高橋優 いつか悲しみから卒業できる――笑顔を生んだ卒業のうた『もうひとつの卒業式』＜後編＞

■SCHOOL OF LOCK!×高橋優『もうひとつの卒業式 ～福島県 南相馬～』
2012.03.03(SAT) at 福島県・南相馬市
（※画像72点）

ライヴを終えた高橋優先生が一度控室に戻る。生徒たちに歌を届けることができた喜びからか、表情がだいぶ穏やかだ。とーやま校長、やしろ教頭に呼ばれて、再び壇上へ。それにしても、やしろ教頭の小さいボケまでも真面目に拾い、時に呆れるように、時に怒るように突っ込む優先生がとても面白い（笑）。

しばし、校長、教頭とのトークが続き、実行委員長を務めた生徒の“卒業のことば”へ。

「＜略＞正直、今でも思います。どうして震災なんかあったんだろうと。原町高校に入学した時から3年間、あの校舎に通って、全員で卒業するんだと信じていたし、それを疑う必要もありませんでした。昨年の10月26日、原町高校が7ヵ月ぶりに母校で授業を再開しました。学校に行った初日は、母校に帰れた喜びでいっぱいでしたが、家に帰り、2年5組のクラス写真を見ると、“どうしてみんないないんだろう？” と。自然と、涙が溢れました。みんなに会いたい、そうずっと思っていました」








はしゃぐ生徒たちの姿を微笑ましく見ていただけに、この言葉にはハッとさせられた。会場にいた誰もが神妙な面持ちになり、生徒たちの中から、すすり泣く声が聴こえてくる。そして、続く「私は原町高校に入学して本当に良かったと思っています。みんなと出会えて良かったと思っています。一生、原高生です」との言葉に、生徒たちから大きな拍手が贈られた。

次は、男子生徒のピアノの伴奏に合わせて、校歌斉唱へ。卒業式にみんなで歌うはずだった原高校の校歌が歌われた。

最後は、番組同様、とーやま校長の黒板で締めくくられた。

「＜略＞“君が未来”と書きました。昨年の3月11日から1年が経とうとしていて、こうして原高の卒業式に参加することができた。みんなは、これからいろんなことに挑戦していくと思う。その時は、目がくらむくらいに光っていてほしい。輝いていてほしい。君たちが輝くってことは福島が輝くことです。福島が輝くことは日本が輝くことです。そして、日本が輝くなら世界も輝く。未来は、君たちのこれからにかかっている。そう本気で思ってます。だから、俺は君たちの未来をこれからもずっとずっと応援し続けます。原高生のみんな！　改めて、卒業おめでとう!!!」








こうして、“もうひとつの卒業式”は閉幕…と思いきや、ここで進行役の生徒から最後のアナウンス。

「第二部は、原町高校のキンモクセイの下で集合写真を撮ります！」

原高生は、毎年、卒業アルバムに載せる集合写真を高校の昇降口の前にそびえ立つ大きなキンモクセイの前で撮っているのだという。しかし、今年の卒業生は、キンモクセイの前で写真を撮ることができなかった。そのため、今日集まった全員で写真を撮ろうというのだ。

いざ、キンモクセイの木の下へ――。移動に移るまでの間は高橋優先生もしばしの休憩時間。スタッフと談笑したり、スタッフに勧められた差し入れの南相馬市名物“凍天”（※1）を食したり。この“凍天”、筆者もいただいたのだが、優先生が絶賛するのも納得の美味しさ！　優先生、一緒に食べていたスタッフと、「和菓子と洋菓子の絶妙のコラボ。ブラックコーヒーに合う！」と盛り上がっていました（笑）。
(※) よもぎなどを混ぜ込んだ草餅を屋外に一晩吊るして凍らせ、1ヶ月ほど乾燥させて作られる福島伝統の保存食“凍み餅”を水でもどし、ドーナツ生地で包んで揚げた福島名物のスイーツ








そしてステージ壇上にあがると、スタッフに、「僕、中学の時、生徒会長やってたんですよ。こういうところにも上がって挨拶したり……」と、懐かしそうに体育館を見下ろしていた。

キンモクセイの木の下では、この日集まった117名の生徒と、とーやま校長、やしろ教頭、高橋優先生、そして、生徒にひょっこりまぎれこんだ（笑）、先の生徒に人気の先生が「キンモクセーーーーイ!!!!」の掛け声で集合写真を撮影。そのあとも、1年ぶりに会った友達同士、話の尽きることはなく、記念写真を撮ったり、ふざけあったり、冗談を言い合ったりと、笑顔があふれていた。

撮影が終わったあとも優先生は取材を受けたり（この頃には日も暮れてきて、極寒の中でのインタビューに）、生徒と交流したりと何かと忙しい。最後は卒業式が行なわれた体育館に戻り、とーやま校長、やしろ教頭との番組用のトークを収録。改めて、今回の企画に関われたことの感謝の気持ちを口にしていた。
（取材・文・一部撮影／田上知枝）

≪セットリスト≫
1. 現実という名の怪物と戦う者たち
2. 卒業
3. 8月6日
4. 想いよ、届け
5. 少年であれ
6. 福笑い