《やはりちゅうちょしまして、再三お断りしたんです。でも、片岡さんがわざわざ何度もおみえになり、“評判を落とすようなポスターには絶対にしないから……。私を信じ、まかせてほしい”とおっしゃいましてね。それに宣伝の必要性についても丁寧に話され、ひとことでいってしまえば、引き受けざるを得ない状態に追い込まれてしまったんです。熱心な方でしたよね》(塩沢茂『ドキュメント サントリー宣伝部』)。
片岡敏郎は、コピーライターとしても「不景気か? 不景気だ! 赤玉ポートワインを飲んでるかネ? 飲んでない! そうだろう!」「出たオラガビール 飲めオラガビール」などの名作を生むなど、寿屋でその才能をいかんなく発揮した。だが、片岡のインテリぶった気取りは、鳥井のあまり好むところではなかったらしい。そのせいかどうか、鳥井は、1934年に練り歯磨き「スモカ」の事業を他社に譲渡した際、片岡を取締役として移籍させている。
■宣伝への情熱は創業以来衰えず