「がんばれ!」って言われるのぼくあんまり好きじゃないんだよね。強制しないでよ、すでにがんばってるよ!って気持ちになる。
自分に「がんばれ!」っていうのも苦手。がんばっていない自分はだめなんだ……って思っちゃう。

昨年の半ばくらいから、主にTwitterで「今日も一日がんばるぞい!」という言葉をよく見かけます。
Twitterで大流行「がんばるぞい!」の謎を検証してみるぞい - エキレビ!
これは使いやすいよね。力みすぎてない感じが。
「やらなきゃ……」「がんばらなきゃ……」はパンクすんだよ。

この単語の発祥は、4コマ漫画『NEW GAME!』。
ゲーム会社の新入社員・涼風青葉。
基本彼女がドタバタ働く様子が描かれています。裏設定として、ゲーム会社の就労時間や会社規模、ゲーム製作の流れなどがきちんと表現されていて面白い。

んで2巻で気になる会話が出てきました。
青葉の同い年の友達、桜ねね。
大学生です。
社会人として働くようになった青葉に、睡眠時間を聞いたところ、青葉の睡眠時間は4時間
「そんなに頑張らないと出来ない仕事があるって、あおっち(青葉)の会社っておかしいんじゃないの?」

青葉を思いやって言ったはずの言葉なのは、わかる。わかるよ。
でも「あんたの会社ブラック企業だよ」という意味合いのこの発言。
二人は大げんか。

『NEW GAME!』内で描かれるゲーム会社「イーグルジャンプ」。
果たしてブラック企業か。そもそも何を持ってしてブラック企業なのか。
ゲーム会社勤務の人に話を伺いながら、検証してみました。

1・そのくらいの会社の規模なのか
涼風青葉の入社したゲーム会社「イーグルジャンプ」は、ビル一つ持っている規模の会社です。
彼女はキャラ班として4人のブースで仕事をしています。
その他にモーション班、プログラム班などわかれています。
この4人一組のブロックが数多く並んでいて、(1巻P76、P105)。ゲーム製作は3チーム並行。
これは「中小企業」ではない。

社員証でのセキュリティは完備。
資料の棚は壁一面にあり、広い飲食スペースが設けられています(2巻P76)。

最初はデバッガーとしてバイトをやとっています。ここで入ってくるのが涼風青葉の友人、桜ねね。
以降は専門の会社に発注することになり、募集がなくなります(2巻P111)
現在でも、規模の大きな会社はデバッガーは外注がメインです。

決定打は、ゲームショーでの展示スペース(2巻P69)。
通常は1スペースで数十万だそうです。イーグルジャンプのゲームは巨大液晶プロジェクターでゲームの内容を表示。
体験コーナーも広く取っていました。
おそらく数百万はするはずです。

かなり大きな規模の会社です。
ぶっちゃけ今の時代、一般向けゲームを作っている時点で、中小企業ではないのかもしれません。

2・就業時間について
涼風青葉たちの就業時間は、ばらっばら。
他の会社員が帰る時間の時計を見ると、夜の10時過ぎから11時くらい(一巻P35)。
涼風青葉は新入社員なのもあって、自分のノルマをこなしきれず、終電間際が多い様子です。
マスターアップ前のデスマーチ時になると、ほぼ徹夜というか泊まり込み。深夜3時でもバリバリみんな働いています(2巻P86)。

出勤はというと、一応遅刻もありますが時間は不明。
朝9時だと、誰も来ておらず、「早い出勤」と言われています(1巻P38)。
実際の会社は昼前後が多いようですね。


基本進行で遅れが出た場合、泊まり込みか、休日出勤が上司判断で行われています。休日出勤は有給が少し増えます(1巻P104)
残業代はありません。ゲーム会社はほとんどがないそうです。

3・夏休みについて
大学生のねねは(2巻P39)大学の夏休みが普通に2ヶ月あります。
しかし、ゲーム会社の涼風青葉の夏休みはマスターアップ後になります。
これはおそらく小中大問わず、どこのゲーム会社も同じ。
プロジェクトがひとつ完成してから、労をねぎらう感じで1から2週間、会社には電話番くらいしかいなくなります。

4・昇進と昇給について
ブラックかどうかを見分けるポイントになるのは、ゲーム会社の場合はがんばった分のリターンがあるか否か
「イーグルジャンプ」は、昇給制度があります(1巻P70)。
査定は年一回。与えられた仕事をこなしつつ、どれだけチームに貢献したかを、チームリーダーとADが評価して社長に報告します。

涼風青葉は今回のゲームではモブとサブキャラの3Dグラフィック作成担当。

早い出勤、遅い帰りで、数十体を短期間に作りあげ、周囲のメンバーを感心させました。
同僚も「次のラインではもっとええ仕事ももらえるんやないかな」と言っています。
さらには、チームリーダーは、今回のゲームの成功を経て、AD(アートディレクター)に抜擢、ADはプロデューサーに昇進しています。

仕事はとてもハード。徹夜作業になることも多々。
しかし頑張った分、昇給・昇格・いい仕事を回してもらえる、などのリターンがしっかり制度化されている。
さて、この会社はあなたにはどう見える?
一つ考えておかねばいけないのは、「ゲーム会社としては」が頭につくのが、前提です。

昔ゲーム会社に勤務していた作者いわく「ほのぼの社畜漫画」(1巻あとがき)。
この漫画の会社形態がどう見えるかは、多分読者の今の環境で変わると思います。
だから、大学生のねねの「おかしい」という感想も、間違いではない。

ただね、毎日睡眠時間4時間は、ほんと若い内しか持たないので心配になるよ。
「がんばるぞい!」が「がんばらなきゃ……」になりかねない。

頑張りたいという思いと就労時間は、うまくバランスとってこそ、成長できるんだよ。
適度に、がんばるのがいいんだぞい。

得能正太郎『NEW GAME!』1
『NEW GAME! 2』

(たまごまご)
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