地方医療に情熱を傾ける医師・栗原一止を主人公にしたシリーズは1〜3巻の後、今年になって『神様のカルテ0』が刊行された。登場人物たちの前日譚というべき内容、そして初の短篇集と、番外篇のような形だった『0』の創作秘話を通じて、現役医師として一止と同じように地域医療の現場で働き続ける夏川の現在、そして作家としての考えを聞いてみた。

多忙な近況と忙中の読書
夏川 昨年度(2013年度)にすごく医者が足りない時期があって、そのときは全く書く時間が取れず、生きているだけでも手一杯という感じでした。当直が週に1回あって泊まり、プラス夜間に呼ばれるのが大体3日に1回という感じだったので、ずっと病院にいる感じです。それで疲弊してきたときに医局が1人派遣してくれて、去年からようやく少しまともな生活になりました。
──ずっと臨戦状態だったんですね。
夏川 きつい状態が続くと他の内科の先生も倒れる人が出てきたりして、よりきつくなるんです。
──さすがに一止のように、当直を終わらせてから夏目漱石を読むような余裕はないですよね。
夏川 はい(笑)。そうなってくると逆に眠れなくなってきます。しかも1、2時間寝ると注意力が落ちる。寝てしまうと血圧のことに目が届かなかったりとか、呼吸が弱っていることや顔色を見てなかったりすることがありますから、あえて起きるために本を読む。