みんなのアイドル生ハム様を求めて……

今流行のスペインバルや、バーのカウンターにうやうやしく置かれ、輝いて見える生ハムの脚。スーパーで買う牛モモの薄い生ハムとはまた違う赤い身のスペイン生ハムは、一枚口にふくむだけでお酒がみるみる消えていく。
衝撃的に凝縮された旨味の魅力は飲んべえの誰もが認めるところでしょう。

しかし、旨さも衝撃的なら価格もそれなりに張るのが辛いところ。バーなら小皿に6〜8枚乗っているだけで1000円前後と気軽に頼むというわけにもいきません。ワインと生ハム、カンペキすぎる取り合わせだけど、値段が……。と一度生ハム欲にとりつかれた患者たちは、高嶺の花の生ハム様になんとか近づこうと、「おい、品川のエキナカにあるバル マルシェ コダマ エキュート品川店の600円朝ビュッフェなら、生ハムとかソーセージ食べ放題らしいよ……」などと生ハム情報の交換に余念がない。

飲んべえ界の貴婦人である生ハム様は、その野性味溢れる豚の足まんまのフォルムに、かぐわしい香りと旨さから外で食べる高級品というイメージが固定している。
みんなのアイドルが自分の家に遊びに来るなんて図がなかなか思いつかないように、自宅に生ハム様の原木がいらっしゃる想像なんてなかなかできないですよね。

一万円前半で二ヶ月生ハム食べ放題!

しかし! しかしと言いたい。2〜3年前から円高差益か直接輸入の恩恵か、あのあこがれの生ハム原木がお手頃価格の一万円前半、楽天のハイ食材室では11800円amazonからでもナイフとホルダーセットで13490円ナイフとホルダーナシなら10980円で、自宅に迎えられるようになったのです! しかも、切落しではなく脚一本そのまま、原木の姿で! バーなどで使われるのは後ろ脚で一本8kgですが、こちらは前足バージョンで4kg。それでも骨や外皮を除いた可食部は3kgはあり、100gあたり400円以下というスーパーの牛肉とそんなに変わらない価格で生ハムが届いてしまうのです。少なくともスーパーの生ハムより安い!

イマジン……生ハム4kg。取り乱さずに、家に帰ったら生ハムが4kg待っている姿を想像してほしい。
食べたい分だけナイフで切り出せばいきなりお皿にお店で食べれば数千円分の生ハムが出てくる姿を。店で出る生ハムは、60〜80gで800円前後。可食部3kgだけで計算しても40皿は余裕で切り分けられるのです。市価だと3万2千円分の生ハムがいつでもそこに。2日おきに食べながら晩酌しても二ヶ月間生ハム三昧の日々が送れてしまう計算だ。外飲みの総額を考えると、これはもう破格というほかに語るべき言葉が見つからない!

一昨年から毎年、この生ハム無礼講とでも言うべき自宅生ハム計画を発動し、自宅に生ハム原木を購入してから、俺の生活は一変。
晩酌のアテはもちろん、朝からパンを焼きながらサンドイッチにするべく生ハムを切り分けパクリ。夕食にパスタを作って食べるとき、肉の代わりに2-30g切り分け加熱すれば、市販のソースなのに異様に美味しい一皿に早変わり。最後の骨もガツガツと折り、生ハム豚骨でスープの出汁を取りと、一冬のあいだカンペキといえる手軽で美味しすぎる生活をゲットし続けてきた。最終的には、生ハムの端っこの硬いところを煮てポトフを作り、そこにご飯をぶち込んで生ハム雑炊という無国籍料理を開発するまでに至りました。完全にあの頃は生ハムに麻痺してた。生ハムを加熱して「焼き生ハム」にした時の異様な旨さをぜひ堪能してもらいたい。
「ハム」じゃなくてあくまで「焼き生ハム」としか言いようのない凶悪な旨さがあなたを襲う!

冬場なら、数ヶ月はハムの切り口をラップで塞ぎ、時々オリーブオイルで全体を拭くだけで常温での保存も可能で手間いらず。友人数名が遊びに来た時でも、スーパーのお惣菜のようなポテトサラダや葉物サラダにフランスパンを数本用意して生ハムをドンとテーブルの真中に置くだけの十分少々で、超豪華な家飲みの準備は万端。「面白いことを言ったら、生ハムを切ってやる」とドヤ顔で「生ハムオーナー」の威厳をまき散らしながら生ハム様の恩恵を下々のモノに下賜するのも良し。
いやほんと、豚の足一本を自分の裁量で切りとってそのまま食べるという行為は、心の奥底に眠っていた狩猟本能や、「俺、強い、オマエ、食う」感も大満足。友人にナイフを渡して恐る恐る生ハムをカットする姿を見るだけで十分なアトラクションになります。

あと、ここだけの話、モテます(生ハムが)。
Twitterに「生ハム一本買ったった!」と書き込んだだけで空前のモテ期が到来。ダイレクトメールで生ハム女子から「で、いつ行けばいいですか? 要件のみで失礼します」と何通も家飲み打診が来た時には衝撃が走りました。
ま、その女子どもは、俺に会いに来たんじゃなくて、俺から生ハムを取り上げる悪魔の使者だったのですが。それでも、女子が家に来るためなら悪魔に魂を売り渡してもいい! と考える野郎どもの気持ちはわかる。「生ハムおじさん」として女子に一目置かれたい人はチャレンジする価値は十分だ。

自宅に生ハムがいつでも食べられる生活は、なんというか自分の普段の生活すら一変させるポテンシャルを秘めた神の采配。
到着後一日外気に慣らしてオリーブオイルで拭き、ホルダーにセット。ナイフで切り分ければ、「生ハム」という圧倒的魅力はあなたの手中に入ったも同然だ。暖かくなるまで外に出しっぱなしでOKだから、2月の今なら一人暮らしでも一本消費は余裕で可能なので、コンビニで毎晩酒のつまみを物色するけれど結構お金も使っている上に新味がなくて……と、侘しい家のみライフを送っている同志にこそ勧めたい逸品だ。なにせ、飲み会三回分の一万円前半で、生ハム原木が二ヶ月間ずっと楽しめるのだから! 飲み代に直せば一万円の10倍近い価値があると個人的に確信している。

生ハムへの情熱を書きなぐったので、もう一度言いますから確認して下さい。重量4kgにも及ぶ生ハムの原木が楽天で11800円amazonからでもナイフとホルダーセットで13490円ナイフとホルダーナシなら10980円で、生ハムの原木が買えます。コレは生ハム革命です。あ、最初の一回はホルダーとナイフのセットを買うのがオススメですよ。
(久保内信行)