大泉洋らTEAM NACSが所属する芸能プロダクション「クリエイティブオフィスキュー」の社長である鈴井亜由美がプロデュースした映画「ぶどうのなみだ」。9月30日に東京・スペースFS汐留で公開直前イベントが開催され、主演の大泉洋、ヒロイン役の安藤裕子、三島有紀子監督が登壇した。本作は映画「しあわせのパン」(2011)に続く、北海道企画の第二弾だ。
「三島監督はとにかく私を寡黙な男にしてしまうわけです」と語る大泉洋の役どころは、北海道・空知(そらち)のワインナリーで理想のワインづくりに励む不器用な男性。「しあわせのパン」では静かに妻を見守ったが、今回はひたすら葡萄と向き合う。
安藤裕子曰く「ふだん垣間見ることのない! 知ることのない!! 大泉洋のイケメン姿に出会えます」。撮影中はちょっとでも顔がむくんでいると、監督がスーッと寄ってきて「昨日、飲みましたね」と言われたという大泉。「人が見てわかるほどではないと思うんですけどね…」というと、すかさず三島監督が「むくみすぎですよ!」と指摘。安藤が「ほっぺがちょっとふくらんじゃうんですよね〜」と追い討ちをかける。
「ワインの映画ですし、ワインを飲みたくなるんですよ。監督が『むくむな』『食うな』『飲むな』みたいなことを言うから、現場で走っていましたよ。むくみをとるためにね、ワインを飲んでメシを食って走るという……ストイックさがスクリーンに出てます、出てます、出てます!」
さらに、大泉は「監督のすさまじいこだわり」として、料理シーンを挙げた。
「食べものを撮るシーンになると時間が押すんですよ! 相手がもの言わぬものなだけに、余計時間をかけてしまう。役者だったら『これぐらいでいいじゃん』と言いだしかねないですけど、にんじんは何も言いませんからねぇ」
例えば、シチューを撮るシーン。三島監督はモニターをにらみながら、器の位置を延々調整し、「玉ねぎ、もう1cm右にお願いします!」「しいたけもうちょっと寄せてください」と次々に指示を飛ばす。「はい! スープついで!!」と声がかかると、係の人がグラグラに沸き立つスープを注ぐ。でも、何か気に入らないことがあり、細かな調整を加えていると、「湯気がなーい!!!」となってしまう。ぜひとも、もうもうと立ちのぼる湯気も撮りたい。でも、具材の位置は動かしたくない。そんなときの秘策とは?
「ものすごく緊迫した雰囲気のなか、助監督がストローで吸うんですよ! 量が減ったところで、熱々のシチューを注いで撮り直す。しかも、その後、俺に食えって言うんですよ!! しかも、その後、そのシチューを俺に食えって言うんですよ!! でも、これだけ苦労してやっとおいしそうに撮れる。ワインをグラスに注ぎ、光にすかして見るシーンなんて2日またぎでしたからね」
しみじみと撮影当時を振り返る大泉。そこへサプライズゲストが登場する。劇中に登場する大型犬のバベット(オールド・イングリッシュ・シープドッグ)だ。大泉も顔負けのふわっふわのモコモコ。筋金入りの“動物嫌い”で知られる大泉だが、バベットが姿を見せても余裕の表情。もしかして、動物嫌いは克服済み?
「彼はなぜか大丈夫なんです」という大泉。その理由のひとつが「中に人が入っていそうだから」だという。「たぶん、45歳ぐらいの小柄なおっさんじゃないか」と言われると、そんな気もしてくる。
バベットは「(目線を)こちらにお願いします!」という取材陣からの声に、しっかりカメラ目線で対応。やっぱり、中味はおっさんなのか。会場のあちこちから「かわいい…」という歓声があがる人気ぶりに「犬が主役の映画だと間違われてないですかね。大丈夫?」と、大泉。大型犬バベットVS大泉洋、勝つのはどっちだ。
映画「ぶどうのなみだ」は10月4日から札幌シネマフロンティアほか、北海道先行上映。11日から渋谷シネクイント、新宿ピカデリーほか全国ロードショー。
(島影真奈美)