今年の春はちょっとだけ遅かった。しかしそろそろ気温も上がりはじめ、ゴールデンウイークもすぐ間近。

冷たい飲み物がおいしくなる季節に、日本酒はいかがだろうか。

暑い時に売り上げがいいのは、ビールやハイボール。日本酒はむしろ冬のイメージが強い。しかしそのイメージを払拭し、「夏においしく日本酒を飲んでもらいたい」と、京都の酒処、伏見で提唱されている飲み方がある。それが酒スプリッツァーである。

これは単純にいってしまうと、日本酒のソーダ割り。
提唱されたのは2012年から。
当時、酒スプリッツァーキャンペーンを実施された事務局にうかがうと、
「京都市では、2011年から、日本酒を使った清涼感のある夏向きカクテルの提唱をはじめました」
という。

京都市内にある100店舗以上の飲食店に協力を仰ぎ、様々なカクテルが考案された。そこで行き着いた答えは「一番シンプルな飲み方が良い」ということ。そして、日本酒のソーダ割り、すなわち「酒スプリッツァー・キャンペーン」を開始した。
すると、若い女性や海外の観光客からの支持を得た。
好評のまま、翌年もそのキャンペーンを継続。今年はキャンペーンを実施しないが、その理由は、「いまや伏見では当たり前の飲み方になったから」だそう。

そもそも、スプリッツァーとは、白ワインのソーダ割りのこと。お米を醸造してつくる、日本酒もいってみればお米のワインだ。そこでこれをソーダで割ればすなわち“酒スプリッツァー”だ。と、名付けられた。

あえて日本酒スプリッツァーとしなかったのは、日本酒を“SAKE”と呼ぶ海外の人にも分かりやすくするため。全世界から観光客が訪れる、京都ならではの配慮である。

作り方はいたって簡単。日本酒を好みの濃さに炭酸で割るだけなので、自宅でも手軽に作れそう。
お酒はお好みのもので。伏見の日本酒に多い甘口はもちろん、香りを強く出したいなら大吟醸。
いっそカップ酒でもかえって味がしっかりと出てスプリッツァー向けだという。
日本酒の香りがきつい時は、レモンやライムをしぼって入れたり、シロップを加えて甘くするとまろやかになる。
事務局さんのおすすめは、古酒。3〜4年熟成いさせたものを使うと、濃い味わいで炭酸によく合うのだそうだ。

伏見に限らず、この飲み方で日本酒の味わいはもっと広がる。
日本酒といえば伝統があるだけに、小難しい、ややこしい、古くさいイメージを持つ人も多い。
しかし、昔から飲まれているだけあって、実は飲み方の制限なんてない、自由なお酒なのである。
玄人だけが飲むようなものではない。運営さんいわく、
「こんな自由な飲み方を通じて自由で闊達な日本酒文化になれば。そして京都の新しい夏の風物詩になればと思います」

暖かくなりはじめた日本列島。こんなさっぱりとした飲み方で、初夏を迎えてみては。
(のなかなおみ)