セリフと擬音は、漫画の重要なエッセンス。言葉がなければ、コミュニケーションは出来ない。

しかしこれには欠点がある
言葉がわからなければ、頑張っても相手に伝わらない。

マンガの力はその程度のものだろうか?
いや違う。もっと強力な、作者の思いを伝えるものがあるはずだ。

「コミックゼノン11月号」に掲載されている、「サイレントマンガオーディション」は、セリフも擬音も一切ない、絵と演出力だけで勝負するマンガコンテスト。
まずは、公式サイトを見てほしい。

SILENT MANGA AUDITION
日本のみなさまへ:サイレントマンガオーディションとは | SILENT MANGA AUDITION

世界地図の上に、世界中から集まったサイレントマンガが掲載されている。
クリックすると本文全部読むことができる。ものすごい数だ。

世界各国で描かれた、日本のマンガ的なコマ割りの漫画の数々。
密集度だけ見ると、ドイツ、タイ、インドネシアが多い様子。
プロレベルの画力の作品も見受けられる。

ゼノン11月号には、優秀作品5本が掲載されている。

(上の世界地図からも、探せば読むことができるよ)

グランプリを受賞したのは、ブラジルの22歳、Ichirouが描いた「Father's Gift」。
父と暮らしていた少女。彼女の元にやってきたのは、一体の家庭用ロボット。幸せな日々。
だが父親はいなくなってしまう。残された少女とロボットの間に、会話はない。

準グランプリの、アメリカの19歳Yoonmiが描いた作品「FORWARD」は、草原の少女の物語。
少女の飛ばされた帽子を、体中傷だらけでうさぎのお面をかぶった女性が拾ってくれる。
一体彼女は誰なのか。お面をしているため、話すことはない。

スペインの24歳、moreno/salmosが描く「RUN!」も面白い。
描かれているのはただ走ることだけ。

走りながら、今まで練習してきたこと、応援してくれた人のことの記憶が蘇ってくる。

その国の住民だからこそ伝えることができるのも、サイレントマンガの力。
インドネシアの作品では、必死になって蚊を捉えようとするシーンがある。
これは蚊がデング熱やマラリアの病気を運ぶため、幼い子供には脅威だから。
セリフで説明されてもきっとわからなかっただろう。

雑誌には全員のインタビューも載っている。
お気に入りの漫画として『ハイキュー!』『鉄拳チンミ』『デビルマン』と、年代を越えた作品が並んでいるのも興味深い。

今回のサイレントマンガオーディションは第二回目。
第一回作品は書籍化されている。
『世界から届いたジャパニーズ漫画ー第1回サイレントマンガオーディション受賞作品』 (Kindle版)
漫画が国境を越えるというのは本当だ、と証明してくれるこのオーディション。
その中から「日本の漫画」を描く外国の作家がきっと次々と出てくる。d


コミックゼノン11月号

(たまごまご)
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