昨日(1月16日)の夜に決定した第150回芥川賞・直木賞。芥川賞は「穴」小山田浩子、直木賞は「恋歌」朝井まかて、「昭和の犬」姫野カオルコ。

受賞作を含む全候補作については杉江松恋のこちらのレビューを
第150回芥川賞全候補作レビュー 
第150回直木賞全候補作レビュー

受賞決定から記者会見までを「ライブビューイング」で観てきた。
下北沢の書店B&Bで行なわれたこれ。

杉江松恋×豊崎由美×大森望×ニコニコ生放送
[予想が当たればドリンク無料!]
「ニコ生VS 本屋B&B!?~150回芥川賞・直木賞受賞記者会見パブリックビューイング~」

「杉江さん、これ書きこんでよー」
豊崎の差し出すiPadの文字を、司会であり、ニコニココメント担当の杉江松恋が打ち込むと、ニコ生画面下側の専用コメント欄にすぐに表示される

「井上さん、それどこで読んだのか具体的に作品名を」

芥川賞候補作のひとつ「LIFE」(松波太郎)に対して、井上トシユキが「どこかで読んだような話だった」とくさしたのに対してのツッコミだ。
井上の返事を待たず、視聴者のコメントが流れてくる。

「豊崎、いじめるなよwww」
「豊崎w」
「もう豊崎でてこいやwww」

「いぢめてないよー」と杉江が豊崎のコメントを返す。

選考会の決定を待ちながら、対談企画「文学賞メッタ斬り!」シリーズなどで知られる大森・豊崎コンビが、芥川賞・直木賞について、ビール片手に言いたい放題というイベント。
記者会見会場の帝国ホテルから配信中の「ニコニコ生放送 芥川賞・直木賞発表&受賞者記者会見」を見つつツッコミつつ、だ。
「ニコ生」チームは、井上トシユキ(フリーライター、ジャーナリスト・司会)・栗原裕一郎(評論家・芥川賞担当)・ペリー荻野(時代小説好きライター・直木賞担当)。

大森が自前のパソコンからコメントを打ち込んでいる。

「山田詠美さんと結婚したのは可能涼介」

栗原に関する視聴者コメントの間違いをただしたのだ。
同時に(坪内)と署名されたコメントがいくつか流れてくる。「ええ? 本人(坪内祐三)? 違うよね」

豊崎イチオシの「穴」に関して、栗原の評価の歯切れが悪く、むしろ過去作の「ディスカス忌」は傑作と繰り返すので
「栗原さんはなぜそんなにディスカス忌押しなんですか?(トヨザキ)」

しかし、生配信中の栗原は資料をあたるのにいそがしく、なかなかコメントに気づかない。

なんていうか、ムダに未来である。そしてメタだ。「文学賞メタ斬り」である。

大森・豊崎の「文学賞メッタ斬り!」が最初に刊行されたのは、2004年。当時、「文学賞を楽しむ」感覚はほとんどなかった。賞というのはなんであれ「上からおしいただくもの」であった。

「芥川賞・直木賞をはじめ、ほとんどの文学賞は、出版社主催の興行である。権威としてまつりあげるのではなく、実態を知って楽しんでもっと盛り上げたほうがいい」というのが「メッタ斬り!」の主張。それは綿矢りさ、金原ひとみという史上最年少ダブル受賞を出した第130回芥川賞旋風に乗って多くの支持を集めることになる。だが、それでも受賞記者会見がネットで生配信され、それにだれでも自由にコメントで参加できるようになるなんて、想像できなかった。だいたいニコ生どころかニコニコ動画も存在してなかった。

7時12分。
ニコ生の画面が記者会見会場に切り替えられ、直木賞二作の受賞結果が発表される。最近いつも芥川賞のほうがはやいのに、意外な展開だ。

朝井まかて「恋歌」
姫野カオルコ「昭和の犬」

「ええええー!」
「昭和の犬」はともかく、初ノミネートの「恋歌」が! たまらず立ち上がる豊崎、
「杉江くん、えーっ! って書いて書いて。えーっ(トヨザキ)って」

なんだその指令。
だが、ニコ生とのコラボ的な要素はこれでほぼ終了となる。意外な受賞作が出た以上、よその番組をおとなしく鑑賞しているようなメッタ斬り!チームではないのである。

B&Bは「受賞作メッタ斬り!」会場にかわった。『恋歌』にあっさり授賞できるんなら、姫野カオルコには『ツ、イ、ラ、ク』あたりであげておけばいいじゃないか! 
背後で流れるニコ生のコメントにときおり「B&Bはどうしたの?」「フェイドアウト?」などと流れてくるが、こっちはこっちでたいへんなので、しょうがないのである。

メッタ斬り!も杉江も予想できなかった朝井まかて受賞。それを的中した人間が会場にひとりだけいた。
川口則弘。歴代直木賞のデータを集め、解析し続ける神サイト「直木賞のすべて」を個人で運営、昨年の『芥川賞物語』につづき『直木賞物語』を上梓した男、ミスター直木賞。

なぜ予想できたの?

「直木賞は地味な人を好むんです。だから、候補作中でいちばん地味なものを予想しました」
「たぶん、みなさんほど真剣に候補作品に取り組んでる選考委員はいないと思います。読んでないってことはではなくて、候補作ひとつひとつに順番や評価をつけたりはしていないと思う。あ、これがいいなってものを選んでいる。だから、直木賞は読めない、そこが面白い」

壇上に川口も加わったところで、ニコ生がまた記者会見会場に切り替わった。芥川賞発表は7時40分。

小山田浩子「穴」

「やったー!」
カッツポーズの豊崎。会場からも拍手が起こる。杉江もエキレビ!のレビューで予想を的中させてうれしそう。そして、大森はそそくさと荷物をまとめてい……る?

「やっぱり記者会見会場行ってきますので」

さすが、噂の現場に必ずその姿ありと恐れられる大森望である。受賞者決定から記者会見までには1時間弱ほどの準備時間がある。「ならば現場へ」と迷いなく去っていく赤いダウンジャケット。いってらっしゃい、成果が楽しみです(たぶん、来週月曜日放送予定の「ラジカントロプス2.0文学賞メッタ斬り!スペシャル 結果編で聴けるに違いない)

記者会見がはじまると、登壇者も観客席に座ってみんなでワイワイニコ生を鑑賞。姫野カオルコさんの受け答え、見事だった。(タイムシフト視聴)。記者の質問にダメだししたり、ここにはとても書けないような発言もたくさん飛び出しつつ、10時ごろに終了。
芥川賞・直木賞は、生でみんなで楽しむに限ります。あとは、選考会の生中継。やるしかないでしょう。
(アライユキコ)