最近、初恋を題材にした映画を何本か観た。初めて誰かを好きになったのに、なかなかうまくいかないじれったさ。
幼稚園や小学校のときは、友達と好きな人が同じでも「彼は人気者なのだなぁ」というくらいにしか思わなかったが、中学校に入る頃には友達の好きな人が自分と一緒だったりすると、自分も同じ人が好きだと言えなくてソワソワしていたような気がする。
もしかしたらあの頃は、世に言う「思春期」という時期に突入していたのかもしれない。思い返せば当時の自分は、何かに対してやたらと必死だったり、真剣に物事を考えてみるようになったり、それと同時に身体にも変化が訪れたりと、いろいろなことが起きはじめていたように思う。
そもそも「思春」とはどういう意味なのだろうか。講談社から出版されている『みんなこうなるの? おとなになるためのベストアンサー71のQ&A』では、“「思春」とは「恋心を抱く」という意味です”“心身ともに子どもからおとなに変化し、恋することができるようになる時期ということですね”と説明している。
本書はドイツで出版された子供向けの書籍が日本語訳されており、思春期に訪れる心や身体の変化に対する疑問を、わかりやすく説明している。原書はベルリンの家族計画センター「BALANCE」からも支持され、オーストラリアの科学研究省が選ぶ2014年ジュニア向け知識本の最優秀賞も受賞したそうだ。
目次を見てみると、大きく5つの項目に分かれている。
1.成長と変化
2.女の子らしさ、男の子らしさ
3.恋すること、愛すること
4.キスとセックス
5.妊娠と出産
心や身体に一番の変化があらわれていた思春期の頃、「自分だけなのかな?」「みんなはどうなのかな?」という不安を、友人や親にも相談することができず、自分なりに解釈して答えを見つけようと必死だったように思う。
そのため、本書を読んでいると「あるある!」と自分の10代を振り返るとともに、思春期の頃に解決できなかったことを、今もまだどこかで引きずっているようにも感じた。
本書は、どのようにして日本での出版に至ったのだろうか。本書の編集を担当した講談社児童図書第一出版部の中川京子さんに話を聞いた。
「2013年3月のボローニャブックフェアで見つけたのがきっかけです。ドイツ語はわからずとも、表紙のビジュアルを一目見て何の本かピンときて、これは面白そうだ! と感じました」
「もともと性教育に関心が高かったため、日本で流通している性教育本にも目を通していましたが、翻訳物や日本オリジナルのものは、かわいいイラストのビジュアルがほとんどで、この本のようなおしゃれな写真メインのものは見たことがありませんでした。そこで、ぜひ翻訳出版したいと思った次第です」
本書に掲載されている写真は、とてもカラフルでキュート! 成長過程の心や身体の変化について、実際の子供たちが果物や野菜、お花などをまとっているなど、ポップに表現されている。 その他にも、章の始まりごとに出てくる「思春期ホルモン発射!」「男女分別マシン」「ラブレター作成マシン」などの写真も、遊び心があって面白い。
なお、ドイツの学校制度は日本と違い、10歳で将来を決める重大な進路選択をするそうだ。そのせいか、本書でも性教育の部分については「えっ!」と思う部分にまで踏み込んでいる。法律や考え方も違うドイツと日本。日本で出版されるにあたり、苦労された点などは多かったのではないだろうか。
「日独の文化・慣習、法律の異なる点を洗い出し、日本の読者向けに仕上げていくのがいちばん大変でした。
「また、医学的知見についても、監修者からの助言で最新のものに変えています。コンドームは性感染症予防という位置付けにし、避妊は低用量ピルなどのより確度の高い方法をすすめています。もちろん、膣外射精は避妊ではありませんよ。子宮頸がんワクチンについても、日本では重大な副反応が社会問題化していますので慎重な書き方にしています。写真と文章のカップリングが絶妙で、単なる知識教授じゃなく、感性に訴えるところが、この本の魅力ですね」
なお、私は「恋と愛」の違いについて考えることがあり、本書の「愛ってなに?」で説明されている以下の言葉に目が留まった。
“人は恋をすると、まるで酔っぱらいのようにたよりなく、自分でも情けないと思う状態になってしまいますが、これが愛への一歩です”
“相手の欠点や弱いところも知って、ときにはケンカをし、それでもやっぱりいっしょに生きていきたいという気持ちがますます強くなる。これこそが愛です”
恋とは、愛を知る上での必要な成長過程で、そもそも比較対象ではないようだ。「うまくいかないのでは?」「いつか終わりが来るのでは?」と、相手の気持ちが離れてしまうことを恐れているうちを恋と呼ぶのかもしれないが、そこも愛を知る上での必要な過程だからこそ、恋の時期というのは思春期とイコールなのかもしれない。
「思春期」と呼ばれる時期に経験したことは、その後の大人として歩む人生に大きな影響を与えるように思う。そこで、今を生きる子供たちへ、どのような思春期を過ごしてほしいかを中川さんに聞いてみた。
「思春期は、意外に暗いというか、もやもやしていませんか? 力を持て余し気味だったり不安定だったり、人によってはそれまで慣れ親しんだ世界に強烈な違和感を覚えて学校に行けなくなったり……。
「不安定な時期だからこそ、自分の心や体を大切にできない行動をとってしまうのかもしれません。どんなに失敗しても命があればまた復活できるわけですが、こと性については女性が負うものが圧倒的に大きいです。どうか、自分の心や体を守れる人間関係を築いてほしいと願っています。あなたを大切に扱わない人からは、全力で逃げましょう。まずは自分を幸せにしてあげてくださいね。この本はその支えになると思います!」
子供たちだけではなく、大人たちもどこか、「自分を大切にする」ということを忘れがちになってはいないだろうか。私は、本書を大人の方にもぜひ読んでほしいと思いながら読んでいたが、中川さんも同様にそう思われているそうだ。
「関わったスタッフ(みんないい歳の大人です)が口を揃えて「知りませんでした(恥)」という内容が満載なのと、子供扱いしていない文章なので、大人にもぜひ読んでほしいですね」
「子供は社会を映す鏡」という。大人になった人も、本書『みんなこうなるの?』を自分の思春期時代と照らし合わせながら読んでみて、これから大人へなりゆく子供たちと、思春期という素敵な時期について話し合う機会を作っていただければ、これ幸いなのである。
(平野芙美/boox)
苦しんだり怒ったり、うまく自分を表現できなかったり。初恋ってどこか危なっかしいけれど、もう二度と経験もできないし、その儚さがいいなぁと思いながら映画を観ていた。はて、自分の初恋はいつだったっけ……。
幼稚園や小学校のときは、友達と好きな人が同じでも「彼は人気者なのだなぁ」というくらいにしか思わなかったが、中学校に入る頃には友達の好きな人が自分と一緒だったりすると、自分も同じ人が好きだと言えなくてソワソワしていたような気がする。
もしかしたらあの頃は、世に言う「思春期」という時期に突入していたのかもしれない。思い返せば当時の自分は、何かに対してやたらと必死だったり、真剣に物事を考えてみるようになったり、それと同時に身体にも変化が訪れたりと、いろいろなことが起きはじめていたように思う。
そもそも「思春」とはどういう意味なのだろうか。講談社から出版されている『みんなこうなるの? おとなになるためのベストアンサー71のQ&A』では、“「思春」とは「恋心を抱く」という意味です”“心身ともに子どもからおとなに変化し、恋することができるようになる時期ということですね”と説明している。
本書はドイツで出版された子供向けの書籍が日本語訳されており、思春期に訪れる心や身体の変化に対する疑問を、わかりやすく説明している。原書はベルリンの家族計画センター「BALANCE」からも支持され、オーストラリアの科学研究省が選ぶ2014年ジュニア向け知識本の最優秀賞も受賞したそうだ。
目次を見てみると、大きく5つの項目に分かれている。
1.成長と変化
2.女の子らしさ、男の子らしさ
3.恋すること、愛すること
4.キスとセックス
5.妊娠と出産
心や身体に一番の変化があらわれていた思春期の頃、「自分だけなのかな?」「みんなはどうなのかな?」という不安を、友人や親にも相談することができず、自分なりに解釈して答えを見つけようと必死だったように思う。
そのため、本書を読んでいると「あるある!」と自分の10代を振り返るとともに、思春期の頃に解決できなかったことを、今もまだどこかで引きずっているようにも感じた。
本書は、どのようにして日本での出版に至ったのだろうか。本書の編集を担当した講談社児童図書第一出版部の中川京子さんに話を聞いた。
「2013年3月のボローニャブックフェアで見つけたのがきっかけです。ドイツ語はわからずとも、表紙のビジュアルを一目見て何の本かピンときて、これは面白そうだ! と感じました」
「もともと性教育に関心が高かったため、日本で流通している性教育本にも目を通していましたが、翻訳物や日本オリジナルのものは、かわいいイラストのビジュアルがほとんどで、この本のようなおしゃれな写真メインのものは見たことがありませんでした。そこで、ぜひ翻訳出版したいと思った次第です」
本書に掲載されている写真は、とてもカラフルでキュート! 成長過程の心や身体の変化について、実際の子供たちが果物や野菜、お花などをまとっているなど、ポップに表現されている。 その他にも、章の始まりごとに出てくる「思春期ホルモン発射!」「男女分別マシン」「ラブレター作成マシン」などの写真も、遊び心があって面白い。
なお、ドイツの学校制度は日本と違い、10歳で将来を決める重大な進路選択をするそうだ。そのせいか、本書でも性教育の部分については「えっ!」と思う部分にまで踏み込んでいる。法律や考え方も違うドイツと日本。日本で出版されるにあたり、苦労された点などは多かったのではないだろうか。
「日独の文化・慣習、法律の異なる点を洗い出し、日本の読者向けに仕上げていくのがいちばん大変でした。
たとえば、ドイツでは16歳未満の子供のセックスを親が禁止することができますが、日本ではできません。そこで、刑法の性的同意年齢で説明することにしました」
「また、医学的知見についても、監修者からの助言で最新のものに変えています。コンドームは性感染症予防という位置付けにし、避妊は低用量ピルなどのより確度の高い方法をすすめています。もちろん、膣外射精は避妊ではありませんよ。子宮頸がんワクチンについても、日本では重大な副反応が社会問題化していますので慎重な書き方にしています。写真と文章のカップリングが絶妙で、単なる知識教授じゃなく、感性に訴えるところが、この本の魅力ですね」
なお、私は「恋と愛」の違いについて考えることがあり、本書の「愛ってなに?」で説明されている以下の言葉に目が留まった。
“人は恋をすると、まるで酔っぱらいのようにたよりなく、自分でも情けないと思う状態になってしまいますが、これが愛への一歩です”
“相手の欠点や弱いところも知って、ときにはケンカをし、それでもやっぱりいっしょに生きていきたいという気持ちがますます強くなる。これこそが愛です”
恋とは、愛を知る上での必要な成長過程で、そもそも比較対象ではないようだ。「うまくいかないのでは?」「いつか終わりが来るのでは?」と、相手の気持ちが離れてしまうことを恐れているうちを恋と呼ぶのかもしれないが、そこも愛を知る上での必要な過程だからこそ、恋の時期というのは思春期とイコールなのかもしれない。
「思春期」と呼ばれる時期に経験したことは、その後の大人として歩む人生に大きな影響を与えるように思う。そこで、今を生きる子供たちへ、どのような思春期を過ごしてほしいかを中川さんに聞いてみた。
「思春期は、意外に暗いというか、もやもやしていませんか? 力を持て余し気味だったり不安定だったり、人によってはそれまで慣れ親しんだ世界に強烈な違和感を覚えて学校に行けなくなったり……。
いろんなことが、いったん壊れたり、色褪せたりして当たり前なのだと思います。死を意識する人も多いのではないでしょうか」
「不安定な時期だからこそ、自分の心や体を大切にできない行動をとってしまうのかもしれません。どんなに失敗しても命があればまた復活できるわけですが、こと性については女性が負うものが圧倒的に大きいです。どうか、自分の心や体を守れる人間関係を築いてほしいと願っています。あなたを大切に扱わない人からは、全力で逃げましょう。まずは自分を幸せにしてあげてくださいね。この本はその支えになると思います!」
子供たちだけではなく、大人たちもどこか、「自分を大切にする」ということを忘れがちになってはいないだろうか。私は、本書を大人の方にもぜひ読んでほしいと思いながら読んでいたが、中川さんも同様にそう思われているそうだ。
「関わったスタッフ(みんないい歳の大人です)が口を揃えて「知りませんでした(恥)」という内容が満載なのと、子供扱いしていない文章なので、大人にもぜひ読んでほしいですね」
「子供は社会を映す鏡」という。大人になった人も、本書『みんなこうなるの?』を自分の思春期時代と照らし合わせながら読んでみて、これから大人へなりゆく子供たちと、思春期という素敵な時期について話し合う機会を作っていただければ、これ幸いなのである。
(平野芙美/boox)
編集部おすすめ