんと長話するし。
彼女目から見て、ずばり「仕事ができない」

大変胃の痛いマンガです。
しかし一般的に「仕事ができない」場合でも、視点を変えると、そんなことはないこともあります。
たとえば、元クレーマーの客との立ち話。これは店員マナーとしてはNG行為の一つです。

このマンガの中でも、ヒロインは、彼氏(部下)にきつく注意しています。

ところが作中では、角度を変えてみています。
クレーマーがいて、その人と仲良くなり、お得意さんになってもらっている。
おしゃべりはしているけれど、これは長期的にプラスな行為です。
果たして彼は「仕事ができない」のか「仕事ができている」のか。

他にも様々な店員を取り上げて、仕事の「できる」「できない」を問います。
ある店員Aは人に謝ることが出来ない。作業はバリバリこなすし、マナー違反の客に対して、きつい言葉でたしなめる。
別の店員Bは人に頭を下げてヘラヘラしている。あんまりにも謝ってばかりで、無作法な客に対してまで腰が低い。
買いきり商品のシュリンクを、勝手にお客さんがやぶってダメにしてしまった。店員Aは店のルール通り、買い取ってもらうことを厳しく客に言った。
店員Bはトラブルを避けるために「返本できる」と嘘をついて謝罪し、お客さんとのトラブルを避けた。
さて、「仕事ができた」のは店員A、店員B、どっち?

こういう事例がたくさん並べられると、「仕事の力量」の意味を考えなおしたくなります。
効率がよければ「仕事が出来る」んだろうか?

仕事のできる・できないとは別の、仕事の力量のヒントにも触れられています。
あらゆることが一人では成立しないからこそ、仕事は複数人で分担するのだもの。
職場で「仕事ができないね」と言われても、「そういう見方もある!」と勇気を持てるようになる本です。

まあ、それと恋愛とは別ですけどね。
職場でもオフでも彼氏と一緒で、仕事へのやりがいが揺らぐヒロイン。果たしてどうなるのか。
男女立場逆に考えてみても面白い問いだと思います。

特別付録として「仕事ができない彼のためのTO DOリスト」が巻末についているあたり、割りとガチです。
iPhoneのリマインダーと一緒に使ってみてください。


山田可南『私の彼は仕事ができない』

(たまごまご)
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