11月は、都内の結婚式場で行われる結婚式の数が、年間で一番多いという。今やパーティーもデジタルの時代。
●指輪は3Dプリンターで
3Dプリンターの良いところは、完全オリジナルのデザインで作ることができる点だ。簡単に言うと、自分たちでデザインした指輪をデータ化して、3Dプリンターで作った模型から型を作り、シルバーを流し込んで作る。こちらが完成品。
よ~く見ると、丸い部分の大きさがそれぞれ違うのだが、そこがミソ。
「普通のリングは、丸い部分の大きさが全て同じだったりしますが、あえていろいろな形の丸が集まって一つのリングになっていたら面白いと思い、大きさを揃えませんでした」
なるほど。超オリジナルというわけである。
ちなみに、神田さんは大学では経済を学んでいたが、会社の説明会で某企業が3Dプリンターを紹介している映像を見て、3Dプリンターのカッコよさにひとめ惚れ。父親がものづくりに関係した仕事をしていたこともあり、子どもの頃からものづくりに親しみがあった神田さんは、晴れて入社。3Dプリンターの営業を仕事を経て、現在は“ものづくり系女子”として3Dプリンターの楽しさを広めている。
●線で描いたイラストを3Dプリンターで立体に
神田さんは、友人夫婦の披露宴パーティーにおいて、3Dプリンターを使ってこちらのものも作った。
夫婦のイニシャルが二人ともRだったそうで、『R』をモチーフにしてデザインした二人のロゴを3Dプリンターを使って、立体のアクセサリー風に。パーティーのウエルカムボードに飾ったそうだ。
そのほか、ちょっとしたイラストも、ご覧の通り。
3Dプリンターを駆使すれば、自分でデザインしたオリジナルのものも作ることができる。
●いろんなグッズも手作り
パーティーの参考に、神田さんの披露宴パーティーでは、3Dプリンター以外のものを使って用意した手作りのグッズもあるので、手作りが大好きという方はぜひご参考を。
・ブランコ
「パーティーを開いている間は、高砂として夫婦で座っていました。ブランコをペンキで塗って、可愛らしく飾り付けました」
・ウエディングドレス
「友達の協力を得て作りました。ファッションの知識はなかったので、まさかベールまで自分たちで作れるとは……感激しました」
・招待状
「なるべくシンプルに」という思いから、1枚の紙を折ると封筒になる招待状に。神田さんの友達によるデザイン。
・旦那さんのタキシード
「タキシードは借りてもよかったのですが、やはりここも手作りで。他のシチュエーションでも使えるようなスーツを仕立てました」
・ピクチャーボード
ムシがつかない、四万十ひのきを使用。
ふわふわ感満載であるが、なぜ手作りにこだわったのかというと、二人がものづくりに携わっているからということもあるが、もう1つの理由は、パーティーを開くのに選んだ会場が、結婚式場やホテルなどではなかったからだ。
「主人の思い入れのある、とある美術館のお庭で行いました。お庭は通常の結婚式場のように披露宴のコースがある訳ではないため、自分たちで準備をする必要があったんです」
幸い、“ものづくり夫婦”のまわりには、ものづくりに携わっている人が多かったのだった。
●ものづくりに携わっている人同士は気が合う!?
ここまで神田さんの話を中心にお話を聞いてきたが、旦那さんは、どんな人なのだろうか? せっかくなので、根掘り葉掘り聞いてみた。
2歳年下の旦那さんとは、3Dプリンター(を展示していた場所)を通じて知り合っている。付き合っていた訳ではなく、特に連絡することもなく1年が過ぎたある時、旦那さん(当時は知り合い)から突然、「海外から個人でプリンターを輸入したので一緒に組み立てませんか?」という連絡があった。この「一緒に(しかも二人で)」という旨の響きが気になり「なんで?」と思った神田さんだったが、他に一緒に組み立ててくれるような人がいないと言われたこともあり、行くことに。
人生とは何が起こるか分からないもので、二人の距離は3Dプリンターを通じた共同作業が縁となり、超急接近。付き合い始めてわずか3カ月で結婚を決意し、昨年5月にゴールイン、一年越しでの手作り結婚式を果たした。
「彼(知り合った頃は、某大学の大学院でデジタルものづくりを学んでいた)は非常に研究熱心で、頭の中はマシンやデザインのことでいっぱい。マンションの部屋もアトリエのごとく何もなく、生活臭のないところに住んでいました」
二人で買いに行ったオーブンも、料理をするためというよりは、主に制作に使用するためだったそうだ。
「オーブンで最初に焼いたのは、パンでもおかずでもなく、セメントでした」
そんな旦那さんは、デザインに熱中すると身なりに無頓着で、半年間も髪を切らなかったこともあるという。そんな時には洋服は沙織さんが選んで“着てもらう”状態。
「ものづくりは“スゴい!!”と思うことの連続なので、ものづくりに携わっている人同士は相性が良いと言えるかもしれません」
というわけで、ものづくりの好きな旦那さんの良いところを聞いてみた。
・何ミリ、何センチといった長さが、メジャーなどを使わなくても感覚で測れる
・奥さんの希望のものを作れる(旦那さんは設計図が書けるため、作れるわけである)
「私が欲しいと思っていた食器棚のイメージ図を描いていたら、後日旦那さんが作ってくれました」
ほえ~~。事実とはいえ、ぐぅの音も出ない。
・「自分自身をよく見せよう」という思いがほとんどがないところも良い
先ほどの髪の毛を半年間伸ばしているという話からして、分かる気がする。
・その気になれば何でも作れると思っている
パーティーを手作りで開こうと思ったのは、旦那さんの「その気になれば、なんでも作れる」というマインドが大きかったと、神田さんは話していた。手作りは難しいだろうと思われたウエディングドレスも、まわりの人の協力を得つつ、素敵なドレスに仕上げることができたのだそうだ。気づけばオノロケ感全開の記事になってしまったが、幸せも3Dプリンターで複写できたらいいのにと思ったのは言うまでもない。
(取材・文/やきそばかおる)
●お二人の著書 『3D PRINTING HANDBOOK ―自己表現のための新しいツールを使う・考える』(平本知樹、神田沙織著 オライリージャパン刊)
●神田さんが使っている3Dプリンター(SCOOVO X9 アビー株式会社)
●撮影協力PROTO
“ものづくり系女子”神田沙織さんは指輪を3Dプリンターで作った。旦那さんも、ものづくりに関する仕事に就いている。そんな“ものづくり夫婦”の披露宴パーティーは、デジタルを駆使した手作り感満載! 今回は神田さんにお話を伺った。
●指輪は3Dプリンターで
3Dプリンターの良いところは、完全オリジナルのデザインで作ることができる点だ。簡単に言うと、自分たちでデザインした指輪をデータ化して、3Dプリンターで作った模型から型を作り、シルバーを流し込んで作る。こちらが完成品。

よ~く見ると、丸い部分の大きさがそれぞれ違うのだが、そこがミソ。
「普通のリングは、丸い部分の大きさが全て同じだったりしますが、あえていろいろな形の丸が集まって一つのリングになっていたら面白いと思い、大きさを揃えませんでした」
なるほど。超オリジナルというわけである。
ちなみに、神田さんは大学では経済を学んでいたが、会社の説明会で某企業が3Dプリンターを紹介している映像を見て、3Dプリンターのカッコよさにひとめ惚れ。父親がものづくりに関係した仕事をしていたこともあり、子どもの頃からものづくりに親しみがあった神田さんは、晴れて入社。3Dプリンターの営業を仕事を経て、現在は“ものづくり系女子”として3Dプリンターの楽しさを広めている。

神田さんが使っている3Dプリンター。(SCOOVO X9)神田さんは「X9くん」と呼んでいる。
●線で描いたイラストを3Dプリンターで立体に
神田さんは、友人夫婦の披露宴パーティーにおいて、3Dプリンターを使ってこちらのものも作った。

こちらのイラストが

立体的に。
夫婦のイニシャルが二人ともRだったそうで、『R』をモチーフにしてデザインした二人のロゴを3Dプリンターを使って、立体のアクセサリー風に。パーティーのウエルカムボードに飾ったそうだ。
そのほか、ちょっとしたイラストも、ご覧の通り。

3Dプリンターを駆使すれば、自分でデザインしたオリジナルのものも作ることができる。
●いろんなグッズも手作り
パーティーの参考に、神田さんの披露宴パーティーでは、3Dプリンター以外のものを使って用意した手作りのグッズもあるので、手作りが大好きという方はぜひご参考を。
・ブランコ

「パーティーを開いている間は、高砂として夫婦で座っていました。ブランコをペンキで塗って、可愛らしく飾り付けました」
・ウエディングドレス

「友達の協力を得て作りました。ファッションの知識はなかったので、まさかベールまで自分たちで作れるとは……感激しました」
・招待状

「なるべくシンプルに」という思いから、1枚の紙を折ると封筒になる招待状に。神田さんの友達によるデザイン。
・旦那さんのタキシード

「タキシードは借りてもよかったのですが、やはりここも手作りで。他のシチュエーションでも使えるようなスーツを仕立てました」
・ピクチャーボード

ムシがつかない、四万十ひのきを使用。
当日の二人の写真をUVプリンターで描いた。
ふわふわ感満載であるが、なぜ手作りにこだわったのかというと、二人がものづくりに携わっているからということもあるが、もう1つの理由は、パーティーを開くのに選んだ会場が、結婚式場やホテルなどではなかったからだ。
「主人の思い入れのある、とある美術館のお庭で行いました。お庭は通常の結婚式場のように披露宴のコースがある訳ではないため、自分たちで準備をする必要があったんです」
幸い、“ものづくり夫婦”のまわりには、ものづくりに携わっている人が多かったのだった。
●ものづくりに携わっている人同士は気が合う!?
ここまで神田さんの話を中心にお話を聞いてきたが、旦那さんは、どんな人なのだろうか? せっかくなので、根掘り葉掘り聞いてみた。
2歳年下の旦那さんとは、3Dプリンター(を展示していた場所)を通じて知り合っている。付き合っていた訳ではなく、特に連絡することもなく1年が過ぎたある時、旦那さん(当時は知り合い)から突然、「海外から個人でプリンターを輸入したので一緒に組み立てませんか?」という連絡があった。この「一緒に(しかも二人で)」という旨の響きが気になり「なんで?」と思った神田さんだったが、他に一緒に組み立ててくれるような人がいないと言われたこともあり、行くことに。
人生とは何が起こるか分からないもので、二人の距離は3Dプリンターを通じた共同作業が縁となり、超急接近。付き合い始めてわずか3カ月で結婚を決意し、昨年5月にゴールイン、一年越しでの手作り結婚式を果たした。
「彼(知り合った頃は、某大学の大学院でデジタルものづくりを学んでいた)は非常に研究熱心で、頭の中はマシンやデザインのことでいっぱい。マンションの部屋もアトリエのごとく何もなく、生活臭のないところに住んでいました」
二人で買いに行ったオーブンも、料理をするためというよりは、主に制作に使用するためだったそうだ。
「オーブンで最初に焼いたのは、パンでもおかずでもなく、セメントでした」
そんな旦那さんは、デザインに熱中すると身なりに無頓着で、半年間も髪を切らなかったこともあるという。そんな時には洋服は沙織さんが選んで“着てもらう”状態。
「ものづくりは“スゴい!!”と思うことの連続なので、ものづくりに携わっている人同士は相性が良いと言えるかもしれません」
というわけで、ものづくりの好きな旦那さんの良いところを聞いてみた。
・何ミリ、何センチといった長さが、メジャーなどを使わなくても感覚で測れる
・奥さんの希望のものを作れる(旦那さんは設計図が書けるため、作れるわけである)
「私が欲しいと思っていた食器棚のイメージ図を描いていたら、後日旦那さんが作ってくれました」
ほえ~~。事実とはいえ、ぐぅの音も出ない。
・「自分自身をよく見せよう」という思いがほとんどがないところも良い
先ほどの髪の毛を半年間伸ばしているという話からして、分かる気がする。
・その気になれば何でも作れると思っている
パーティーを手作りで開こうと思ったのは、旦那さんの「その気になれば、なんでも作れる」というマインドが大きかったと、神田さんは話していた。手作りは難しいだろうと思われたウエディングドレスも、まわりの人の協力を得つつ、素敵なドレスに仕上げることができたのだそうだ。気づけばオノロケ感全開の記事になってしまったが、幸せも3Dプリンターで複写できたらいいのにと思ったのは言うまでもない。
(取材・文/やきそばかおる)
●お二人の著書 『3D PRINTING HANDBOOK ―自己表現のための新しいツールを使う・考える』(平本知樹、神田沙織著 オライリージャパン刊)
●神田さんが使っている3Dプリンター(SCOOVO X9 アビー株式会社)
●撮影協力PROTO
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