10月から放送が始まった『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』。
アニメシリーズでは4期目となるが、今回も原作がほぼ完全再現される模様。
現状、作画も声優のマッチングもベネ(よし)! ファンも納得のクオリティで、今後の展開が非常に楽しみだ。
今回のアニメは、週刊少年ジャンプで連載されていた原作漫画の第5部にあたる。
そこで、ジョジョ連載中のジャンプをリアルタイムで愛読し続け、コミックスも全巻コンプリートの筆者が、連載当時のリアルタイムな感想や時代背景を語らせていただきたいッ!
初心者向けではないかもですが……かまいませんね!!


あの「マサルさん」と同時スタート! ジョジョ5部は期待されていなかった!?


『ジョジョの奇妙な冒険』第5部の連載は、少年ジャンプ95年52号から始まっている。
連載当時のサブタイトルは「第5部ジョルノ・ジョバァーナ 【黄金なる遺産】」。 『黄金の風』になったのは、他のシリーズ同様、第6部『ストーン・オーシャン』以降になる。
連載は、『セクシーコマンドー外伝すごいよ!!マサルさん』との同時スタートだった。表紙も『マサルさん』であり、囲みでの告知もなし。

51号で第4部が完結しており、休載なしのスタートだったのだが、その51号の掲載順位は巻末から2番目のブービー。といっても、巻末が定位置だった『王様はロバ-はったり帝国の逆襲-』の前だから、実質的には最下位になる。
元々マニアが支える作品だったので、人気アンケートには反映されにくかったのかも知れないが、ジャンプではやはり「異端」の位置づけといったところか。
作者の荒木飛呂彦先生の52号巻末でのコメントは「雷が鳴るたび、仕事場のブレーカーが落ちて停電。『安全な証拠』と電力会社は言うが…」という、マイペースすぎる内容。
過去を振り返る企画や作者インタビューなどの企画物もなく、どちらかというと、ひっそりと第5部はスタートしている印象だ。



シリーズ500回突破を機に人気上昇!?


連載当初からジャンプの掲載順が低空飛行だった第5部だが、97年13号の57話で、ついに表紙&巻頭カラーに登場している。
これは、ジョジョシリーズ連載10周年&500回突破を記念したために実現したもの。ポスターや今まで登場した「スタンド」をまとめた企画が組まれ、ファン感涙の内容となっている。
『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』ジャンプ連載時は人気が低迷していた!?
『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』ジャンプ連載時は人気が低迷していた!?
筆者私物のジャンプ97年13号のポスター

掲載話は、プロシュート兄貴&ママっ子(マンモーニ)ペッシとの死闘が描かれた「針をはずせ!」。
味方にも敵にも「信念」があり、「覚悟」がある。それゆえの激しいぶつかり合いと、次々飛び出す魂を打つ名セリフの数々。まさに、第5部の醍醐味が凝縮されたバトルといえるだろう。
(特に「覚悟」は第5部で何度も登場するキーワードだ)
あらためて魅力にふれた方も多かったようで、このころから中盤をキープ。
97年30号には、後に人気シリーズになる読み切り『岸辺露伴は動かない~エピソード16:懺悔室~』を掲載。
荒木先生の創作意欲も「絶好調!!だれも ぼくを止めることはできない。」状態だった!?


異色のエピローグ「眠れる奴隷」の衝撃ッ!


しかし、ノトーリアス・B・I・Gが登場する98年11号の100話を過ぎた辺りから、再び掲載順位が下降。特に、「最低のゲス」チョコラータ&セッコとの少年誌の限界を超えたバトルは、巻末掲載の確率が高かったように思う。
ラスボスとの最終決戦も勢いや作品の熱量は凄かったのだが、冷静に考えると何が何だか理解不能な内容。それもあってか、巻末が定位置のまま第5部終了を迎えている。

当時、ラスボスとのバトル後に、エピローグとして「眠れる奴隷」が描かれる流れがすごく新鮮だったことも忘れられない。

ジョルノ登場前の前日譚が、5週に渡って掲載されたのだ。
荒木先生が「ジョジョ25年間の歴史の中で最も印象的なエピソード(2012年時点)」「ジョジョシリーズの真髄」とまで語ったこのエピローグにより、第5部の完成度や深みがグッと増したのは間違いない。
リアルタイムに読んだ直後よりも、大人になった今の方がこのエピローグの重要性が実感できる。
ぜひ、あらためて読み直して、「言葉」でなく「心」で理解していただきたいッ!

99年17号掲載の第5部最終話の作者コメントは「しばらく休暇を取ります。次回作はもう構想中です。またお会いできる事を祈って」だったので、第6部の構想があることは、コーラを飲んだらゲップが出るっていうくらい確実!だったが、ジャンプの掲載順位があまりに低いだけに、本当に連載が始まるかは不安な状況だった点も付け加えておこう。



ゲーセンで再燃したジョジョ人気


第5部終了直前の98年12月、全国のゲームセンターで、アーケードゲーム『ジョジョの奇妙な冒険』の稼働が始まっている。第3部『スターダスト・クルセイダース』を原作とした対戦型格闘ゲームだ。
『ストリートファイター』シリーズでおなじみ、格闘ゲームのパイオニアのカプコンが、原作への愛をふんだんに散りばめながら、細部まで作りこんだ傑作である。
新モード&新キャラが追加された続編や、プレイステーションなど家庭用ゲーム機への移植も大ヒットとなり、ジョジョ再評価の流れが始まる。
これもあってか、約8カ月の休載の後、少年ジャンプ2000年1・2合併号より無事、第6部『ストーン・オーシャン』が始まるのであった。


必然性がなかったから出番が消えた空条承太郎


第5部冒頭では、第4部からのつながりが描かれ、シリーズで絶対的人気を誇る空条承太郎も登場。第3部での宿敵DIOの息子ジョルノ・ジョバァーナが主人公とあって、どういう形でストーリーに絡むかと毎週楽しみにしていたのだが……その後一切登場はなし。
ナビゲーター的役割だった(広瀬)康一も、序盤でフェードアウトとなった。
また、ジョルノがDIOの血のせいで「闇落ち」する展開を予想したりもしたが、そんなこともなかった。
もっとも、荒木先生は「必然性や動機がない、その場限りのことはやらないことにしている」と常々語っているし、その後の展開や独立した世界観を思うとこれでよかったのだが……。
そんな中で、終盤に第3部の人気キャラのポルナレフが「必然性のある」キーマンとして再登場する流れは驚きと興奮が凄まじかったものだ。
アニメでどう描かれるか、ディ・モールト(非常に)楽しみに待とうじゃあないかッ!
(バーグマン田形)