テレビを見ていると「美文字」をテーマにした番組がよく放送されています。達筆で"キレイ"な印象を与える文字が書ける人は、確かに大人であれば憧れがち。
でも、小中学生の頃に惹かれたのって、"かわいい"文字を書ける子、ではなかったでしょうか!?

【「かわいい女の子」が書く字って?】


小中学生当時、プロフィール帳や寄せ書きなどに「まる文字」を書く子に憧れたという人も多いのでは? 全体的にコロッとしていて、角ばっていない女の子らしいまる文字。"かわいい!"を全面に押し出しているのがまる文字の特徴ですよね。

まる文字は1970年代後半ごろから女子中高生を中心に急速に広まって、若者文化となりました。特に「?」、「ね」、「お」といった文字に特徴が出やすいこともあり、これらをいかに可愛く書くか、毎日練習していたような気がします。

【まる文字の登場からギャル文字時代へ】


この「まる文字」、学問の世界では「変体少女文字」なんて呼ばれているんだとか。「変態」じゃなくて「変体」なので、そこんとこ夜露死苦!(古っ)『変体少女文字の研究』(山根一眞著)によれば、1970年代前半に創刊された『an・an』や『non-no』といった女性向けファッション誌で使われていた書体がまる文字の登場に影響を与えたといいます。

そんなまる文字も、90年代以降コギャル文化が登場し始めると次第に衰えて、細長くカクカクとしたノッポ字がブームに。その後は、まる文字とカクカクしたノッポ字を混ぜたような、「ギャル文字」が主流となっていきました。

【文化を共有して若者に仲間意識が芽生える!?】


さて、まる文字だけでなく、若者の間で「私たち、僕たちにだけわかるアレ」という共通の文化って、今でもありますよね。たとえば1970年代初頭は、「族」という言葉で仲間意識や共同性を表していました。今でいうところの、「○○クラスタ」、「○○ガチ勢」、ちょっと前の「○○系」といったところでしょうか。

まる文字の成立に影響をあたえた当時の『an・an』や『non-no』は、読者目線の新しいファッションやライフスタイルを提案し、こうしたスタイルに便乗した女性たちは「アンノン族」と呼ばれました。その後1975年ごろになると、『JJ』が提案するトラッド・スタイル、いわゆる「ニュートラ」や「ハマトラ」が流行し、ヴィトンやセリーヌなど、高級ブランドを身にまとう女子大生が登場しました。

女の子たちが共有してきたかわいいの象徴、まる文字。
手書き文字が生み出す共通感覚は、若者たちが仲間意識を感じる重要なツールのひとつだったのかもしれないですね! 美文字ブームのこの時代、あえてまる文字を極めてみるのも面白いかもぉ→!?
(ヤマグチユキコ)
編集部おすすめ